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今は幸せ? ああ、たぶん・・。草原輝き (1961) 米

エリア・カザン監督

戯曲部門で ピューリッツア賞を受賞し
映画化もされた『ピクニック』や
マリリン・モンロー主演『バス停留所』などの
作家ウイリアム・インジの オリジナル・ストーリー。

インジさんは
牧師役でこの映画に出演されています。 

この映画を観た頃は
ジャスミン(←私よ) も高校生でしたが
エリア・カザン監督の青春映画でも
『エデンの東』より この作品の方が
色濃く印象に残っていて好きです。

青春の みずみずしい心の揺れ動きを
見事に描いた秀作だと思います。

タイトルにもなっている
ワーズワースの詩「草原の輝き」は
1992年 ロバート・レッドフォード監督
ブラット・ビット主演の
『リバー・ランス・スルー・イット』にも登場します。

こちらも 何度も鑑賞している 素晴らしい作品。

         〇

1928年。 カンザスに住む
高校三年のバッド(ウォーレン・ベイティ)と
ディーニー(ナタリー・ウッド)は
お互いに愛し合い 充実した学生生活を送っていたが

ディーニーは母親の
ふしだらな女になってはいけない、と言う
厳しく保守的な考えに縛られていて
バッドにすべてを許すことが出来ない。

一方、石油業で成金のバッドの父親は
経済的な豊かさこそが 人生での成功者であると信じ
息子がフットボールの選手であることが自慢で
この後は父親の意向で
バッドは 名門イェール大学に進学することが決まっている。

しかしバッドには
この父親の大きな期待が 心の負担になっており
また、かたくななディーニーの態度に
イライラした 荒れた日々が続くようになっていた。

そんなある日 バッドは
奔放なクラスメイトのファニタに誘惑され
肉体関係を持ってしまい
この出来事は あっという間に学校中に知れ渡り
ディーニーは 好奇と同情の目にさらされる。

「寝取られたのね」

傷つき 次第に心が壊れていくディーニー。

ある日、ディーニーは授業中 教師に指名され
ワーズワースの詩「草原の輝き」を
朗読させられる。

クラスメイト達の好奇な表情
前の席から振り仰ぐ ファニタの視線。

詩の意味を尋ねられたディーニーは
溢れ出る自分の感情を抑えきれずに
教室を飛び出し 近くの川に身を投げた。

追って来たバッドに
からくも助けられたディーニーだったが
精神を大きく病んで入院
そのまま 学校に戻ることはなかった。

数か月経ち、父の希望通り
イェール大学に入学したバッドだったが
勉強にはいっこうに身が入らず 酒に溺れ
退学寸前にまで追い込まれ

ふと知り合った アンジェリーナという
安レストランの イタリア娘と
行き当たりばったりのように 結婚してしまう。

その頃、ディーニーは
病院で知り合ったジョニーと親しくなり 求婚される。

1929年の10月 世界大恐慌がやって来た。
バッドの父の会社も 壊滅的な打撃を受け
全財産を失った彼は
ホテルの窓から身を投げ 自殺をした。

ディーニーは 社会復帰の日を迎えた。
担当の医師との最後の面談に
ジョニーとの結婚の意志を伝えると
医師は もう一度バッドに会って
自分の気持ちを確かめるよう助言される。

退院したディーニーは
現在は 田舎で牧場を営んでいる バッドを訪ねた。

バッドはアンジェリーナと 赤ん坊と三人で
つつましく暮らしていた。

「幸せ?」
「ああ、考えたことなかったけど・・・たぶん」

今は 穏やかに向き合い 見つめ合うふたり。
お互いの近況を短く話せば
もう他に 話さなければならないことは 何もない。

静かな再会、そして別れ
ふたりの青春は 終わったのだ。

帰りの車の中に
「草原の輝き」の ナレーションが流れる。
あの日、朗読をした詩、あの辛かった教室・・・

しかし今は
新たな道を歩みだそうとしている
ディーニーの顔こそが 強く美しく輝いていた。

「草原の輝き」 ウィリアム・ワーズワース

  草原の輝けるとき 花美しく咲きしとき
  再び そは還らずとも 嘆くなかれ
  その奥に秘めたる力 見出すべし

「意訳」
誰も取り戻せはしない
草原が輝いていた あの頃を
花が満開のあの頃を
でも嘆いたりしない
それより強さを見つけよう
後に残ったものの中にある力強さを
     
(ことばの広場)より引用

       




       

ナタリー・ウッドさんは このとき23歳

この同じ年に『ウエストサイド物語』に出演


5歳から子役として 映画に出ていましたが

このふたつの作品で 

スターの座を確たるものにしました


しかし この20年後

撮影中のヨットから行方不明になり

事故死、他殺説が流れましたが

真相は謎のままとなりました 


       

ウォーレン・ベイテイさんは

この作品がデビュー作

女優シャーリー・マクレーンの弟さんですね


そして、この6年後

アメリカン・ニュー・シネマの 先駆的作品であり

世界的に大ヒットした 『俺たちに明日はない』で 

俳優として、プロデューサーとして大成功しました


当時、ワーナー・ブラザースは

『俺たちに・・』を 

B級作品としてしか見ていなかったので


ベイテイさんには 全利益の40%を支払うという

前代未聞の契約だったため ベイテイさんは 

これで超ビックな 一大財産を築いたのでした


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