手錠のままの脱獄 (1958) 米
スタンリー・クレーマー監督
白人×黒人の 人種差別の壁を乗り越え
次第に友情を育んでいくというストーリー。
主演はシドニー・ポワチエとトニー・カーチス。
監督は『渚にて』『ニュールンベルグ裁判』などの
スタンリー・クレーマー監督
〇
豪雨の中、ハイウェイを走っていた囚人護送車が
ハンドルを切りそこねて 崖から転落。
この どさくさに
10人ほど乗せられていた囚人のうち
白人で移民のジャクソン (トニー・カーチス)と
黒人のカレン (シドニー・ポワチエ)が脱走。
二人は互いに 人種的偏見で憎み合っているが
しかしその手は
長さ50センチの手錠で繋がれていた。
早速、武装警官隊と民間人の集団が協力
数匹の警察犬を動員し 雨中の山狩りがはじまるが
警察官たちは
「どうして白人と黒人を繋いだんだろう」
「ジョークさ」
警察署長も
「べつに追跡には及ばないよ、間もなく殺し合うだろう」
さて、ジャクソンとカレンは 憎み合いながらも
助かるためには 協力し合わなければならない。
増水した川を渡り 採掘杭に隠れ
食用ガエルで 空腹を満たしながら
鉄道線路を目指し 必死で逃げる。
そんな命がけの道中の合い間にも
ちょっとしたきっかけで たびたび大喧嘩になり
繋がれたままでの殴り合い
そして 石ころなどで手錠を壊そうと 無駄にガンガンやる。
しかしやがて
そんな二人も 夜の闇に身を潜めながら
ぽつぽつとお互いの 身の上話などするようになる。
翌日、二人はある田舎町にたどり着き
人々が寝静まるのを待ち
食料を盗むため 屋根から店舗に忍び込むが
足を滑らせ転落。
その大きな物音で 町中の人を起こしてしまい
二人は拘束され リンチされそうになるが
一人の男が体を張って止めに入り
翌朝、二人を逃がしてくれた。
男の手首には 手錠の跡があった。
窮地を救われた二人だったが
ふとしたことで またまた言い争いになり
殴り合っているところに 突然、ライフル銃を突きつけられる。
ライフルを向けたのは 子供だった。
子供はビリーという名で
近くの家で母親と二人暮らしだと言う。
ジャクソンは ビリーをなだめて 家に案内させるが
この母親というのが たいした女で
はじめからジャクソンに 色目を使い
黒人のカレンには 食事も出さない。
二人はここで工具を借り 手錠の破壊に成功。
やっと離れ離れになれた。
すると女は こっそりジャクソンに
ガレージに車があるから 私を連れて逃げてと誘い
ジャクソンもその気になる。
女は半年前に 夫に棄てられていた。
子供は近くの叔父の家に 置いて行くと言う。
そしてカレンには
沼を横切って行く近道を教え お弁当まで作ってやる。
冷たい目で あばよ、と出て行った
カレンの後姿を 見送りながら
「捕まらなければいいが・・」と 心配するジャクソンに
「捕まらないわよ、絶対に!
あの沼は底無し沼だから 生きては出られないのよ」
ジャクソンは怒りで 女を突き飛ばし
それを見ていたビリーに肩を撃たれるが
カレンを追いかける。
必死で走り カレンに追いついたジャクソン。
しかし、肩の傷は深かった。
「行くぞ、頑張れ」
「俺はもう駄目だ、ここに置いて行け」
するとカレンが言う。
「俺たちは繋がっている」
よろよろと進む二人。
すると、列車の音が・・
なんとか追いついた カレンが貨物列車に飛び乗り
必死に手を差し出すが
ジャクソンには もう飛び乗る余力がない。
それを悟ったカレンは 自分も貨車から飛び降りた。
ラストカットは
ジャクソンを抱きかかえ
声高らかに 黒人霊歌を歌うカレン。
近くに猟犬の鳴き声が聞こえる
追手が迫っている。
〇
映画は 二人の葛藤だけでなく
なかなか捕らえることが出来ずに
焦る警官隊と 協力する民間人との間の軋轢も
細かく描かれていて 物語に厚みを見せています。
また シドニー・ポワチエは
それまでのハリウッドでは
ほとんど端役しか与えられなかった黒人俳優の中で
はじめて主要な役を勝ち取った俳優でした。
そして 東映の石井輝夫監督は
かねてより温めていた 本作『手錠のままの脱獄』を下敷きにして
高倉健主演『網走番外地』の脚本を書いたそうです。
するとカレンも飛び降りた。
ここに自分を置いて行けと 虫の息で言うジャクソンに
カレンが言います。
「ふたりは継がれている」
ふたりの葛藤だけでなく
なかなか捕らえることが出来ずに焦る
追跡する警官隊と 協力する民間人との間の軋轢も
細かく描かれていて 物語に厚みを見せています。
作品は1959年のアカデミー賞に ノミネートされましたが
ミュージカル『恋の手ほどき』が 獲得しました。