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陽のあたる場所 (1051) 米

ジョージ・スティーブンス監督

アメリカの作家 セオドア・ドライサーの小説
『アメリカの悲劇』の映画化。

モノクロの美しさ。
「銀幕の世界」という言葉があった頃の
ラブ・ストーリーです。
 
エリザベス・テーラー 撮影に入った時はまだ17歳。
類いまれな美貌と 揺るぎない自信は
既に大女優の片鱗が 見えていたと言われています。
 
そしてモンゴメリー・クリフトも
正真正銘の美男子。
その翳りのある深い瞳には 惹きつけられます。
 
今はこういう雰囲気の 俳優さんはいませんね。

母と子二人きりの 貧しい暮らしを続けながら
田舎町のホテルのボーイをしていた
ジョージ・イーストマン(モンゴメリー・クリフト)は
 
あるとき偶然、
伯父のチャールズ・イーストマンに会い
彼が経営する 大手の水着製造工場の職を得た。
 
数日後、伯父の屋敷に 挨拶に訪れたジョージは
そこで 自分にとって従妹にあたる
アンジェラ(エリザベス・テーラー)を見かけ
その美しさに一瞬で心を奪われる。
 
しかし 社交界の華であるアンジェラは
ジョージにとっては 手の届かない存在であり
 
彼女は ジョージには気づきもせず
風のように去って行った。
 
都会に出て来たばかりのジョージは
淋しさから 
同じ職場のアリス(シェリー・ウインタース)と付き合うが
 
会社のルールで 社員同士の交際は許されず
二人はいつも 人目を忍んでデートした。

雨の夜、アリスの貧しいアパートで聴く
窓ぎわの小さなラジオが 印象的。 
 
やがてジョージは 伯父から昇進の機会を与えられ
屋敷でのパーティーに招かれる。
 
周囲は華やかな 上流階級の人々であふれ
場違いで 居場所のないジョージは
人気のない ビリヤード・ルームに逃げたが
図らずも そこでアンジェラと出逢った。
 
はじめて言葉を交わし ダンスをし
夢のような ひとときを味わうジョージ。

「はじめて逢ったときから好きだった。
いや、もしかしたら 逢う前から好きだったんだ」
 
やがて ジョージの純真さに アンジェラも惹かれ
激しく愛し合うようになる二人。
 
しかしそんなとき、アリスの妊娠が判明。
 
会社への発覚を恐れ 堕胎手術の為の医者を探し
夜の中を歩きまわるが 見つからない。
 
なんという 違いだろう
あの、眩いほどの 陽のあたる世界と
自分たちのいる じめじめとした日影の世界・・
 
ジョージは 仕事の話で伯父に会うと
アリスを騙し アンジェラの別荘に行く。

別荘近くの「アビの湖」で愉しむ
アンジェラとジョージ。
アビとは この土地に多くいる 鳥の名前だ。

アンジェラが言う。
「この湖はふたつに分かれていて
 こちら側の美しい湖を 私の湖と決めているの」

同じ湖でも向こう側は薄暗く 古いロッジがあって
数年前には水死事件もあった・・・

ふたりの住む世界を 象徴しているようなシーン。 

その夜、ジョージを怪しんだアリスが
別荘近くまでやって来て 電話でジョージを呼び出す。
 
結婚を迫り 承諾しなければ
二人の仲を公にすると興奮する アリスをなだめて
ボートに誘うジョージ。
 
今は
アンジェラの両親も 自分を認めてくれている。
ここには 自分の望むものすべて
愛する女性と 野心と 輝かしい未来があるのだ。
 
アリスの溺死を 企てるジョージ。
 
しかし このとき
夕闇の空を見上げて アリスが言う。
「今、ふたりが幸せになれるよう 流れ星に祈ったの」
 
このアリスの あまりにもひたむきな愛情に
一瞬、殺意を失った ジョージだったが
 
皮肉なことに このとき不意に
ジョージの底意を感じたアリスは
恐怖のあまり ボートの上で立ちあがり ボートは転覆。

溺れるアリスを放って 
ジョージは岸に泳ぎつき 逃走したが
翌日、逮捕され 裁判では死刑を宣告された。
  
「自分はあのとき 殺すつもりはなかった」
と訴えるジョージに 神父は言う。
 
「君はボートが転覆した瞬間、
アリスではなく 他の女性を想ったのではないですか
君はそのとき 心で殺人を犯したのだ」


 

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