シンガポールでのビジネス 「悪いことができないちょうど良さ」
リクルートを辞めて飛び込んだシンガポールでやっていたのはベンチャー企業の立ち上げでした。
狭いシンガポールでビジネスをやるということ。日本よりも結構楽しくやっていました。
広さとしては東京23区ほどの小さな国土のシンガポール。しかもその大半がジャングルで、人が住めるようにきちんと開発された場所なんて本当に狭いのです。
狭いが故の難しさはありますが、この狭さがうまいこと「おかしなことはできない」というフィルター的役割を果たしていたのではないかと思います。
例えば、タイなどでは国土も日本人コミュニティも広いため、日本人が日本人を騙す…ということが頻繁に起こるといいます。中には法に触れるようなこともありましたが、言ってたことと違う、ちょっと怖い目に遭った…など法に触れないまでもいろんな種類の話を聞きました。
シンガポールに住む日本人はざっと3万人。結構多いように聞こえます。でも、その中には駐在員のご家族なんかも含まれているし、シンガポールは子連れで赴任する日本人が多いので、実際にビジネスマンとしてやっている日本人はもっともっと少ないです。
こんな狭い国土に限られた日本人しかいないシンガポールで変なことをやれば一瞬で悪い噂は広がります。
シンガポールに2-3年も住んでビジネスをやれば、知り合いの知り合いまで含めればほぼ全てのビジネスパーソンと繋がれます。
そんな中、人を人とも思わないコミュニケーションを取る、家族持ちでありながら女性にしつこく言い寄る、ビジネスで不義理をする…。こんなことで悪評が立ってしまった人はあちこちで「あぁ、あのヒトね。あのヒトとビジネスするのはやめといた方がいいですよ」なんて噂されちゃうのです笑
特に、海外では日本にいる時以上に「お互いに助け合いたい」という気持ちが強くなるため、自分がちょっとでも嫌な思いをすると結構気軽に「あのヒトとのビジネスやめときな」と教えてくれます。
一方でこの日本人コミュニティ、3万人という数は決して少なくはないので、適度に距離を持ってビジネスができるという良い点もあります。
たとえばビジネスの舞台がヨルダンだったら…ブルキナファソだったら…日本人同士、とっても助け合っていかねばならないですよね。だけどシンガポールだと、適度に、ほどよく、でも悪いことはできない程度の濃さでビジネスができる。
それがいいな、と思っていました。
それから、東京では会いたくでもなかなか会えないようなすごい人にもフツーに会えてしまう。それがいいな、と思いながら仕事をしていました。
「今度出張で日本本社の社長が来るんです。その時に外注先さんの声をヒアリングしたいと言っているんですが、会ってもらえますか?」
なんて言われて、超大企業の社長と会えてしまったりもしました。
帰国して早4年になろうとしている今、シンガポールがとっても恋しいです。常夏の国、温かい人、大好きな友人たち…
この状況でなかなか気軽に海外渡航もできない今、思いは募るばかりです。
早くこの事態が収束しますように。