かもしれない弁天【毎週ショートショートnote】

「破裂！？　かもしれない弁天が破裂！？」

　あの大学に合格できるかもしれない。
　彼女は僕のことが好きかもしれない。
　買った株が10倍になるかもしれない。

　可能性を生み出すことができる。
　それが、「かもしれない弁天」の御利益だ。いや、「だった」と表現するべきか。

　可能性ゼロだったものに、希望が生まれる。
　すごいことだ。本来、有り得ないことに可能性が生まれる。それは無から有が生まれることに等しい。
　その御利益がSNSで拡散されるうちに、参拝者は爆発的な勢いで増えていった。境内は早朝から深夜まで長蛇の列だった。
　その本殿が破裂した。爆発の中心は本殿の中心、本尊だ。

「ムチャクチャな願いを延々と聞かされて、弁財天も嫌になったんだろう。
　自分の力でやれということだよ。可能性は、人が自ら切り拓くものだ。
　それが、かもしれない弁天の最期のメッセージ。
　……かもしれない。」

---

完
(本文382字)

　筆者は最近ファーストガンダムを一気見しました。弁財天が爆発したのは、その影響かも。