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【Season2 Vol.13】 JATO ATCリレー: 高橋 雄介さん

【Season2 Vol.13】 JATO ATCリレー: 高橋 雄介さん

JATO ATCリレー Season2の第13走者は、五明 浩一郎さんからバトンを受け取ってくださった、高橋 雄介さんです。

高橋さんと五明さんは、お二人の共通のご友人を通してアメリカで知り合われたそうです。高橋さんが大学院進学するにあたり、五明さんにご相談されたこともあるそうです。また、高橋さんがMajor League Baseball (MLB)で仕事を探されていた際、五明さんもお仕事を探されていたそうで、高橋さんは大変勇気付けられたと仰っていました。長くMLBでご活躍されている高橋さんにお話を伺いました。是非ご一読ください!

ATCになろうと思ったのはいつですか。またその理由を教えてください。

Texas State University-San Marcosへの進学を決意した時です。当初は日本の体育学部で学び、“アスレティックトレーナー”を目指したいと考えていました。しかし大学に合格することができずに、予備校に通うことになります。その間もなかなか心の中の炎を消すことができずに、最後の望みを託して、アメリカの大学への進学、そしてATCを目指す決断をしました。

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今、どんなお仕事をされていますか?

MLB・Los Angeles Angelsで、アスレティックトレーナーとしてマイナーリーグを担当しています。2021年シーズンで8年目。最下層のルーキーリーグから自身のキャリアをスタートし、2021年はメジャーから2つ下のDouble-Aを担当しました。スクリーニングや測定、ケガ予防プログラムの作成・実行、メンテナンスケアや治療、ケガや状態の評価・判断、応急処置、リハビリと競技復帰プログラムの作成・実行、チームドクターとの連携などが主な業務内容です。加えて、コーチングスタッフ・他部門スタッフ・フロントオフィスとの連携・意思決定も、アスレティックトレーナーの重要な任務です。

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シーズン中の高橋さんの1日の動きを教えて下さい。

マイナーリーグでの典型的な一日を紹介させていただきます。
12:00pm頃に球場に出社し、トレーニングルームのセットアップやその日の活動の確認をします。1:00pm頃から、リハビリ、トリートメント、活動前のプレップワークなどをスタートし、3:00pm頃からフィールドでのチーム練習が始まります。その時間に合わせて、個別にリハビリ組の競技復帰に向けたプログレッションなどを行います。その後5:00pm頃から、トリートメントの続き、各選手の試合前の準備、先発投手のストレッチなどを行います。試合開始は7:00pm。試合中は終始ダッグアウトで選手の動向を見守ります。試合終了後はトリートメント、選手の状態確認とコーチングスタッフへのアップデート、ケガのレポート作成・送信、トレーニングルームの整理・片付けをして、家に戻るのは12:00amを過ぎる頃でしょうか。基本的には1日の活動時間は11時間から12時間。シーズンの約6ヶ月間に、遠征やデーゲームも交えながら年間140試合ほどを戦います。

情熱を持って現場で仕事を続けられているモチベーションやパワーの源は何ですか?

まずはこの仕事が、子供の頃の夢の延長線上にあるということです。野球少年として育った私は、当時から野球、そしてスポーツに夢を見出してきました。大人になった今、今度は私がその夢見た場所にいる、そこで仕事ができている。その事に感謝をしながら日々を過ごすように心がけています。

もう一つは、マイナーで共に過ごした選手たちが成長し、上のレベルに昇格していく姿を見ることです。過酷なマイナーリーグで、彼らはたくさんのチャレンジを強いられます。そんな中、共に苦楽を経験し、少しでも彼らの成長に貢献できた時、そして最終的にメジャーの舞台で躍動する彼らを見る時は、何物にも代えがたい感動があります。

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アスレティックトレーナーとして大切にしていることは何ですか?

一つは、自分の精神状態をできるだけ一定に保つことです。日によって機嫌が良かったり悪かったりすることなく、常に選手が “話しかけやすい” 雰囲気を持つことを大切にしています。

もう一つはバランスを保つことです。真面目過ぎず、ふざけすぎず。選手との距離感も近すぎず、遠すぎず。周囲を見ながら、選手、コーチ、他部門スタッフ、フロントオフィスのちょうど真ん中に立ち位置を取り、常にフラットに人と接することを心がけています。

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あなたにとって、JATOはどんな存在ですか?

尊敬と感謝です。
設立から今日に至るまで活動を続けてこられたJATOさんのおかげで、我々ATCが今、日本で活動することができます。私もここ数年、次世代のATやATを目指す学生の皆さんに、私の経験をお伝えする機会が増えてきました。その都度、この業界を日本全体で底上げしていくことの大切さを実感しています。ATの認知度・地位向上のために多方面から活動されているJATOに、同じ業界の一員として心より感謝申し上げます。

長く同じ球団で活躍されていますが、アスレティックトレーナーとして求められる要素は変わってきていますか?また、チームの文化をアスレティックトレーナーとしてどのように支えていますか?(前回の五明さんからのご質問です。)

基本的には変わりません。ただ、近年は特に他部門のスタッフとの連携をより重要視するようになっています。アスレティックトレーニングだけでなく、組織の中の他部門を理解できるだけの知識・情報を持つことが大切だと考えます。

選手からのリクエストにただ応えるだけではなく、“自立し、自らの意思で行動できるように、いかに選手を導けるか”を念頭に活動しています。プレップワーク、機能改善やケガ予防のエクササイズなど、その重要性を理解し、誰に言われずとも取り組める選手は、上のレベルに昇格していく傾向があります。自ら行動できる選手を1人でも多く創り上げていく事が、チームの文化、そして組織の文化の土台になっていくと信じています。

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今後の目標や展望を教えてください。

3つの未来を考えています。

1つ目は、Angelsでメジャーリーグに昇格し、世界最高峰の舞台で仕事をするということです。そのためには、現在のマイナーでの仕事に誠実に取り組む事、そして学びを続ける事が不可欠です。何か自分の武器となる特別な技術の習得も必要かもしれません。

2つ目は、私の子供の頃からの憧れ・日本プロ野球へのチャレンジです。アスレティックトレーニングだけでなく、PTやS&C、セラピストへの理解と学び、さらには日本のシステムへの順応も重要と考えます。野球界への貢献と自身の成長を日本で追求できるとすれば、それは本当に素晴らしい事です。

3つ目は、地元スポーツチーム、地域の方々、次世代のアスリートへの貢献です。野球だけでなく他の種目、高齢者から少年少女、プロアスリートから一般の方々まで、多方面から学びを深めることが必要です。地元である東北そして山形をスポーツで盛り上げる、その一翼となれれば素敵です。

あなたにとって、ATCは<ひとこと>で言うと、どのような職業ですか?またその理由を教えてください。

“舵取り”でしょうか。組織の中では、監督・コーチングスタッフ、選手、他部門スタッフ、フロントオフィス、それぞれの立場・考えを把握理解し、総合的に最善の選択を繰り返していきます。アスレティックトレーナーは、周囲を見渡しながら意思決定をし、チームを目的地に導く、チームの“舵取り”です。

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【編集後記】 高橋さん、シーズン終盤でとてもお忙しい中、ご協力いただきどうもありがとうございました。MLBで長くご活躍される高橋さんは、アスレティックトレーナーを目指している方々にとっての憧れの存在ですね。高橋さんからいただいたお答えには、アスレティックトレーナーとしてとても大切なことが詰まっていると感じました。次回は高橋さんと同じリーグで約3年間対戦相手のアスレティックトレーナーとして活動されていた方に登場していただきます。どうか楽しみにお待ちください!

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