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マーティー (1955) 米

デルバート・マン監督

1954年当時のアメリカ映画界は
テレビの大攻勢に躍起となり
映画は カラー、大型化、豪華キャストで対抗。

そういう風潮の中で この『マーティー』は
テレビドラマの映画化であり、黒白スタンダード
製作費も当時平均の四分の一 という低コストで創られた。

それが・・・
誰も夢にも想像していなかった!

国内での大ヒットにつづき

アカデミー作品賞、監督賞、脚色賞受賞
主演のアーネスト・ボーグナインは
『エデンの東』のジェームス・ディーンほか
フランク・シナトラ、スペンサー・トレイシーを抑えて
主演男優賞を受賞。

カンヌ映画祭では
最高賞のパルム・ドール賞受賞。

アカデミー作品賞と パルム・ドール賞を
同時に受賞したのは 今もって
『失われた週末』と この『マーティー』
近年では『パラサイト 半地下の家族』の三作だけ。

そういう映画なのよ。

          〇

ブロンクスの肉屋で 働いている
マーティー(アーネスト・ボーグナイン)は
34歳になるが 結婚どころかガールフレンドもいない。

心は純粋で優しいのに
太っている上に ルックスも冴えないから 
女性に対して まったく自信がない。

今日も買い物客のおばさんたちから
さんざん言われ、顔で笑って心で傷ついた。

「弟さんも妹さんも とっくに結婚して
 子供もいるんでしょ。
 お兄さんのくせに 情けないわね」

「早くお母さんを 安心させてあげなさいよ」

仕事が終わって いつもの店に行くと
同じく独身で
モテない仲間のアンジー (ジョー・マンテル)がいた。

「今夜、どうする? 土曜だぜ」
「またボーリングじゃなあ・・」

結局、いい案が出ずに アンジーと別れて家に帰ると
今度はオカン (エスター・ミンチオッティ)までがうるさい。

家にこもってちゃ、女性と知り合うチャンスもない。
スーツに着替えて どっかに行けと言う。

このお母さんも面白い。
「"スターダスト"なら マブいのがいっぱいいるそうよ」

オカンに やいの、やいの、言われて
マーティーは アンジーを誘って "スターダスト"に行った。

アンジーは持ち前の気安さで
相手を見つけて 踊りに行ったが

しばらくぼんやり 壁の花でいたマーティーは
やがて 誰もいないテーブルに
ぽつんと 一人でいる女性を見つける。

なんとなく見ていると
女性は突然、立ち上がって バルコニーに走り出て行った。

心配になり、後を追って様子を見に行くと
彼女はたまらず
マーティーの胸にすがって泣き出した。

話を聞くと さっき紹介されたパートナーに
気に入られず 置き去りにされたのだという。

彼女の名はクララ (ベッッイ・ブレア)
29歳で 高校で化学を教える教師だった。

ふたりはダンスホールを出て
近くのカフェに入った。

すると話をしているうちに ふたりは意気投合し
さっきまでの つまらないことはどうでもよくなった。
楽しくて楽しくて
笑いだしたら 止まらなくなった。

異性を前にして なんの気取りもなく
こんなにあっけらかんと お喋りしたのは
お互いにはじめてだった。

まだ、話したりないね。
マーティーは家にクララを誘い
お互いの夢や、あれこれを語り合っていると

そこへ 留守にしていたオカンが帰って来て
マーティーが女性を連れて来たことに びっくりする。

明日、デートの時間の電話をするよと
約束したマーティーは
初めて彼女が出来て 舞い上がる。

しかしなんと意外にも
オカンは気に入らない素振り。
めちゃくちゃを言う。

「大学出なんて 商売女と紙一重よ」
「彼女、どう見ても35、6じゃないの」

そして翌日 いつもの店を覗くと
「ゆうべはイモを掴んだんだって」
「あれから、どうしたんだい」

昨夜マーティーとクララを 見かけたという仲間たちは
不美人なクララをけなし ひやかし、笑いものにする。

ゆうべの 弾んだ気持ちが
穴のあいた風船みたいに みるみる しぼんで来た。

実はマーティーも クララが美人じゃないことに
密かに不満を持っていたのだ。

そんな自分の
卑しい心を恥ずかしいと思いながらも
周囲の言葉を気にし、悩み
マーティーは約束の電話を すっぽかしてしまうが・・・

だけど、見てみろよ、周りの連中は 日曜の今夜だって
相変わらず、あぶれているじゃないか。

「どこへ行こうか」
「どうする、カードか映画か・・・」

そんな連中の姿を見ていて
マーティーの心は決まる。

みんながどんなに 彼女をけなしたって
俺たちはゆうべ、あんなに楽しかったんだ!
きっと、今夜も楽しいに決まってる。

「彼女といれば、きっと幸せになれる!」

マーティーは仲間を振り切って 電話ボックスへ!

          〇
ここに オカンとシニア友達による 嫁の悪口や
マーティーの兄妹たちの お姑問題などが絡んで
この芸達者な俳優さんたちが 面白い面白い。

『マーティー』って、こういう映画なんです。
なんてこと、ないじゃんって?

勿論、これほどの大ヒットは
当時の 時代の風潮でもあったでしょうし
今の若い人たちが観ても ちっとも面白くないかもしれない。

でもね、映画を観終わったとき
思いがけなく、不思議な感動を覚えるの。

当時アメリカでは
ジジ様・ババ様から ばぶばぶ赤ちゃんまで
知らない人間はいないと言われたほど
国民的な大ヒットだったそうですよ。









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