見出し画像

中学高校留学 オーストラリアとイギリスの大学入試システムを理解する。A-LEVELとATARを比較して留学先を決めるという考え方もある。

ずっとオーストラリアの中学や高校で学びたい人に留学のアドバイスをしてきたので、イギリスやアメリカやカナダの教育システムも理解はしていたのですが、実際にオーストラリア以外の国で学んでいる生徒に勉強を教えることでイギリスやカナダやヨーロッパ(アメリカンスクール)の教育システムに触れると想像をはるかに超える教育システムの違いを感じます。

今日は、オーストラリアの大学入試システム(ATAR)をイギリスの大学入試システム(SIXTH FORM)と比較して、同じ英語圏でも大学に入学するためのステップが大きく違うことを理解してもらえればと思います。

イギリスの教育制度に関しては、現在イギリスで学んでいて数学を教えている2名の生徒(1名は日本からの留学生、もう一人はイギリスで育ったローカルの生徒)のみの情報なので、その点はご了承ください。

今回は多くの人に海外の大学入試のシステムが日本と大きく異なり、また同じ国でも全く違う教育環境で大学入試に向かっている現状を理解してもらえたらな。と思って書いています。ですので、本当はマニアックな点も書きたくて仕方がないのですが、表面上の違いがメインである点は理解していただければと思います。

オーストラリアは、州ごとに教育システムは異なります。一方、イギリスは学校が選んだテキストによって試験を受けます。

オーストラリアの場合は、それぞれの州によって教育システムは異なり、選択する教科や学ぶ内容も異なります。最終的には、どの州で学んでいても、ATARという統一された得点で評価されることとなり、当然違う州の大学や、海外の大学の入学を希望する場合も、そのATARの得点で合否が決まることになります。

一方イギリスの場合は、イングランドとウエールズで大学入試のシステムが異なりはしないが、それぞれの学校は、どのテキストで学ぶのかによってテキストごとに大学入試の試験を受けることになります。また、同じ学校でも、教科ごとにテキストが違う場合が多く、日本のように受験生全体が同じ試験問題で受験するということではないわけです。

スケーリングをするオーストラリアとスケーリングをしないイギリス

スケーリングは、それぞれの教科の難易度の是正をすることです。つまり、オーストラリアの場合は、数学はどの州も、4つくらいのレベル分けが行われ、一番低いレベルの数学は小学生から中学1年レベルの数学です。

ですので、小学生レベルの数学を受けた生徒が満点を取ったとして、それと複素数平面や媒介変数表示などが試験問題に出るハイレベルな試験で80点を取った生徒を比較して、小学生レベルの数学で満点を取った生徒の方がいい得点を取ったのでは納得できないわけです。

また、オーストラリアでは、自由に教科選択ができるために、すべての教科でスケーリングが行われます。オーストラリアでは理系志向が強いために、数学のハイレベルの教科を選択するとスケーリングが高くなる傾向があり、文系の生徒でも学力の高い生徒はハイレベルな数学を選択生徒がいます。

一方、イギリスではスケーリングは行われません。数学の場合は、一般数学とハイレベル数学の2教科で、一般数学でも、加法定理や微積分、ベクトルなども学びます。日本と同じ感覚ですので、スケーリングは行われません。

つまり、高いレベルの数学のA*(A star)と、フランス語のA*は同じポイントになるわけです。ですので、スケーリングがないイギリスでは文系の生徒は数学が必須教科ではないので学校などでも高得点を取るためにあえて理系の生徒と競合する数学を選択教科として取らないように指導するわけです。

日本では文系の生徒の場合は、ほとんどの大学では国語は受験科目になります。しかし、イギリでは文系の生徒であっても経済学部や法学部を希望する生徒は英語(国語)を選択しなくてもいいわけです。イギリスの場合は、教科選択できるのにスケーリングはない。国語が苦手ならセンター試験で国語を受験しなくてもいい。というシステムなのです。

ちなみにオーストラリアでは英語(国語)は必須教科です。ただ、留学生の場合は留学生の英語を選択することになります。留学生の英語を選択しますが、留学生に学力の高い生徒が多いために留学生の英語でのスケーリングで不利を受けることはそれほどありません。

つまりスケーリングは難易度ではなく、あくまでも他の生徒と点数比較をして、不公平を是正するシステムなので、スケーリングの得点計算方法をかなり強引ですが書いたブログがあるので参考にしていただければと思います


オーストラリアでは選択科目は5教科または6教科。イギリスは3教科または4教科。オーストラリアでは英語はどの州も必須教科。

イギリスはGCSEのテストで義務教育が修了して、sixth formから大学入試の準備段階に入ります。選択教科は3教科または4教科になりますが、大学で学ぶ可能性のある教科は必須教科となります。

イギリスの場合は、教科数が少なく、理系の生徒の場合は、理系教科のみに専念できるメリットがあります。つまり、数学、ハイレベル数学、物理、化学だけやっていればいいわけです。

一方、オーストラリアでは、義務教育が修了すると、州ごとに名称が異なりますが、シドニーのあるNSW州ではHSCが始まります。

これもイギリスのsixth formと同じで、理系の生徒はハイレベル数学1と、ハイレベル数学2と、物理、化学、それに英語でいいわけです。オーストラリアは基本的に5教科または6教科ですので、イギリスのA-LEVELの選択に英語を含めた感じになります。

イギリスの場合は、理系の生徒は、ハイレベルの数学を受けた後で、再度ハイレベルな数学を受験して、その後にインタビューでまた専門分野の数学に関わる面接がありますので、オーストラリアのようにHSCを受けたら後は結果待ち。と、いうものではありません。

ですので、難易度はイギリスの数学方が理系の生徒にとっては高いような感じで考えた方がいいと思います。

昔懐かしいクイーンズランド州のMATHS Cのテキスト

オーストラリアでは、ATARのスコアは学校の授業の点数も50%加味されますが、A-LEVELの場合は、テストの点数のみでの得点となります。

オーストラリアでは学校の成績も得点にします。これは、アサイメントや学校の授業のテストなども数値化して先生は評価するわけです。また、その得点基準は州の同じ教科の先生同士で共有することになります。

ただ学校のレベルが違うと、学校のレベルもATARの得点に加算されると進学校は不利になるのではないか?という懸念もありますが、それもトライアルなどでスケーリングされます。また、成績の付け方を州全体で共有しているために、絶対評価での点数ですので、一定の基準を超えていれば得点が加算されるために、先生の主観性はなく、結果を客観的に評価すると考えてください。

イギリスの場合は、大学の合否は学校での活動内容やインタビューの成績も加味して合計得点で合否が決まります。

ですので、A-LEVELの得点のみが選択した教科の得点となるわけです。その上でのインタビューだと考えてください。

イギリスでもオーストラリアでも浪人という言葉は説明できない!

イギリスもオーストラリアも大学入試の試験を受ければ、上位から合否が決まるので、成績が低い生徒でも例外を除けば大学には入学できる。つまり、MOCK(模擬試験)を行い、その成績に沿って生徒は志望校を決めることになる。つまり東京大学の合否判定がCとかDとかEの生徒は残念ながらその大学へのオファーはしない。

それをイギリスでは1年前にMOCKを行い、再度やることもできるが基本的に1年前に志望校をいくつか決めなければならない。

最後の一年間で大逆転があるのでは?

あるかもしれないが、そんなことを言ったらきりがないわけです。

オーストラリアでは10月に試験があるのですが、mockは8月に行われます。このトライアルは、学校の成績をスケーリングすることも主な目的で、それにプラスして志望校を絞ることになります。

ですので、オーストラリアのHSCなどの州ごとの試験は、トライアルが学校の評価を上げるために学校が一丸となって臨みますが、本番のHSCは他の国と同様に個人の試験になるという不思議なシステム化もしれません。

非常に簡単ではありますが、以上がオーストラリアとイギリスの大学入試のシステムの比較になります。

今までの日本人の海外留学は英語を学ぶための留学。という側面が強かったと思います。また、日本人の海外の大学での志望する学部は合格しやすい文系学部が大半だったと思います。

しかし、英語圏の国では積極的に外国人の雇用を始めましたが、基本的には理系の職業に関してです。永住権の基準も理系学部出身者に有利なシステムに変わっています。

英語の得意な生徒はどうしても数学が苦手な傾向があります。しかし、それは英語は自分で頑張れば克服できるのに対して数学は自分で頑張って考えるよりもしっかりと納得した説明をして理解しなければ高校数学は突破できません。

その上に、日本の数学は大昔に英語のテキストを訳した意味不明の呼び方で学んでいるため、英語が得意な人を悩ませている現実もあり、どうしても英語力が高い生徒にとっては数学用語を日本語で覚えようとすると大きな壁にぶち当たります。

小中学生くらいから英語力を伸ばすだけでなく、しっかりとそれに合わせて数学を伸ばしていけばいろいろな選択肢から自分の進路を選べると思います。

オーストラリアとイギリスの大学入試のシステムを簡単に説明しましたが、こう考えると日本の入試システムは本当に特殊過ぎて国際的に後れをとってしまうような気がします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?