伝統的国際法が正当化される、という危機


ロシアのプーチン大統領は14日、ウクライナでの戦争終結には、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟に向けた野心を放棄し、同国東・南部4州をロシアに引き渡す必要があると言明した。
ウクライナの見解とは相いれない、これまでで最も詳細な条件を提示した。ロシア軍が戦闘で優位に立っているという自信を反映しているとみられる。
(中略)
プーチン大統領は「条件は非常に単純だ」と強調。ウクライナ東・南部のドネツク、ルガンスク、ヘルソン、ザポロジエ4州からのウクライナ軍の完全撤退を挙げ、「ウクライナがこうした決定の用意があると発表し、実際に撤退を開始し、NATO加盟計画を放棄すると正式に表明すれば、われわれは直ち停戦命令を出し、交渉を開始する」と通告した。

当たり前のことだが、現代国際法では武力を用いた領域取得(いわゆる「征服」)は認められていない。

国連憲章第2条4項
すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。

https://www.unic.or.jp/info/un/charter/text_japanese/

また、武力行使に基づいて締結された条約は無効とされているので、強制的に締結された領土割譲条約は無効とされている。

条約法に関するウィーン条約
第五十二条(武力による威嚇又は武力の行使による国に対する強制) 国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する武力による威嚇又は武力の行使の結果締結された条約は、無効である。

https://www1.doshisha.ac.jp/~karai/intlaw/docs/vclot.htm

言うまでもないが、ロシアは国連の安全保障理事会の常任理事国である。常任理事国が堂々と国連憲章を無視するという・・・

国連憲章のもとに、国際の平和と安全に主要な責任を持つのが安全保障理事会である。理事会は15カ国で構成される。常任理事国5カ国(中国、フランス、ロシア連邦、イギリス、アメリカ)と、総会が2年の任期で選ぶ非常任理事国10カ国である。

https://www.unic.or.jp/info/un/un_organization/sc/

プーチンの要求は、征服や強制的な合意による割譲が認められる「伝統的国際法」そのものだ。つまり第二次世界大戦以前の国際法だ。
今の日本に、「伝統的国際法」の世界で生き残れる力はあるだろうか?
軍隊も核も、持つことができない。自力での防衛が不可能なうえに、抑止力すらない。
NATOとは「パートナー」であるにすぎない。
アメリカが頼れるか?もはや彼の国にそんな余力はなさそうだ。その上、トランプが大統領に返り咲いたら、日本の安全保障への関心はさらに薄くなりそうだ。

だから、ウクライナは他人事ではない。
「伝統的国際法」が正当化された時、日本に何が起こるかを想像しなければならない。

中国歴史研究院は3月下旬、SNSを通じて、琉球に関する論文3本を紹介した。(中略)歴史研究院は習近平国家主席2期目の2019年成立。社会科学院に属するが、院長は閣僚級で格が高く、中国における歴史研究の最高峰と言える。
一、琉球は昔から日本に属していたというのは、日本の統治を合法化するための偽の歴史だ。(江戸時代になっても)薩摩藩の琉球に対するコントロールは限定的で、琉球は中国の属国だった。
一、明は琉球への支援を通じて、東海(東シナ海)に対するコントロールを常態化していた。中国の東海に対する権利には完全な証拠がある。
一、琉球諸島は「地位未定」の状態にある。カイロ宣言、ポツダム宣言などに基づく第2次世界大戦の国際秩序は、琉球を日本領として認めていない。中国を除外したサンフランシスコ講和条約体制は本質的に非合法である。

確認されたのは、1945年8月16日にソ連首相のスターリンが、北海道北半分をソ連軍の占領地域とするよう米側に要求した内容の基になった草案。ソ連の赤軍参謀総長アレクセイ・アントーノフらが同日にモロトフ外務人民委員に提出したもので、「日本の主要な島々を、連合国のための占領地域に分割し、特にソ連には北海道を割り当てる」と、北海道全島占領を求める内容が記されていた。
(中略)
一方、同8月27日、海軍軍令部国際法部長ニコライ・ボロゴフが作成した文書では、「海軍としては日本の以下の地域の管理に関心を抱く」として南樺太、千島列島、北海道、朝鮮半島北部、釜山港、対馬が挙がっていた。北海道全島がソ連の占領地域となれば、宗谷海峡と津軽海峡に加え、函館、小樽、室蘭などの港を自由に利用できるとも記載されていた。

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