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イノベーションは想像力とコミュニケーションから生まれる。千代田化工建設 加次淳一郎さんインタビュー

JASPER note編集部の高瀬です。インタビュー企画「Bricolageの先駆者たち。」第三弾は千代田化工建設株式会社の加次 淳一郎(かじ じゅんいちろう)さんに話を伺いました。

加次さんは熱利用設備の診断・解析エンジニアとしてキャリアをスタートし、2024年3月現在は自ら企画した加熱炉遠隔診断サービス「F-Dr.s」のプロダクトオーナーとしてご活躍しています。

これまでの仕事と異なる分野への挑戦にはどんな苦労や思いがあったのでしょうか?

今回は加次さんにイノベーションを起こすヒントをお伺いしました!

エンジニアのみなさまはもちろん、新規事業開発などのイノベーションに関心があるみなさま、ぜひご一読ください!

千代田化工建設株式会社 加次淳一郎さんのプロフィール


顧客とのコミュニケーションを大事にするエンジニア

オンラインでのインタビュー風景<加次 淳一郎さん>

——最初に、これまでの経歴を伺います。どんな学生生活を送っていましたか?

学部は土木系で、大学院まで防災系の研究室に所属していました。研究テーマは津波のリアルタイム予測を扱っていて、ニューラルネットワークを使った分析などを行っていました。

修士論文は、インドネシアで起こったスマトラ沖地震で発生した津波の現象に関連して、ソリトン分裂の実験と数値予測を扱いました。

研究以外では、大学の2回生くらいからバーでアルバイトをしていました。学生が運営しているバーで、お酒をつくる勉強だけでなく、イベントの販促や企画運営などにも携わっていました。人と話すのは楽しかったです。

——就職してからのキャリアを教えてください。

今は千代田化工建設に合併している千代田アドバンスト・ソリューションズという会社に入社して3、4年はプラント設備に関するエンジニアリングソリューションを提供していました。

プラント設備には設計、建設、運営、廃棄というライフサイクルがありますが、私が所属していた部署は運営の解析や診断など設計以外の部分の問題解決を測る役割でした。弊社のプラント設計部隊に配属されたエンジニアと比較して、プラント運用の実態や課題について顧客と深くコミュニケーションしていたので、業務の課題感をより身近に感じていました。

2019年にデジタルニュービジネスの部署に異動し、自分で仕事をつくるしかないという状況になった際に、エンジニア時代に感じていた課題感を活かして診断業務をデジタル化しようと思ったんです。

これまでの診断業務をサブスクリプション方式でWeb上で提供し、顧客がいつでも必要な時にサービスを利用できるようなプロダクトを企画しました。

エンジニアからプロダクトオーナーへ

——プロダクトオーナーとしての企画・販売業務にエンジニア時代の経験が活きたことはありますか?

顧客と接点を持つことに対して、圧倒的に役立っていると感じています。エンジニアとしての信用があるのですぐに話を聞いてくれます。また、アウトプットへの信用もありますし、技術的にテクニカルな部分で顧客が求めているものが分かります

——逆に、どんな苦労がありましたか?

実は、最初の顧客はすぐに見つかったんです。10分くらい話してすぐに使いたいと言ってくれました。

ただ順調だったのはそこまでで、私たちは定常的にプロダクトを利用してもらうことを想定していたのですが、なかなかその通りの使い方をしてもらえないという壁にぶつかりました。

顧客の明確な課題に対してスポットで解決策を提供していたエンジニアリング業務と異なり、日常業務の中で使われるプロダクトにどんな機能が必要か考えたことが無かったんです。顧客が普段どんな業務を行っているか想像できていませんでした。

また、製品アウトプットによって削減される顧客コスト、例えば、費用、機会、時間、は何で、どれくらいか、といった切り口での考えが不足していたので苦労しました。企画の段階で詰めておくべきだったと後悔しましたね。

ただし、そこで諦めることはしませんでした。このプロダクトを広めていきたい、価値はあるはずだという信念はあったので、何が足りないかを色々な観点で考えながら一つずつ潰していきました。

なぜそのプロダクトが必要なのか深ぼるために「So What?」を繰り返して考えたり、顧客と実際に話しながらプレゼン資料の見せ方やサービス内容をブラッシュアップしました。今もその改善は行っています。

イノベーションに重要なのは想像したアイデアを「人に話すのをいとわない」こと

——プロダクトオーナーとしての経験から、イノベーションはどのようなことから生まれると思いますか?

まずは想像力だと思います。私は、今自分の手元にある技術を別の分野に適用したらどうなるかを仕事の外で考えてみたり、外部からのインプットを自分の領域にもってくるとどのように応用できるかと考えたりすることが良くあります。

次に、より重要なのが想像したアイデアを「人に話すのをいとわない」ことです。想像することは楽しいですが、人に話してみると現実を突きつけられます。それでも一回で話すことを辞めずに何度も話をしてフィードバックしてもらうことでアイデアをブラッシュアップすることができるんです。

——最後に、加次さんのようになりたい。イノベーションを生み出したい。と考える人はどのようなアクションをとればいいと思いますか?

月並みですがまずは与えられた仕事をちゃんとやることです。次に、そこで終わるのではなく与えられた仕事の背景を深ぼること。そうすると現在地と過去が分かります。その領域の歴史が学べるということです。

私は、良いアウトプットを出すために目の前のことに注力することはもちろん、仕事の中の顧客関係値や技術、商流などの要素から「なんでその仕事を行うのか?」を深ぼることを意識してきました。そうすることで、いざ機会が巡ってきたときにそれを掴むための提案ができるはずです。


さいごに

オンラインでのインタビュー風景<加次 淳一郎さん(右上)&フューチャーアーキテクト株式会社 高瀬陸(左下)&同社 髙部雄史さん(右下)>

イノベーションに必要なことは想像力とコミュニケーション。私は何かアイデアを思いついても、手痛い批判をもらうんじゃないか。バカにされるんじゃないかとアウトプットを躊躇してしまうことがあるので、耳が痛いお言葉でした。みなさまはいかがでしたでしょうか?

また、エンジニアとしての信用が顧客との良い関係につながるというお話も印象的でした。私も日々愚直に技術力を磨いていかなければならないなと身が引き締まります。

以上、JASPER note編集部の高瀬がお届けしました。

インタビュー企画にご興味のある方は、ぜひ上記の問い合わせフォームよりお問合せください。



本記事執筆|フューチャーアーキテクト株式会社 高瀬陸