殺人カメラ (1952) 伊
ロベルト・ロッセリーニ監督
古い古い映画です。
ジャンルは サスペンス・ファンタジーかな?
こんな面白い映画を創ったのは
『無防備都市』や『戦火のかなた』などを撮った
ネオレアリズムの巨匠 ロベルト・ロッセリーニ監督です。
海の静かな おだやかな日。
空と雲と大地の 風景の画面に
神様の大きな手が現れて
張りボテの 山や、教会や、役場や、家々・・・
それから
おせっかい、見栄っ張り、美人に不美人
悪党、怠け者、利口、馬鹿、弱虫、横暴・・
こういった人物たちを 登場させたところで
お話がはじまります。
〇
主人公は 気のいい写真屋
チェレスティーノ (ジェンナロ・ピサノ)
ここは イタリア南部の小さな漁村。
貧しい村人たちは
村長や、警官や、網元や、高利貸しといった
金持ちや特権階級の人間たちに 虐げられていた。
今日は大聖堂のお祭り。
チェレスティーノは 祭りの様子を写そうと
早くから来て いい場所を陣取ったが
後から来た 威張りやの警察署長に
無理矢理、どかされてしまった。
その夜。
チェレスティーノの店に みすぼらしい老人が来て
しばらく休ませてほしいと言う。
気のいいチェレスティーノは 老人を招き入れ
話をするうちに
村人たちが 強欲な悪人たちに
酷い目に合わされていると訴えた。
すると老人は
「よし、ではその連中を お仕置きしてやろう」と
チェレスティーノに
不思議な力を持つ カメラを与えて去った。
それは、以前に撮った写真を
もう一度、このカメラで撮りなおすと
その被写体となった人間は 死ぬというものだった。
そこでまず、チェレスティーノは
祭りで自分を追い払った 警察署長の写真を取り出して
壁に貼ると カメラで撮影してみた。
パシャッ!
するとその直後、表が騒がしくなった。
外に出てみると
今、村人を集めて 演説していた警察署長が
突然、死んだという。
写真を撮られて死んだ者は
元の写真と 同じポーズで死ぬ。
警察署長は 敬礼した姿で死んでいた。
チェレスティーノは驚きながらも
まだ信じられぬ気持ちで
試しに翌日の朝
店の前に繋がれたロバを 写真に撮り
その写真を ふたたび写真に撮った。
するとやっぱり、ロバは立ったまま死んだ。
チェレスティーノは 村の腐敗した社会を失くそうと
悪徳高利貸しや、強欲な権力者たちの 写真を次々と撮った。
連中はみんな 写真と同じポーズで死んでいった。
チェレスティーノの店は
父親の代からやっている 村で一軒だけの写真屋なので
村中の人々の写真が 保管されているのだった。
しかし、悪人は
始末しても 始末しても まだまだいた。
貧しい善人だと思っていたのに
陰で悪いことを していた者もいた。
とうとう、チェレスティーノは自暴自棄になり
村中の人間の写真を ベタベタと壁に貼った
そのとき
チェレスティーノと仲のいい お医者の先生がやって来た。
そこでチェレスティーノは 彼に何もかも打ち明けた。
「やめなさい! そんなことをしたら
おまえこそ犯罪者じゃないか!」
止められてカッと来た チェレスティーノは
思わずそこにあった金槌で、ガツン!
お医者の先生は 死んだ。
嗚呼、どうしょう、
殺人を犯してしまったチェレスティーノは
遂に自分の写真も・・・
と、このとき あの不思議な老人が ふたたび現れた。
「あっ、お前のせいで 俺は殺人者になってしまったぞ!」
「ま、待ってくれ、実はワシは悪魔なのじゃ」
「悪魔だって?」
「そうじゃ、下っ端の悪魔じゃ、
それでこのカメラの発明で 有名になれると思ったのだが・・」
後悔する悪魔を見て チェレスティーノは
彼に祈りの方法を教えた
そして彼が十字を切ると
悪魔の老人は 普通の老人に戻り
時間はするすると 巻き戻って
すべての死んだ人間たちは生き返った。
ラストシーン
ふたたび、空から神様の大きな手が現れて
山も、教会も、家も、人々も・・・
みんな綺麗に片づけて終わります。
おしまい