【Bookレビュー#13】入門 考える技術・書く技術 日本人のロジカルシンキング実践法
第1章 読み手の関心・疑問に向かって書く
OPQ分析
バーバラ・ミント女史によるSCQ分析の簡易版。
①O:Objective(望ましい状況)
読み手考えている達成すべき目標や改善後の姿
②P:Problem(問題、すなわち現状とObjectiveとのギャップ)
困った状況のみならず、もっと高い目標を掲げる場合も含む
③Q:Question(読み手の疑問)
読み手が解決に向けて自然に抱く疑問
④A:Answer(答え/文書の主メッセージ)
Qに対する答え
レール
同じものさしで現状と望ましい状況を比べることが必要。トピックが一貫していることが重要
OPQ分析のコツ
①すべての読み手の視点で表現する
②ひかくのレール(トピック)を外さない
③文書の主メッセージはQに直接答える
わかりにくい文書の存在は仕事上のボトルネックになる
感情的なメールや失礼なメールを受け取ったら、自分もこんなメールを書いているのでは・・・という警告として受け止める
読み手を主語にして「書く目的」を考える
上司に書くのであれば、上司が置かれている状況や、考えを理解するようにする。顧客に提案書を書く場合も、常日頃から顧客とのコミュニケーションを密にし、顧客の関心や疑問を意識する。机の上で唸っていても何も始まらない。
Ex:
書く目的→読み手(上司)が、喜んでこの企画内容に合意する
→読み手は、この企画書をじっくりと読む時間があるだろうか?
→読み手は、今、何に関心があるだろうか?
→読み手は、この企画書の内容をどこまで理解できるだろうか?
→読み手は、この企画書にどのような反応を示すだろうか?
第2章 考えを形にする
文章のメッセージ構造はそのまま文書にする
一つの段落には一つの段落メッセージ
一つの章には一つの章メッセージ
一つの文書には一つの文書メッセージ
グループ化と要約メッセージ
考えをまとめる作業には2種類の作業がある。
①グループ化し、要約メッセージを探す
②メッセージに従って、グループを作る
①、②の作業を繰り返す
メッセージが一般論にならないようにする
包括的・抽象的な言葉を選んでしまいがち
→メッセージ群に共通する「特定の意味」を拾い出す
Ex: 東京、ローマ、オタワ、キャンベラの要約メッセージは?
×大都市 ○首都
要約メッセージを文章にするときの「4つの鉄則」
①名詞表現、体言止めは使用禁止とする
単なる見出しとメッセージの違いに注意する
②「あいまい言葉」は使用禁止とする
「見直し」「再構築」「問題」「適切な」
③メッセージはただ1つの文章で表現する
メッセージが2つあるならメッセージが要約されていない
④「しりてが」接続詞は使用禁止とする
メッセージを表現するときは、「一つの主部と一つの述部」で構成される文章表現にする
第3章 ピラミッドを作る
帰納法
前提をいくつか置いた上に結論を導く。
帰納法では「同じ種類の考え」を前提とする。
→①主部が同じ(述部を推測)、②述部が同じ(主部をすいそく)、③意味するものが同じ(同じ事実を示すための根拠を並列するなど)
実際には上司にピラミッド構造をチェックしてもらうことがベストだが、自己チェック方法としては以下のとおり。
①「つなぎ言葉」を下部メッセージ文の冒頭に入れてみる
Ex: 「なぜそう判断するかと言えば」、「なぜならば」、「たとえば」、「具体的には」
②声に出して読み上げ、上下のつじつまを確認する
上部の要約メッセージと、つなぎ言葉を加えた下部のメッセージを順に読み上げ、上下のつじつまが合っているかどうか確認する
③下部メッセージ群のつなぎ言葉を見比べる
下部メッセージのつなぎ言葉が同じものであれば、横の関係も7割がた問題ないといえる。
演繹法
絶対的に正しいと判断される前提から、妥当と思われる結論を導く。
帰納法は結論が推測であり、前提となる下部メッセージがその結論の正しさを支持する。一方、演繹法の場合は、すべての前提(下部メッセージ)が正しければ、結論も絶対的に正しい。推測ではない。
ビジネスの世界では絶対的に正しい前提があまりないため、一般的には帰納法の方がよく使われる。よく使われる演繹法は、「過去や現在の事実」(絶対的に正しい)に「正しい法則」や「妥当な仮定」(一般的に正しい)を適用して将来を予測する場合。
Ex: X事業の損益
(前提1)X事業は、今のコスト構造のままでは、売上100億円が損益分岐点となる
(前提2)X事業は、来季の売上はどう楽観的に見ても95億円止まりと見られる
(結論)ゆえに、X事業は、コスト構造の改革に着手しない限り、来期は大幅な赤字になるだろう
前提1、2ともに正しい分析(ほとんど事実)であるため、結論も正しいといえる
セルフチェックの方法は、前提の後に、「本当に正しいといえるか?」と自らに問いを投げかけてみることである。
ピラミッド作成のコツ
①1つの考えを短く明快に
要約メッセージの4つの鉄則を適用する。
(①名詞表現、体現止めは使用禁止とする、②「あいまい言葉」は使用禁止とする、③メッセージはただ1つの文章で表現する、④「しりてが」接続詞は使用禁止とする)
②縦と横の「二次元」を意識する
縦の関係:結論は必ず上に置く。帰納法であれば「つなぎ言葉」によるチェック、演繹法では「前提文が本当に正しいかどうか」のチェックが役立つ。
横の関係:同じ種類の考えかどうか確認
同じメッセージの繰り返しになっていないか注意
文書のキーラインでは既知事項は書かない。読む気を失いかねない
ロジックのみで押し切るのではなく、イメージを膨らませる工夫をした法がわかりやすくなるケースもある
絶対的なMECEは存在しない。読み手にそのように判断してもらえればOK
ピラミッドづくりはトップダウンですべき。やみくもに調査・分析するのは非効率。仮説アプローチで作業を行う。
Ex: ①主メッセージを仮に決める→②必要な支持メッセージが何かを考え、それらを探す→③調査の結果、仮説に修正がひつようだと判明した場合は、仮説を修正し、②を繰り返す→④②、③を繰り返し、ピラミッドが完成
第4章 文書で表現する
文書で表現するときは主メッセージの位置が異なるケースがある
読み手が異論反論を持つ可能性があるとき、またはあまり会ったことのない社内のお偉い方や社外の顧客など読み手の反応がわからないときは、最後にメッセージを持ってくる必要がある場合がある
目次の付け方
内容を匂わせる目次と、内容を匂わせない目次がある。原則として主メッセージを冒頭に置く場合は前者、最後に置く場合は後者になる。
段落表現
基本原則は3つ。
①メッセージごとに段落をつくる
②段落の違いを明確に表現する
③段落のメッセージ文を段落の冒頭に置く
改行、文頭を一文字引き下げて書き始めることはグローバルスタンダードではなく、読みにくい。段落分けは改行+大きめの行間をとる。
接続詞を正しく使う
ロジカル接続詞は、「しりてが」にあたる、ただ文章をつなぐだけの「and接続詞」ではない。
Ex:
*時間
〜するときに when
〜する前に before
〜した後に after
〜して以来 since
*対照・対比
〜である一方 While, where, whereas
〜であるけれど although, though
*原因・結果
〜であるがゆえに because, since as
〜の結果 so..that, such…that, as a result
〜であるにもかかわらず despite that, in spite of
*目的
〜するためには in order that, so that
*条件
もし〜ならば if, in the event that
もし〜でなければ unless
〜になるという条件で provided that
Ex: この部署は若者がおらず、元気がない→×
この部署は若者がいないために、元気がない→○
この部署は若者がいない結果、元気がない→○
この部署は若者がいないので、元気がない→○
読み手を惹きつける導入部をつくる
OPQ分析を使って導入部を作る。
経営コンサルタントの提案書は4部構成が大原則。「第一章 現状の理解」「第二章 プロジェクトの目的」「第三章 プロジェクト・アプローチ」「第四章 プロジェクト体制」。第一章が導入部の役目。
「結び」で今後のステップを示唆する
「大要約」を活用する方法もある
導入部が長くなる場合、主メッセージはできるだけ文書の早めに登場させたい場合、大要約→背景(導入部)→主メッセージ
(導入部、主メッセージには見出しが必要)
終章 メール劇的向上術
メールが見違える秘策「感謝の言葉にPDF」
感謝の言葉
いきなり本文に入らずに、簡潔に1、2行で感謝の言葉を述べる。理由としては、主メッセージが読み手にとって好ましくない内容の場合、気分を害される可能性がある。また、書き手も追い立てられるように書いているケースも多いため、つい身勝手な内容になってしまうことを防ぐため。
P(主メッセージ部分)
Purpose of Statementのこと。感謝の言葉から1行空け、本文との区切りを明確にする。「しりてが」に注意する。
D(詳細)
主メッセージの理由は判断根拠、内容説明、具体案などのこと。PとDでピラミッド構造を構成する。
F(今後のアクション)
Follow-Throughのこと。結びにあたるもの。
1日1回ピラミッド×4ヶ月
今日書いたメールのうち、なるべき中身のあるものを選び、10分間で簡単なピラミッドを書いてみる。
コツは以下のとおり。
①簡単なピラミッドで継続させる
②OPQを書き留める
③10分以内で終わらせる
付録:ピラミッドの基本パターン
①状況のwhy
状況分析や、問題分析を目的とした報告書で用いられる。状況判断を問う問いに対して、主メッセージで判断を述べ、下部で判断根拠を述べる
②方針のwhy
方針提案書や戦略提案書で用いられる。問題解決の基本方針や戦略の決定/選択を問う疑問に対して、主メッセージで解決方針/提案を述べ、下部で提案の根拠/理由を述べる
③行動のhow
事業計画書/行動計画書で用いられる。問題解決の具体案を問う疑問に対して、主メッセージで解決方針を述べ、下部で具体策を述べる。
④whyとhowの三段論法
問題分析と行動計画を1つのレポートにして提出する場合に用いられる。
📚本を読んで・・・
読み手の立場に立ち、ロジック構造に基づいて文章を構成することが重要。メッセージの粒度を認識し、それらをどのように繋ぐことが適切かを意識する。