【ウクライナ侵攻】意見表明 日本のエネルギーの自立について
2022.4.28 室山哲也
ウクライナ戦争の各国の駆け引きを見ていると、安全保障の要素として、エネルギーがどれほど重要かがよくわかる。豊かな天然ガスを持つロシアに対して制裁をかけようにも、「ガスを止めるぞ」と言われれば、動きが取れなくなる。安定した安全保障の構造を作るには、多様な調達先を確保するばかりでなく、自前の国産エネルギーをどう育成するかが重要なカギになるのかもしれない。
日本は資源が乏しく、エネルギーも世界に依存しなければ成り立たない国だといわれてきた。しかし、東日本大震災による原発事故以来、エネルギーをめぐる様々な議論が起きている。その中に、日本が持っている自然エネルギーのポテンシャルを見直そうという動きがある。
日本は国土が狭く、陸地の広さは世界の61位の島国だ。しかし、海(排他的経済水域(EEZ))を含めると、なんと世界6位の広さの海洋大国なのだという。さらに海が深く、容積では世界4位。そこを巨大なエネルギーの黒潮が流れている(その強烈なエネルギーはほとんど利用されてはいない)。
この海を舞台に、洋上風力発電や、潮流発電、波力発電、温度差発電などを展開し、エネルギーの舞台とすることはできないだろうか。また日本周辺の海底には、固体状の天然ガス「メタンハイドレート」が大量に眠っており、日本が消費する天然ガスの、100年分に近い量があるという試算もある。
さらに、日本の地熱エネルギーは、アメリカ、インドネシアに続き世界第3位。森林率は先進国では第3位で、バイオマスの宝庫でもある。
加えて、上空から太陽エネルギーがふり注ぎ、豊富な水資源と、豊かな風力にも恵まれた国なのである。
つまり、日本列島は自然エネルギーの宝庫なのだ。
持続可能で、クリーンな自然エネルギーは、日本の安全保障の点からも、大きな可能性を持っていると言えるのではなかろうか。
2011年の東日本大震災の時のエピソードがある。
ある村が津波で壊滅し、夜は暗黒の世界となった。ところが、ある家だけが不思議なことに電気が灯っていた。その主は、かねてから、自宅で小水力発電をしていた老人だった。
「電気はいっぱいあるのに変な人だねえ」と、人々は、奇異な目で見ていた。しかしその家が、災害後、希望の砦となった。夜の村の一角を照らし、冷蔵庫もつかって、人々は寄り添い、災難を乗り越えたのだという。
もちろん、わずかな電気で、村全体を救うことはできない。
しかし、救援までの数日間、その人たちは、なんとか持ちこたえることが出来た。
このエピソードは、自然エネルギーが、災害時などの緊急時に、しぶとい地域を作り出す、重要なインフラなのだということを示している。
自然エネルギーは、単に電気を作り出すだけでなく、共に生活する地域社会が生み出す財産として、人々の心の絆をつなぎ、地域社会を強靭化する、横糸のような存在ともいえる側面があるのだ。
今後、国際世界は、環境、エネルギー、経済、安全保障を織り交ぜながら、激動期に入っていく。
日本や地域社会がどのように自立し、持ちこたえていくのかを考えるためにも、自然エネルギーにどう向き合うべきかを、考えていく時なのかもしれない。
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