如果多張船飛 會唔會同我一齊走呀?
云わずと知れた王家衛「花樣年華 In The Mood For Love」4Kリマスター版上映とのことで劇場へ。
一体何度観たかというくらい観ているが、劇場スクリーンで観るのは実は日本での上映以来である。
改めて作品への愛を再確認だ。一番好きな映画は何かと訊ねられたら即刻確実にこれを挙げる。
60年代の香港、シンガポール、そしてカンボジア。舞台も内容も、兎に角湿度の高い作品だ。
ひとつもラブシーンは描かれないのに、観るひとの脳にじっとりとした各々の関係を見事に刻みつけてくる。
もう散々語り尽くされているので、マギー扮する蘇麗珍の美しい長衫やストーリーについてはここで触れない。
やはり冒頭の台詞が作品の総代表。
如果多張船飛,會唔會同我一齊走呀?
(もしもう一枚切符があったら、一緒に行かない?)
これ、しかもどちらも結局相手に言わなかったのだ。言いたくて言えなくて、終わって行く関係。
人間、言いたくて言えない或いは言わずに心に仕舞い込み、結局発展せずに過ぎていく関係が人生のうちに一体どれだけあるのだろう。
などと考えながらスクリーンの、本心はお互い言わない割に起きていない出来事を想定して二人で演技をした末、耐えられず周慕雲の肩に顔を埋めて泣く蘇麗珍を凝視していたらふと涙が出て来た。日頃エイガ観て泣く事ってないし、しかも過去にこの作品観て泣いた記憶もないので自分でも驚いたよ。