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「ITの通訳」という職業。JAPEXのDXを支える辺見陽平さんへインタビュー

JASPER note編集部の高瀬です。インタビュー企画「Bricolageの先駆者たち。」今回は石油資源開発株式会社(JAPEX)の辺見  陽平(へんみ ようへい)さんに話を伺いました。

JAPEXの経営企画部基幹システムグループ長である辺見さんはインフラエンジニアとして、会社の情報システムの企画・開発・運用・保守を支えています。

今回は、JAPEXのDXを支える第一人者として、社内からの信頼を集める辺見さんの経験や思いを掘り起こしました。

情シス(情報システム部)のみなさんを始めとして、普段DXをIT技術で支えている方々、DXに興味があるみなさまにぜひ読んでいただきたい記事となっています!

石油資源開発株式会社 辺見陽平さんのプロフィール

ITとITを知らない人とを繋ぐ「通訳」

——最初に、現在の業務内容を教えてください。

会社全体を支える経理や販売管理、資材管理システムの運用やメンテナンスを行っています。それ以外にもあちこちの障害や、社用携帯の紛失、Excelを使った業務のお困りごとへの対応などもしていて、IT系のよしなしごとをなんでもしているという感じですね。

昼間に止まったIT系のサービスを、夜のうちに直す仕事と言い換えると分かりやすいかもしれません。

——学生の頃はどんなことをしていましたか?

もともと高校生の頃からコンピューターは得意でした。そのころは周りにコンピューターを使っている人はほとんどおらず、インターネットもテレホーダイ¹を使って深夜に行うのが一般的な時代でした。私は自分のお小遣いでケーブルテレビの通信を使ってインターネットの常時接続を提供してくれるサービスを購入して利用していました。

趣味でwebページをつくったり、webページに関するコミュニティをつくったりしていて、webのことで困っている人が入れば助けてあげる御用聞き的なことをやっていました。

大学時代も「パソコンに詳しい人」という立ち位置で良く友人からの相談に乗っていましたね。パソコンのことを何も知らない人に対して、「メモリは机の広さで、ストレージは机の引き出しだよ」など技術的な専門用語を例え話で説明していました。

これが今の仕事に結びつく「原体験」ですね。ITとITを知らない人とを繋ぐ「通訳」になろうと思っていました。

堤さんのお話で「Dは知らないがXはできる」という言葉²がありましたが、私は堤さんのような人とDを繋ぐ立ち位置だと思っています。これは私の仕事に対する基本的なコンセプトです。

※¹:テレホーダイ(wikipedia) :2024年現在ではインターネットの利用は、光回線などの容量無制限・常時接続が標準となっているが、90年代は従量課金の電話回線を使うことが主流だった。1995年に始まった定額通話の「テレホーダイ」を利用することで23時から8時までの深夜帯のみ、格安の定額料金で自由にインターネットに接続することができた。

※²参考記事:「Dは知らないがXはできる」DXに心臓を捧げるJAPEXのリーダーの思い。堤建城さんインタビュー


細かい徳を先に積んでおく

——これまでの仕事で今に繋がる失敗談などのエピソードはありますか?

新人のころに何も出来ずに無力感を感じたという失敗があります。

JAPEXへ2020年に転職するまでは、インフラエンジニアとしてアプリケーションを動かす基盤部分(インフラ)に携わる仕事をしていました。

前職で新卒の時にした失敗が印象に残っています。入社半年で任された携帯電話関連の保守メンテナンスの仕事でした。携帯電話のサービスに関するシステム障害があると、電話が来て対応するという仕事です。

その業務を始めて1ヶ月目に、とあることがきっかけで担当しているサービスの利用者が急増してしまったんです。サーバーにアクセスが集中してしまいサーバーダウン³が頻発しました。

問題を解決するために当時の職場にたくさんの業者が来たのですが、私は何も分からずに道案内と入退場を管理するだけで、後はぼーっと突っ立っているしかなかったんです。その時は問題の原因も分からず、何の力にもなれず失敗してしまったと思いました。

——失敗からどんなことを学びましたか?

そこから準備することの重要性を学びました。準備不足・覚悟不足でことに望むと、何も分からないままになってしまう。起こることのレベルに合わせて事前に準備しておくことで、ここから先はどうしようも無いという判断も含めて物事に対処できるということが分かったんです。

実はその当時の職場環境はかなり大変で、24時間365日の保守メンテナンスを私含め2名の人員で対応する必要がありました。ですが、準備が出来ていればその場で決断や対応を決められるということがその失敗を経て分かっていたので、様々な工夫で乗り切りました。

例えば手順書の作成です。システム障害対応をする中で、同じ問題が繰り返し起こることに気が付いたので、障害の切り分け手順書をつくることで同じ問題であれば私に問い合わせをせずに現場で解決できるようにしました。

そのような工夫をしているうちに、だんだんと周りから信頼を獲得して、何かお願いをしたときに「辺見さんが言うならそれでいいです」と狙いと方法を説明するだけで引き受けてくれるほどになりました。

信頼関係を築いておくというのも準備のひとつだと思います。ITに詳しくない人と仕事をする時に、信頼があるかないかでやりやすさが全然違います。信頼関係があれば、詳しい説明や説得をせずとも「私がやっておくので大丈夫です」で、物事を解決できます。

細かい徳を先に積んでおいて、それを切り崩しながら物事をハンドリングするというのは今の仕事にも繋がっています。善行は大事ということですね。

※³サーバーダウン(コトバンク):高速道路に例えると、ゴールデンウイークやお盆などで同じ方向に向かう人が増えて渋滞し、自動車が動けなくなってしまっている状態

結局、使うのは人

——現在、JAPEXではDXを進めていますよね。取り組む上で大切にしていることはなんですか?

「通訳でありたい」が大切にしている価値観ですね。意外と出来上がるシステムには興味が無くて、できたものがどう使われているかに興味があります。

このタイミングで止まっていたらまずいよね。とか、閑散期の今は復旧よりも原因追及に時間を使えるな。などコンピューターのあるべき状態よりも、システムを使っている人があるべき状態を気にしています。人とITの間に立って通訳をするということは一貫したコンセプトです。情シスのチームメンバーとシステムの使用者である社員との間に立って通訳として仲介することもあります。

——JAPEXのDXはどのような状況でしょうか?

JAPEXはIT的に一番楽しい時期です。何も出来ていない状態から構想が出来上がってきてそれをJAPEXのあるべき姿に合わせて落とし込んでいます。ここから5年は劇的に変化していくのではないでしょうか。今DXが何もできていないからなんでもできる、明るい未来が見えています。

世の中的にもDXに関する事例やベストプラクティスはたくさん見えてきていて、それをJAPEXに相応しい形でつくっていくという状況で、すごく活動しやすいし、良いタイミングでITに取り組めていると感じています

——JAPEXでは経営企画部門と情報システム部門が一体化しましたよね?どんな影響がありましたか?

経営的な観点で一貫した意思決定ができるようになったと感じています。それぞれの部門が分離していたときは意思決定者が変わる度にITのあるべき姿も変わっていたのですが、それが改善しました。

経営とITの一体化は私も推していたのですが、セキュリティを高めるという観点でも狙い通りの良い影響があったと思っています。

——最後に情報システム部門で働く方々に対して、アドバイスはありますか?

ITは環境変化が激しく、自社でハードウェアとソフトウェアを管理し、自前のシステムを構築するオンプレミスで仕事をしていたインフラエンジニアも、インターネット上のサービスを利用するクラウドに対応していかなければいけません。

ただ、ベテランが取り残されてしまうかというとそうではなく、これまでクラウドを使ったことがないインフラエンジニアもオンプレミスの経験が活かせる場面はたくさんあると感じています。世の中にベストプラクティスはたくさんありますが、そこから外れてもインフラ基盤を触っていた経験があれば対応できることが多いです。

その時、その時に必要とされる技術をインプットし続け、さらに人の役に立つという覚悟があればITの通訳という仕事は無くならないと思います。使う技術が変わっても、結局使うのは人なので人に対してどのようにアプローチするかが情シスの仕事で重要なことではないでしょうか

さいごに

インタビュー風景<フューチャーアーキテクト高瀬陸(左)&JAPEX辺見陽平さん(右)>

いかがでしたでしょうか。私は辺見さんとお仕事をしていて、会議中にどっしりと笑顔で構えてどんな話題にも動じず、難しい専門用語が話に出るとユーモアを交えた例えで分かりやすく解説する姿が印象的でした。

今回のインタビューを通して、辺見さんが準備を大切にしていることや、「ITの通訳」というコンセプトを持っていることを知り、その背景を知ることが出来たと思います。

技術的な専門知識をバックボーンに持ちながらも、大事にしているのはシステムより人という価値観が、辺見さんが社内外から信頼されている理由のひとつだと納得できました。

これからのJAPEXがどのようにDXを進めていくかとても楽しみになりましたね!

以上、JASPER note編集部高瀬がお届けしました。

インタビュー企画にご興味のある方は、ぜひ以下の問い合わせフォームよりお問合せください。

本記事執筆|フューチャーアーキテクト株式会社 高瀬陸