電子マネーで給与支払い開始
昨日(2024年9月22日)の日経で、ソフトバンクが給与をPayPayで支払うという記事を見て、私は少々驚きました。というのも、中国に駐在していた頃、WeChatを使って給与が支払われるのはごく普通のことだったからです。一方で、日本では労働基準法により、給与の支払いは基本的に現金で行われると定められており、1975年には銀行口座への振り込みが認められ、1998年には証券口座への振り込みも可能となりました。現在でも、多くの人が給与を銀行振り込みで受け取っています。
しかし、日本政府は2023年4月にスマートフォン決済アプリや電子マネーを利用したデジタル給与支払いを解禁しました。そして、サービス運営者からの申請を受けて、2024年8月にようやくPayPayを給与支払いの手段として認可するに至ったのです。
デジタル通貨の利便性とメリットの可能性
デジタル通貨は、技術の進展とともに金融システムに革命をもたらす存在として注目されています。以下にその利便性と主なメリットとどのような可能性があるのでしょうか。
1.即時決済と取引効率の向上
デジタル通貨を用いることで、即座に支払いが完了し、取引のスピードが大幅に向上します。これにより、送金や決済がリアルタイムで完了し、特に国際送金において従来数日かかっていた手続きが数秒で完結するという利便性を提供します。(取引時間短縮)
2. 取引コストの削減
従来の銀行送金や決済に伴う手数料が大幅に削減されます。仲介業者を介さずにP2P(ピア・ツー・ピア)の形で資金移動が可能となるため、特に国際取引では手数料や為替差益などのコストを抑えられます。国と国の間で該当のアプリケーションが使えるという前提があります。
3.金融包摂の拡大
銀行口座を持たない人々でもスマートフォンを通じてデジタル通貨を利用できるため、金融包摂が進みます。これにより、従来金融サービスを利用できなかった地域や人々が、簡単に経済活動に参加できるようになります。これは、中国やその他諸国でも始まっています。
4.キャッシュレス社会の推進
デジタル通貨の普及は、現金を使用する必要がなくなるため、キャッシュレス社会の実現に寄与します。これにより、現金管理コストや偽札の問題が解消され、衛生面や防犯面でもメリットがあります。新札発行のタイミングを考えると何故、今新札発行されたのかは、疑問に感じています。
5.金融政策の効率化
中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)を通じて、より効率的な金融政策が実施できる可能性があります。例えば、金利政策や通貨供給量の調整がリアルタイムで反映されるため、経済への影響を迅速に確認することが可能です。
デジタル通貨のリスクとデメリット
デジタル通貨の利便性は高い一方で、さまざまなリスクやデメリットも存在します。
1.セキュリティリスクとハッキング
デジタル通貨はサイバー攻撃の対象となりやすく、ハッキングや個人情報の流出といったセキュリティリスクが常に伴います。ブロックチェーン技術を採用している場合でも、取引所やウォレットのセキュリティが十分でない場合、資産が盗まれる危険性があります。
2.技術的な不具合やシステム依存と信頼性の問題
システムダウンや技術的な障害が発生した場合、デジタル通貨の利用が一時的に制限され、支払いが遅延するリスクがあります。また、インターネット環境がない地域では、デジタル通貨の利便性が損なわれるため、依然として現金が必要とされる場合もあります。デジタル通貨はインフラとなる技術に大きく依存します。システムがダウンしたり、技術的な不具合が発生すると、日常生活やビジネスに重大な影響を与える可能性があります。また、技術への信頼性が失われると、利用が敬遠されるリスクがあります。デジタル通貨でなくとも2023年10月10日に発生した全銀システムの障害による混乱はまだ記憶に新しいです。
3.プライバシーの懸念
デジタル通貨の取引は記録が残るため、プライバシーが侵害される懸念があります。特に中央銀行デジタル通貨(CBDC)では、政府や金融機関が個人の取引データを容易に追跡できるため、自由な経済活動が制限される可能性があります。これは一方で問題ある取引を監視できガバナンスが効くということもあります。
4.規制と監督の課題
デジタル通貨は新しい技術であり、その利用に対する法的な枠組みや規制が国ごとに異なります。特に、匿名性の高い暗号通貨は、マネーロンダリングや脱税などの不正行為に利用されやすいとの懸念があります。そのため、各国での規制が強化される一方で、柔軟性や国際取引の自由度が制限される可能性もあります。
結論
デジタル通貨は即時決済や取引コストの削減、金融包摂の推進といった多くのメリットを提供しますが、一方で、セキュリティリスクやプライバシーの問題など、さまざまな課題も抱えています。ですので、私は、これらのリスクを管理しながら、適切な規制と技術の進展が進むことで、より安全かつ利便性の高いデジタル通貨の利用が広がるよう体制整備が国内外で進めばと期待しています。