【日本学術会議 任命拒否問題】 Q. 会員の任命について、過去の政府見解はどのようなものだったのですか?
Q. 会員の任命について、過去の政府見解はどのようなものだったのですか?
A. 1983年5月の国会で、政府高官が「首相は会員の任命を左右しない」とし、中曽根首相も「形式的任命に過ぎない」と答弁しています。
1983年の国会では、日本学術会議法の改正案が審議されていました。それまで選挙で選ばれていた日本学術会議の会員を「推薦制」とし、推薦された者を首相が任命しようという改正案です。野党からの「政府からの独立性が失われるのでは」との懸念に対し、二人の政府高官と中曽根首相が以下のように答弁しています。
以下、1983年5月12日の参院・文教委員会の議事録です。
まずは政府高官二人の発言です。
私どもは、実質的に総理大臣の任命で会員の任命を左右するということは考えておりません。
確かに誤解を受けるのは、推薦制という言葉とそれから総理大臣の任命という言葉は結びついているものですから、中身をなかなか御理解できない方は、何か多数推薦されたうちから総理大臣がいい人を選ぶのじゃないか、そういう印象を与えているのじゃないかという感じが最近私もしてまいったのですが、仕組みをよく見ていただけばわかりますように、研連から出していただくのはちょうど二百十名ぴったりを出していただくということにしているわけでございます。
それでそれを私の方に上げてまいりましたら、それを形式的に任命行為を行う。この点は、従来の場合には選挙によっていたために任命というのが必要がなかったのですが、こういう形の場合には形式的にはやむを得ません。そういうことで任命制を置いておりますが、これが実質的なものだというふうには私ども理解しておりません。
(手塚康夫・内閣官房総務審議官――参院・文教委員会/1983年5月12日)
ただいま御審議いただいております法案の第七条第二項の規定に基づきまして内閣総理大臣が形式的な任命行為を行うということになるわけでございますが、この条文を読み上げますと、「会員は、第二十二条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣がこれを任命する。」 こういう表現になっておりまして、ただいま総務審議官の方からお答え申し上げておりますように、二百十人の会員が研連から推薦されてまいりまして、それをそのとおり内閣総理大臣が形式的な発令行為を行うというふうにこの条文を私どもは解釈をしておるところでございます。
この点につきましては、内閣法制局におきます法律案の審査のときにおきまして十分その点は詰めたところでございます。
(高岡完治・内閣官房参事官――参院・文教委員会/1983年5月12日)
今回の改正法案のこの制度の改正は、内閣総理大臣の任命制をとるということが目的では毛頭ございません。選挙制を推薦制に変えるというのが今回の改正法案の骨子でございます。
(高岡完治・内閣官房参事官――参院・文教委員会/1983年5月12日)
そして、中曽根首相の発言は以下の通りです。
これは、学会やらあるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません。したがって、実態は各学会なり学術集団が推薦権を握っているようなもので、政府の行為は形式的行為であるとお考えくだされば、学問の自由独立というものはあくまで保障されるものと考えております。
(中曽根康弘首相―――参院・文教委員会/1983年5月12日)
こうした国会での議論を踏まえて、参院・文教委員会では、
・会員の部別・専門別定員、推薦等に関して政令を定めるに当たっては、日本学術会議の自主性尊重を基本として十分協議すること
・内閣総理大臣が会員の任命をする際には、日本学術会議側の推薦に基づくという法の趣旨を踏まえて行うこと
などを記した附帯決議が可決されました。
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