ちょうど2年前に発せられた「医療者の暴言」から考えたこと

 パソコンの中に残っている文章を眺めていたら、面白いものが出てきた。
 2020年12月21日、つまり2年前の昨日、日本医師会などが発表した暴言だ。当時の私は、「これは医療の黒歴史として記憶しておかねば」と思い、コピペして残しておいたようだ。そこには当時の私が残した絶望感に満ちた感想が付してあった。
 この暴言、今も医師会のHPに残っているのかもしれないが、バカバカしすぎて調べる気にもならない。
 折角なので、忘れないように、ここに残しておく。

医療緊急事態宣言
新型コロナウイルスの感染拡大はとどまることを知らず、このままでは、新型コロナウイルス感染症のみならず、国民が通常の医療を受けられなくなり、全国で必要なすべての医療提供が立ち行かなくなります。
医療崩壊を防ぐために最も重要なのは、新たな感染者を増やさないことです。国民ひとりひとりの粘り強い行動が感染拡大から収束へと反転する突破口になります。
このクリスマスや年末年始が、今後の日本を左右するといっても過言ではありません。 医療従事者を含めたすべての日本国民が一致団結し、新型コロナウイルス感染症を打破する意を決するときは今しかありません。 皆様に安心して新年を迎えていただくために、以下を宣言します。
一.私たちは、国や地方自治体に国民への啓発並びに医療現場の支援のための適切な施策を要請します。
一.私たちは、国民の生命と健康を守るため、地域の医療及び介護提供体制を何としても守り抜きます。
一.私たちは、国民の皆様に対し、引き続き徹底した感染防止対策をお願いします。
2020年12月21日
公益社団法人 日本医師会    
公益社団法人 日本歯科医師会  
公益社団法人 日本薬剤師会   
公益社団法人 日本看護協会   
一般社団法人 日本病院会    
公益社団法人 全日本病院協会  
一般社団法人 日本医療法人協会 
公益社団法人 日本精神科病院協会
公益社団法人 東京都医師会  

 当時は怒りと絶望感しか感じなかったが、今読むと同業者どものあまりの自己陶酔ぶりに苦笑するしかない。この文章をいい歳した大人がみんなで考えて作ったんだねぇ・・・いやあ、困ったね・・・
 
 医療従事者の多くが、医学以外のことを知らない、「忙しいから」勉強する気もない(彼らは、世の中の数多の職業の中で、医療者が最も責任が重く、かつ忙しい、と考えているのかもしれない)。にもかかわらず、その無知を恥じることもなく、あろうことか人々に上から目線で講釈を垂れる。そしてその講釈を有難がられることで、さらに舞い上がる・・・あまりにも愚かだ。
 医療者は「他分野の考え方について学ぶ必要があること」に気づく感性を身に着けなければならない。医療者が考える「客観性」は、実は医療者の主観でしかないかもしれない、と立ち止まる姿勢が必要だ。
 
 一方で、医療が政治に影響力を持ちすぎていること、そして政治が医療に対してあまりにも無批判であることが、医療側の勘違いを助長している。
 この勘違いを抑制するためには、複数の専門知を批判的に検証し、統合し、調整することが必要だ。その基準は「常識」、「慣習」や「因習」等ではなく、先人によって積み重ねられてきた歴史や思想に裏打ちされた「常識」、ここに置くしかない。常識を身に着けるには、好奇心と疑問を忘れず、謙虚に学び、各々の日常の中で考え続けるしかない。我々はその営みを怠ってはならないのだろう、専門知の暴走を食い止めるために。

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