イギリスの高校に通う生徒が、オーストラリアの数学の大学入試問題に挑戦した時のお話。no more than 2 students can sit togetherの意味は?
日本人にとって、数学とは日本語の数学であって、ほとんどの人は海外の数学の問題に触れることはない。
また、数学は計算式であって、数学用語は万国共通だから英語が理解できなくても数式を見れば解けるだろうから大丈夫。
と、考えている人も多い。
イギリスの数学の教科書で背理法の勉強をする時、最初に背理法とは何か?を説明した文章がこちらです。
A contradiction is a disagreement between two statements, which means that both cannot be true.
Proof by contradiction is a powerful technique.
To prove a statement by contradiction you start by assuming it is not true. You then use logical steps to show that this assumption leads to something impossible (either a contradiction of the assumption, or a contradiction of a fact you know to be true). You can conclude that your
assumption was incorrect, and the original statement was true.
正直イギリスの学生でも、ほとんどの生徒は文章を読めても、内容を正確に把握する生徒は少ないわけです。ただ、この程度の英文であれば、5秒程度で読み終えるようになってほしいわけです。
つまり、日本人が数学を英語力が無くてもどうにかなるのは、すでに学ぶ内容を十分に理解しており、英文のない計算式に限定されるわけです。この背理法の解説をイギリスの学校の授業で聞いてわかりますか?ということです。
今日は、海外の数学の問題に触れながら、英語が話せるようになりたい、英語力を付けたい。と考えている人限定ですが、数学の勉強をしながら、英語力も伸ばすための方法の一つを、紹介したいと思います。
2か月ほど前に、現在イギリスの高校で勉強している生徒に、オーストラリアの大学入試の数学の問題を出題した時の問題を利用して伝えられればと思います。
イギリスの高校に通う生徒も、実際にオーストラリアの大学入試の問題に取り組んでみて、イギリスの入試問題とは違う、本当に微妙だけど今まで取り組んだことのない形式の問題が多くとても参考になったと感じてくれたと思います。
実際に数学で上位にいる生徒は、今まで教えた生徒すべてに共通することですが、日本の問題だろうが、オーストラリアの問題だろうが、アメリカの問題だろうが、インドの問題だろうが、イギリスの問題だろうが、今まで解いたことのない形式の問題だろうが、瞬時に適応して解くことができるわけです。
それを私は伝えたかったので、時間をかけて教えたわけです。
また、現在教えている中学1年生の生徒の場合は、英語の方が明らかに日本のテキストよりも理解が早く、英語のテキストで教えた方が効率は高いことは、日本の数学テキストが強引に英語の数学用語を日本語にした解説なので、英語力の高い女子生徒や英語力を付けたい女子生徒にとっては一種の拷問である。私はそう感じてしまいます。
今回利用した入試問題はこちらです。(下のアドレスをクリックしてください。)
シドニーが州都のNSW州の大学入学のための卒業統一試験(HSC)のEXTENSION1のテストです。(EXTENSION2もあり、EXTENSION1よりもレベルは高いです。)だいたい、EXTENSION1は日本の共通テストと同じレベルだと考えてください。
日本とは違い、オーストラリアの大学入試は選択教科も多く、1か月にわたって行われます。また1教科3時間かけます。ですので、1日1教科になってしまいます。ただし、このEXTENSION1の入試問題は2時間ですが、これは、単位が1UNITのためです。ほとんどの教科は2UNITSのため。
その中から簡単な説明しやすい簡単な問題を2問選びました。
最初の問題はこちらです。
A group with 5 students and 3 teachers is to be arranged in a circle.
In how many ways can this be done if no more than 2 students can sit together?
A. 4! × 3!
B. 5! × 3!
C. 2! × 5! × 3!
D. 2! × 2! × 2! × 3!
この問題は日本では数学Aで学ぶ、場合の数と確率の円順列の問題です。
ちなみに、円順列はcircular permutationです。
この問題の中で、英訳のポイントは
no more than 2 students can sit together
だと思います。
no more than 2は2を含みます。
つまり、2人までしか並んで一緒に座ることができない。
と、訳すわけです。
つまり、この問題の訳は
3人の先生と5人の生徒のグループがいて、円テーブルに座る場合に、生徒が3人以上並んで座らない座り方は何通りありますか?(わかりやすくするために円テーブルを使いました)
図にするとこうなります。
つまり、teacher A をreference pointにして、the teacher A as a reference point(先生Aを固定して考える)そうすると、円順列で他の2名の先生の円順列は(3−1)!つまり2!(two factorial)となります。
そして、生徒5人が座れるのは、その間3つのスペースX,Y,Zになるわけです。3人以上が並んで子供は座れないので、X,Y,Zに、(一人、二人、二人)を座らせるので、それぞれの場所をX1,X2,Y1,Y2,Z1とすれば、5!だけの並び方があります。
ただ、1人になる生徒は、Zだけでなく、XやYも座ることができるので、3通りの組み合わせがあり、5!に3をかけなければなりません。(この辺りが、いつも私が伝える女子の確率苦手なポイントの一つです。)
つまり、2!×5!×3となります。
あれ?
選択肢に2!×5!×3はありません。
どうしましょう?
2!×3は2×1×3になって、これは、3×2×1で3!になります。
つまり、答えはBとなります。
イギリスで学んでいる生徒は、とにかくこのような問題が弱いので弱点もわかっているのですが、どうしても試験が迫ると出題されそうな難しい問題を優先してしまうような傾向があると感じます。
次の問題です。
The temperature T(t)°C of an object at time t seconds is modelled using Newton’s Law of Cooling,
What is the initial temperature of the object?
この問題を日本語に訳すと
ニュートンの冷却法則を使って、t秒後の物体の温度は次の式で求められます。
物体の最初の温度は何度ですか。
当然、この問題を解くにあたり、ニュートンの冷却法則がどんな法則かは知らなくても問題ありません。
数学を忘れてしまった人や、まだ数学Ⅱを習っていない人には数式を見ると非常に難しい問題に感じるかもしれませんが、これは、実は問題文を読み終えたら、3秒で答えが出せる問題です。
eだろうが、43だろうが、
すべての数の0乗の答えは1です。eはネイピア数で代数ではありません。
ですので、t=0の時の温度は
15 + ( 4×1)= 19 となります。
いわゆる、10秒問題です。
問題文を理解したとしても、eの0乗を0としてしまって間違える人もいますので、本当に注意してください。
数学は、答えは一つかもしれないが、解き方は複数あることを理解する。
三角形の面積の求め方は
底辺×高さ÷2 だけでなく、 ab sinθや他にも内接円、外接円、ベクトルなどたくさんあります。
問題によって、解き方を使い分けることが本当に大切で、それができる生徒が高いレベルの大学に合格する確率が高くなるわけです。
これは、英語の場合に言い換えれば、makeをどれだけ効率的に使いこなせるかに似たような感覚だと思います。Makeは日常生活の中で自然と使い方を覚えることができるかもしれませんが、数学の問題で、いろいろな公式を使い分けるようになるのは、相当な経験と、公式の理解が必要です。
小学校で算数が得意だった、中学で数学はいつもいい点数を取っていた。
だから、高校数学も順調にいくだろう。
甘くありませんか?
高校に入学してから急に数学が出来なくなって困った。と、問い合わせが来ても時すでに遅し。の場合もあります。
共学の進学校の数学の成績の男女差をしっかりと把握する必要があります。母親の場合はデータで考えないで、自分の直感や自分の都合のいいアドバイスに気持ちよくなり失敗する場合が本当に多い。と感じます。
このような海外のテキストも活用する数学の勉強方法は英語力が高い生徒や将来英語力を活かして海外で働きたい。という強い希望を持っている生徒にとっての効率的で確実な数学の勉強方法の一つだと思います。
日本人だからといって、日本でしか通用しない勉強方法でやらなければ日本の大学受験を受ける資格がないわけではありません。
成績が上がる方法は、その生徒の長所を最大限に利用する方法だと数学だけでなく他の教科やスポーツや芸術分野も含めて感じます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?