PISA TIMSS 世界教育ランキング上位国を比較してみてわかること
OECDが行っている教育ランキングの中で義務教育時のmathematics , science, readingの学力をテストするPISAのランキング(2018年)は下記の通りになります。
1位 中国(ただし北京、上海を含む4都市のみ)
2位 シンガポール
3位 マカオ
4位 香港
5位 エストニア
6位 日本
7位 韓国
8位 カナダ
台湾
10位 フィンランド
21位 オーストラリア
25位 アメリカ合衆国
今日は、この中で、中国、エストニア、日本、韓国、フィンランド、オーストラリア、アメリカ合衆国の7か国を比較して世界の教育システムをいろんな視点で見つめてみたいと考えています。
ある程度は予想できたことですが、東アジアが7か国ベスト10にランクインしています。中国、シンガポール、マカオ、香港、台湾は基本的に中国系の人種ですので中国として比較します。
まず、あまり日本人が知らない日本の教育システムの特徴を3つ挙げます。
女性教員の比率 ダントツ最下位(ランキング上位国の中では)
教師の1日の拘束時間 ダントツ1位
教師がもし生まれ変わったらまた教師になりたい 最下位(2位は韓国)
個人的な意見ですが、小学校の教員は基本的に全員女性でいいと私は思います。オーストラリアではほとんど小学校の先生は女性の先生です。ちなみに、日本のことは詳しくわかりませんが、普通は、小学校の先生も、低学年、中学年、高学年と分けて採用するようにするのが普通だと思いますが、日本はしているのでしょうか?
ついでに言えば、PISA上位国の中で、日本人の英語力はダントツの最下位。世界でも55位。ですので、ユーチューブの動画なども日本の教育を紹介する場合は、日本人のインタビューは基本的に日本語で日本人が話して、英語に画面上翻訳されるのが一般です。結局ほとんどの教師が英語が話せないわけです。このような母国語インタビューは日本と韓国がほとんどです。
PISAのランキングは東アジアの国が上位を占めていますが、これは文化の違いだと考えていいと思います。孔子の教え、つまり儒教がベースになっている東アジアは、とにかくハードワークが基本です。
学校の授業が終わって、そのまま自宅に帰らずに塾へ。塾から帰って家でも勉強。進学校を目指している生徒は基本当たり前の日課だと思います。そのうえで、夏休みや冬休みは学校や塾で夏期講習があるので、実質長期休みはほぼゼロに等しい。韓国や中国では勉強へのプレッシャーで自殺者が出て社会問題になっているのが現状です。
上位国でこの東アジアのハードワークでの成績上昇と対極をなすのがフィンランドです。
教師の拘束時間は日本の半分ほど、学校の始まる時間も遅く、終了時間も早い、そのうえ休み時間もランチも含めれば2時間ほどあります。基本的に宿題もほとんどなく、当然夏期講習などは全国民発想すらできないわけです。
ではなぜこのシステムで長年上位を維持できるのか?
教員の質が非常に高いわけです。
フィンランドの教員の収入は医者と同額と言われています。
さらに凄いのは、フィンランドの学生で私立の学校に通っているのは全体の3%未満。ほとんどは、能力別の学校ではない、Comprehensive school に通学しています。もちろん入試も大学入試までありません。塾などは論外です。
教育費は、大学まですべて無料。
これによって、収入の低い家庭でも分け隔てなく勉強ができるわけです。アメリカ合衆国などの英語圏の国や中国、日本、韓国などの東アジアの国は、言い方は悪いですが、お金持ちが圧倒的に有利な教育システムということです。
ちなみにカナダが8位になっていますが、これは中国人の比率が高いからで正直参考になりません。ニュージーランドもオーストラリアもアメリカ合衆国も同様です。
オーストラリアの成績優秀者の表彰式などに何度か参加しましたが、基本的に英語、数学、理科、社会の成績上位者はほとんど中国系の生徒で、芸術系の一部に白人が見られる程度で、参加すればわかりますが、シドニーの西部の成績優秀者の表彰式は完全な中国人だけの集会と言われても間違いではありません。
エストニアに関しては、1991年の独立まではソビエト連邦の一地域に過ぎなかったために、急激に学力をつけてきた国です。海を隔てているフィンランドとは同じ民族になります。99%の公共機関の手続きがインターネットで完了できるIT国家で、国を挙げての教育改革はフィンランドに迫っている国です。
当然フィンランド同様、スパルタ式の教育方針ではありません。公用語はエストニア語ですが年配の人はロシア語しか理解できない人も多いですが、若い世代は英語を流暢に話せる人が多い国です。イギリスなどの語学留学も積極的に行い、海外の生徒にも広く門戸をかけている国です。
政府が平等の教育をうたっており、成績上位国の中では貧富の差による教育格差が最も低い国という位置づけです。エストニアは人口が130万人で青森県と同じ人口規模です。
個人的な意見ですが、社会の仕組みが非常に複雑になり、犯罪などもテクノロジーとの戦いとなると思います。また、IT社会になり、単純労働の需要は減っていくことも考えられ、さらに環境問題、宗教問題、人種問題など世界的に取り組まなければならない問題が増えていくことも考えると、教育の重要性はさらに増していくと思います。
教室の質を上げることはとても大切なことだと思います。そして、教師には専門教科に集中してもらい、部活を日本はまだ続ける選択を取るなら、専門のコーチを雇用したり、進路相談や悩みの相談はしっかりと資格のある専門家を雇用する必要があると思います。
もう一つ、教科ごとのカリキュラムですが、私はアメリカのそれぞれの教科のテキストが非常に気に入っています。難しい問題で実力に差をつけるのではなく、効率性や視野を広げることを中心に編集されています。
勉強とは知識をむやみに詰め込むことではなく、短時間で適切な問題解決の能力を備え付けるものだと思います。特に、今後はスマホの中に知識は詰め込まれていますので、その知識を最大限に生かす数学的な思考が大切になってくると思います。
日本の場合は英語教育を含めて、他の国に比べて対策が遅れているように感じます。今までと同じ教育を続けていけば、PISAやTIMMSなどのランキングは上位に残っているかもしれませんが、国際社会からはどんどん存在感が薄くなっていくのではないかと思います。