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AU#21: 学生が最大限の学びを得るための混合授業による反転授業の活用

序文
アクティブラーニングとは、学習過程において、学生の能動的取組みに重点を置いた教授法の総称です。多くの教職者がアクティブラーニングを部分的に取り入れているとは思いますが、計画的に一貫性を持って行われていることは多くないのではないでしょうか。アクティブラーニングと反転授業を組み合わせることのメリットは、計画性・一貫性を持ってアクティブラーニングを授業に取り入れることができる点です。今回は、反転授業や混合授業の具体例を含めた紹介や活用法をご紹介します。

論文概要
背景・目的
アスレティックトレーニングの教育における膨大な量の情報は主に講義によって提供されるが、講義は教師中心であり学生は主に受動的に学ぶ。講義のみの教授法では記憶や理解といった低いレベルの学習しか達成されないため、応用や評価といったより高いレベルの学習を達成するためには、学生が能動的に学ぶアプローチ法を提供することが必要である。反転授業は、授業前・中・後の3つの要素からなる教授法である。授業前に学生がオンライン講義や教科書などを通して授業内容に触れておくことで、授業中は能動的学習を中心に行うことができる。また、授業後には学びをさらに深めるための評価(試験や小テスト等)を行う。このような教授法は効果的であると証明されているが、学生が授業前の課題に取り組み続けるためのモチベーションを維持することの難しさなどの欠点もある。しかし、オンライン授業と対面授業を混合させた授業デザインを採用することで、反転授業の欠点を補うことができる。例えば火曜日と木曜日に授業がある場合、火曜日に授業前の要素であるオンライン授業を行い、木曜日に授業中・後の要素を対面で行うことで、学生のモチベーションに関わらず反転授業の3つの要素を周到することができる。本論文の目的は、混合授業デザインを用いた反転授業にアプローチする方法に関する理論的根拠と、教員が成功するために必要なリソースを提供することとした。

授業前:オンライン授業
反転授業における授業前要素は、オンデマンド形式で授業内容に初めて触れる機会であり、教員は授業の目的に合わせて導入となる資料を提供する。オンデマンドの授業動画が最も一般的に用いられるが、この際、授業内容を10分から15分以内の動画に分けて提供することで集中力を切らすことなく学習することができる。また、講義スライドは画像や図形と最小限の文字を使用し、教員が内容を説明することによって、文字が多いスライドよりもより良い学びにつながることが報告されている。さらに、重要なポイントには強調するキューや学生への問いかけを追加することで、何が重要かを学生が理解しやすくなる。また、クイズやレポートなどの評価比重の低い課題を課すことによっても、学ぶ範囲の読書や講義動画に取り組む動機を提供することができる。このように、学生が自分のペースで授業内容に事前に触れることで、対面授業のための準備を整えることができる。

授業前中:対面授業
対面授業では、授業前のコンテンツに基づいて学生に実演課題を課す。
授業の最初に、オンライン授業の内容に関する不明点を明確にする。不明点や理解度を確認する際、オンラインの投票ツールなどを活用することで、匿名性が守られ学生にとって安全な形で確認が行える。必要に応じてミニレクチャーを行い、学生が授業内容を理解していることを確認した上で、アクティブラーニングに進む。
アクティブラーニングにはfishbowl、concept mapping、jigsaw、note sharingなどの様々な方法があるが、筆者が一貫して使用するものに、think-pair-share法がある。この方法は、各グループにシナリオを提示することから始める。整形外科的評価法の授業であれば、例えば“両側を比較評価した結果、0°の外反ストレステストで陽性であった。この原因となりえる機序は何か、また、その機序において他にも損傷の可能性がある構造は何か、さらに、それらの構造を評価するスペシャルテストは何か?”といったシナリオを提示する。各グループの学生は与えられたシナリオに答えるためのグループワークを与えられた時間内で行い、最後にクラス全体に向けて結果を発表する。この活動の後、不明な点や質問がないかの再確認を行う。このような形のアクティブラーニングを行うことで、教員は学生の学びをより適切に観察することができ、必要に応じてフィードバックを与えることができる。

授業後:学習評価
授業後の学習評価には、形成的評価と総括的評価が一般的に用いられる。試験や小テスト、レポート、プレゼンテーションなどを用いて行われる総括的評価は成績評価を行う上で重要であるが、形成的評価も検討するべきである。学生への質問、学生からの質問、理解度のチェックなどを通して行うことができる形成的評価は、学習プロセスのどの段階でも行うことができ、成績に含まれないこともある。この評価法は学習の途中で学生にフィードバックを行ったり、教員の教え方を調整したりすることに役立つため、反転授業の活用にとって重要な要素である。

結論
アクティブラーニングの活用は、技術や知識の応用、分析、評価などのより高いレベルの学びにつながる。反転授業と混合授業デザインを組み合わせることで、学生主体のアクティブラーニングを行うことができる。反転授業では、教員の役割は、“舞台上の賢者”から“寄り添う導き手”へと移り変わり、総括的評価と形成的評価の両方を行うことで学生が最大限の学びを得る手助けをすることができる。

まとめ
アクティブラーニングにおいて、実際どの程度の自由を学生に与えるのか、また、どうすれば能動的に取り組んでもらえるのか、この論文からヒントを得られたのではないでしょうか?より詳しい注意点なども本文には書かれていますので、興味のある方は是非読んでみてください。また、アクティブラーニングには反転授業の他にも様々な手法があり、論文やウェブサイトなどで紹介されています。バリエーションを持つことで学生も楽しみながら学ぶことができると思いますので、みなさんの指導法や指導環境に合った手法を見つけてみてはいかがでしょうか?

Reference
Heinerichs S, Pazzaglia G, Gilboy MB. Using Flipped Classroom Components in Blended Courses to Maximize Student Learning. Athl Train Educ J. 2016;11(1):54-57

文責:岸本康平
アカデミックアップデート・メンバー:井出智広、姜洋美、柴田大輔、杉本健剛、高田ジェイソン浩平、高萩真弘、水本健太(五十音順)


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