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AI(CHATGPT/Dify等)を活用した業務設計・AI開発:本の出版を実例として①
1. 業務設計・AI開発の背景
私は、就職氷河期を生き抜き、コンサルティング業界でスキルを磨いてきました。その後、「図解版・就職氷河期にコンサルティング業界へ入った父親が、娘に伝えたいこと」というコンセプトで書籍を執筆・販売しましたが、今のビジネス環境はAIやデジタルツールの進化により大きく変化しています。
今回、AI(特にCHATGPT)を使って、書籍企画プロセスを整理・再設計し、ビジネス一般で活用できる汎用的なモデルへと昇華させようと試みました。
なお、今回の制作過程で多少AIを導入し、企画の練り直しや情報整理は行ったものの、まだブラッシュアップが可能と感じています。そのため、CHATGPTとの実際の対話を通じて、より体系的かつ再現性のある業務設計を図ることを試してみました。
2. 改めてCHATGPTを用いて業務設計を行う理由
今回は、より明確な業務フロー化、インプット・アウトプット定義、タスク分解、責任者(ペルソナ)設定、パラレル実行可否など、業務設計の観点を定義することを狙いとしています。また、そのタスクのうち、LLMで実施可能なものをAIツール(Dify)を使って設計・開発をしたいと考えています。
CHATGPTは、私が提示した質問や要望に応じて、フレームワーク、チェックリスト、可視化支援などを提案します。この対話から得られるノウハウを本レポートで共有することで、一般ビジネスマンがAIをビジネスプロセス改善に活用するヒントになれると良いなと考えています。
3. 実際のCHATGPTとのやり取り抜粋
以下は、実際に私がCHATGPTとやりとりを行った一例です。この事例では、書籍企画に関する基本的なプロセス定義をCHATGPTに依頼し、それに対する回答を確認することで、どのようにAIが企画作成のフレームワークを提示してくれるかを示しています。これに続く対話例を通じて、初期的な概念提示から、より詳細なタスクレベルへの落とし込み、インプット/アウトプット情報や依存関係の明示化など、段階的な業務設計のプロセスが明らかになります。
(例1:最初のプロセス定義)
私(浅見純一郎):「最新の状況を加味した、売れる本の企画書を作るステップを教えて」
CHATGPT:
「以下は、最新の出版市場動向や読者ニーズを踏まえ、『売れる本』の企画書を作る際の代表的なステップ例です…
…(ステップ1~7を列挙)…
これらのステップを踏むことで、最新の市場動向に合わせた売れる本の企画書が作成できます。」
ここでは、CHATGPTが基本フレームワーク(市場調査→コンセプト明確化→構成案→販促計画→エビデンス強化→デザイン→サマリー作成)の全体像を提示。
(例2:アクティビティレベルへの細分化)
私(浅見純一郎):「各ステップをアクティビティレベルに落としてください。一気にすべて書ききれない場合は、分割して進めてください」
CHATGPT:
「以下は先ほどの『売れる本の企画書作成ステップ』を、実際に行動可能なタスクレベルに細分化したアクティビティ例です…
ステップ1:市場と読者ニーズの徹底リサーチ
[タスク1-1] 「出版年鑑」や「出版レポート」等の最新統計資料を入手・レビュー
[タスク1-2] Amazon、紀伊國屋書店…(略)
[タスク1-3] 出版関連ニュースサイトで最新トレンド記事を3~5本ピックアップ…
…」
ここで、CHATGPTは単なる概念的ステップから、一歩踏み込んで実務で使えるタスクリストへと落とし込んでくれました。
(例3:インプット・アウトプット定義と依存関係)
私(浅見純一郎):「各タスクのインプットアウトプット情報を定義してください。また、タスク間の連携も定義してください」
CHATGPT:
「以下は、前回のアクティビティレベルに落とし込んだ各タスクについて、『インプット(必要情報・前提条件)』『アウトプット(成果物)』『前後タスク連携(依存関係)』を明示した一覧例です…
[タスク1-1]
インプット:出版年鑑、出版レポート
アウトプット:市場概要サマリー
前後タスク連携:…」
このやり取りを通じて、私は企画書作成プロセスにおける情報フローを明確にし、各タスクがどのデータを入力し、何を生み出し、次のタスクへどう接続するかを整理できました。
(例4:UML図やスプレッドシート化への誘導)
私(浅見純一郎):「業務フローをUML形式で表現してください。また、インプットやアウトプット情報はNOTEで表現してください」
CHATGPT:
「…UMLアクティビティ図の一例を提示…」
ここでは、CHATGPTがプロセスをビジュアル化する方法まで案内し、ノート記法でインプット/アウトプットの関連付けを示しました。
(例5:パラレル実行可否、ペルソナ定義など追加要求)
私(浅見純一郎):「上記タスクで、パラレルで実施できるものはありますか?」
CHATGPT:「…ステップ1内の調査タスクは並行可能…」
また、ペルソナ設定(著者、編集者、アシスタント、エージェント、出版社担当者)では、CHATGPTが各ロールに求められるスキルセットや関与範囲を詳細に記述しました。
これら一連のやり取りを通じて、企画立案プロセスは「散在する知見」から「体系立った業務設計」へと昇華。AIが対話を通じて知識を段階的に整理してくれたことが実感できます。
4.実際のアウトプット
今回の作業では、以下のアウトプットを纏めることができました。
・業務リスト(一部)
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・役割定義
著者(Author)
役割:書籍執筆の主体者。専門領域や知識、経験を元に原稿を書く。
自身が提案するテーマに強い関心・専門性を持つ。
スキルセット:専門知識:特定分野での深い知見・経験(コンサル経験、業界トップクラスの実務経験、研究知識など)。
コミュニケーション能力:編集者やアシスタントとの意図疎通が可能。
ライティング力:読者にわかりやすく情報を伝える文章力。
マーケット理解(基本レベル):自分の分野が読者や市場でどのような位置づけなのかを把握するための最低限の市場知識。
関与領域:
初期テーマアイデアの創出
自身の実績・経歴整理(強み特定)
執筆作業全般
企画担当者(編集者・ブレーン)
役割:書籍企画の方向付けを担い、著者・出版社・エージェント間のハブとなる。
市場ニーズの把握、他書分析、著者サポート、企画書作成や目次構成検討を主導。
スキルセット:
出版市場知識:ベストセラー動向、トレンドテーマの把握。
企画力・編集力:アイデアを整理し、読者ニーズや市場性を踏まえた明確な企画にまとめる能力。
コミュニケーション:著者・エージェント・デザイナー・営業など、複数ステークホルダーとの調整。
マーケティング知識:販促計画の立案やSNS、イベントを活用したPR戦略立案が可能。
関与領域:
初期テーマ仮決めからペルソナ設定、目次案作成、出版社要望ヒアリング、マーケティング戦略立案
外部関係者(デザイナー、書店、インフルエンサー)との連携サポート
アシスタント
役割:リサーチ作業やデータ収集、簡易的な書類整理をサポートするバックアップ的存在。
著者や編集者が必要とする市場データ、類書情報、ニュースリサーチ、SNS分析などの下準備作業を担当。
スキルセット:情報検索・リサーチ能力:オンライン・オフラインで情報を素早く、正確に取得。
基本的なPCスキル:スプレッドシート整理、資料作成ツールの活用。
分析力(基礎レベル):取得したデータを簡潔に要約し、編集者や著者が活用しやすい形にする。
関与領域:
類書検索
SNSトレンド調査
初期テーマ設定時の関連情報収集
エージェント(Agent)
役割:
著者と出版社をつなぐ仲介役。
出版契約に関する交渉や、著者が書くべき市場性あるテーマの助言を提供。
スキルセット:
契約交渉スキル:ロイヤリティ、印税条件、出版スケジュール調整。
出版市場分析:どの出版社がどの分野に強いか、どんなトレンドが来ているかの知識。
コンサルティング能力:著者に対し、売れそうなテーマや表現、PR手段へのアドバイスを行う。
関与領域:
初期テーマ仮設定時のマーケット性アドバイス
出版社との要望・条件すり合わせ
書籍企画全般への外部目線からのフィードバック
出版社担当者(Publisher Side, Editor in Chief, Marketing担当など)
役割:
出版社内での企画承認、編集、販促プランの立案・実行を担当。
在庫管理、書店対応、営業活動を行い、書籍の売り上げ拡大に寄与。
スキルセット:
出版流通知識:書店流通、在庫・版管理、発注管理スキル。
販促企画力:POP、書店イベント、PRキャンペーン設計。
関係者ネットワーク:書店員、レビューアー、メディア関係者とのつながりを活用。
関与領域:
要望ヒアリング時に求めるテーマを提示
書店での販促施策決定、POP・サイン会アレンジ
出版戦略に沿った最終的なGOサイン、または企画立案フェーズでの相談役
5. ビジネスへの応用と展望
このアプローチは、書籍企画に限らず、商品開発、人事戦略、営業計画、教育プログラム設計など、様々なビジネス課題に適用できます。CHATGPTのようなAIは、ユーザーの質問や追加要求に応じて、段階的に情報を深堀りし、抽象度を調整し、可視化手法を提案します。その結果、複雑な業務計画を体系化し、各タスクの依存関係や実施主体を明確化できます。
このプロセスを参考に、自社の課題やプロジェクトに対して、同様の段階的対話を行うことで、より透明性の高い業務設計を行い、リスク低減や効率化を図れると思います。
6. まとめ
今回のレポートでは、実際にCHATGPTとの対話で得たステップ別タスク定義や、インプット・アウトプット整理、ペルソナ設定、UML図活用例などを紹介しました。引き続き、業務の効率化や高度化に向けてのヒントとなるべく内容をまとめていきたいと思います。