AU#24「軽微な筋線維の壊死を伴う筋損傷後のアイシングは誘導型一酸化窒素合成酵素表現型マクロファージの侵入を制限し、筋再生を促進する」
まとめ
2021年の報告では、肉ばなれを模した筋損傷にアイシングを行うことで、炎症性マクロファージの到着が遅れて炎症の開始が遅れ、さらには抗炎症性マクロファージへの切り替えも遅れて炎症期が長引くことで、筋再生が遅れてしまうといった結果でした。今回紹介した研究では、圧迫による軽微な筋損傷を対象としています。つまり、運動によって起こった軽微な筋損傷にはアイシングは有効で、肉ばなれなどの重度な筋損傷にはアイシングを行わない方がいい可能性があるということです。ただ、これらの研究結果はあくまで筋損傷に対するものであり、靭帯や腱の損傷には適応できません。さらに、筋損傷の機序が圧迫であり、運動によって起こる筋損傷の機序とは異なることも考慮する必要があります。また、今回の研究は動物実験であり、ヒトにも同様の現象が起こるかどうかはわかりません。
個人的には、アイシングの鎮痛効果や腫れを抑える効果のメリットは無視できませんし、復帰まで2週間かかる怪我の筋再生の遅れと、3ヶ月かかる怪我の筋再生の遅れでは、その捉え方も変わってきます。今はアイシングに関して重要な過渡期であり、最新の情報を取り入れつつ、状況や背景に応じて最も適切と思われる判断を下していく必要があります。
Reference
Nagata I, Kawashima M, Miyazaki A, Miyoshi M, Sakuraya T, Sonomura T, Oyanagi E, Yano H, Arakawa T. Icing after skeletal muscle injury with necrosis in a small fraction of myofibers limits inducible nitric oxide synthase-expressing macrophage invasion and facilitates muscle regeneration. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2023 Apr 1;324(4):R574-R588. doi: 10.1152/ajpregu.00258.2022. Epub 2023 Mar 6. PMID: 36878487.
Dubois B, Esculier JF. Soft-tissue injuries simply need PEACE and LOVE. Br J Sports Med. 2020 Jan;54(2):72-73. doi: 10.1136/bjsports-2019-101253. Epub 2019 Aug 3. PMID: 31377722.
Kawashima M, Kawanishi N, Tominaga T, Suzuki K, Miyazaki A, Nagata I, Miyoshi M, Miyakawa M, Sakuraya T, Sonomura T, Arakawa T. Icing after eccentric contraction-induced muscle damage perturbs the disappearance of necrotic muscle fibers and phenotypic dynamics of macrophages in mice. J Appl Physiol (1985). 2021 May 1;130(5):1410-1420. doi: 10.1152/japplphysiol.01069.2020. Epub 2021 Mar 25. PMID: 33764172.
筆頭著者:岸本康平
編集者:井出智広、姜洋美、柴田大輔, 杉本健剛、水本健太(五十音順)