何が正解か分からなくなる夜。 #バータイムの読みもの
同期の秘密
秘密を抱えたまま結婚した同期。
今も秘密を隠し通すことと、パートナーと共にいる人生を生きることの両方を選んでいる。 いつまで隠し通せるのか見ものだなと、日本酒の杯を傾けながらほくそ笑む、私。
絶対に気づかれないように最大限配慮しながら生涯のパートナーとして愛された人は、その秘密を知ったときどんな反応をするのだろう。
怒るだろうか、悲しむだろうか。
騙されたと、なめられていると激昂して戻れない関係になってしまうのか。
配慮や意志の貫きに愛情を感じるだろうか。
愛は責任だ。
共にいるという選択には責任がある。
物乞い
新橋駅銀座口。
仕事終わりのサラリーマンでごった返した高架下の交差点に、物乞いをする老人がいた。
こういった繁華街ではよくみる光景だ。
不思議と手を合わせるその姿に、今日は気になってしょうがない。さっきの日本酒がまわっているのか。
あっ… 思わず声が出かけた。
片手が、手首からなかった。
五体満足だったらそんな行動に出なかったのか?いや、それに可哀想という感情とも違う。
私は千円札を老人の足元に置いた。
ホームレスや物乞いをする人たちにも、コミュニティや縄張りがあると聞いたことがある。家がない、生活が苦しいということよりも過酷な現実がそこにはあるのだろう。
立ち上がった瞬間、すれ違ったサラリーマンが投げやりに言ってきた。
「そんなの全部お酒に消えるよ」
金曜夜のロマンスカー
何やら若いサラリーマンが接待を受けているようだった。店の雰囲気に対してやたら騒がしい。
席配置や外見の年齢を見るに、何か特別優遇すべき力関係に違いない。接待する側は50代、ソファ席で接待されているのは30代前半に見えた。
緑茶ハイを飲みながら聞き耳をたてて見ると、結婚式や披露宴をどこでやったか、やりたいか。そんなマウントの取りあいをしている。
熱海城付近の結婚式場がオススメとは、いいことを聞いた。
金曜日の夜のロマンスカーは不倫旅行の温床だとは、なんと生々しい。1車両に5組はそういったカップルがいるというのだから驚きだ。
どんなロマンスに向かっているのだろう。左手の薬指を煌めかせながら嬉々と語る男性を横目に、性だなぁ…と思わざるを得なかった。