トレーナーに必要な思考回路2|問題意識
Vol.1では、スポーツトレーナーの仕事が『問題解決のサポート』であること、そのためには『理由化思考』およびそれを基に発せられる”できない理由ワード”をかなり意識的に避けるべき理由を述べた。
▶︎理由化思考
自分が向き合うべき課題に対してできない理由を列挙する思考回路
できないことを正当化しようとする(無意識)
トレーナーが最も避けるべき思考のスタイル
これらはトレーナーという”他者が結果を出すことをサポートする仕事”において不可欠であり前提条件である。
Vol.1
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■”日々同じことを繰り返している感覚”があれば要注意
トレーナーの立場でいつも思うことは、この仕事は『教育』という要素を多分に含んでいるということ。
含んでいるどころか、教育の観点を持たずにこの仕事を行う、つまり他者に成果を出してもらうことは不可能だとさえ思っている。
トレーナーの仕事は、量そのものも非常に多いし内容も多岐に渡る。
チームに帯同した場合、1日でやれる仕事を普通の優先順に行うと”毎日ほぼ同じこと”を繰り返すことになる。
チームだとそれだけ対象人数が多いし、優先順位も概ね決まってくる。
しかし”同じことを繰り返している感覚”がある場合は、要注意だ。
チームだけに限らず、パーソナルであっても同様に。
これは見方を変えると”同じことを繰り返さなければならない状態”を意味するからだ。
■同じことを繰り返さなければならない理由
それは、対象と環境が変化を起こしていないからである。
対象は選手であり、環境とはシステムである。
変化を起こさない相手には同じことを繰り返さなければならないし、変化を起こさない環境では同じ行動システムが要求され続ける。
つまりいつまで経ってもセルフケアを覚えない選手へのコンディショニングは常に同じだけ時間を要するし、不合理な作業システムの放置は常に無駄な作業がつきまとってしまう。
トレーナーの仕事には、毎日川に水を汲みにいくのではなく水道を作る感覚が必要だ。
トレーナーは同じことを繰り返すことに対して無頓着であってはならない。
なぜなら安易に繰り返す仕事は、『それ以上の仕事の実行』を阻害する存在になるからである。
”新しいことをするには忙しすぎる状況”は自らが作っていることがある。
「忙しくて」という言葉を発してしまう下部構造に要注意。
もちろん繰り返し行うべき仕事もある。
繰り返すべきことと、繰り返さざるを得ないことをしっかり分類しておかなければならない。
その仕事は本当に繰り返すべきなのかという問いは、”繰り返すのが当たり前”とされている仕事に対してこそ向けるべきである。
本来繰り返すべきでないことで、今は繰り返さざる得ない事柄に対しては、必ず改善するというスタンスが必要である。
これがトレーナーに必要な思考回路の2つ目。
『問題意識』である。
▶︎同じ仕事を繰り返している状況
対象と環境が変化を起こしていない可能性あり
対象:選手
環境:仕事のシステム
*繰り返すべき仕事と変化を起こすべき仕事を分類しなければならない
■”誰も気にかけないこと”を気にかけろ
多くの人は、繰り返し行うこと、行われてきたことに対して無頓着である。
いわゆる”慣習”に対して問題意識(疑問も含めて)を持たない。
”繰り返してきたから”という事実そのものが、繰り返す理由になっていることすらある。
入部する前から繰り返されてきたウォーミングアップ方法や練習方法。
先輩後輩の間に存在する謎のルール。
そして仕事のやり方。仕組み。
もしかしたら怒鳴るや根性論などの指導スタイルも。
我々はこれら『多くの人が疑問を持たないもの』に対して問題意識を持つという視点が求められる。(もちろんそれを解決するための行動も内包すべきである)
①本当にそれらは自分たちが目指す目的において必要なのか。
②目的地に到達する時間や労力を少しでも軽減する作用があるのか。
問題意識の基準は常にこれら2つの視点だ。
あくまで経験上だが、誰も気にかけていないようなところにこそ、我々のなすべき仕事を阻害する要因が潜んでいることが多い。
***
トレーナーが毎日同じ仕事を繰り返している状態。
人によっては、それでいいじゃないか、それが俺たちの仕事だ、選手の要望だからそれでいい、と思う人もいるかもしれない。
しかし断言するが選手にとっては確実にマイナスだ。
選手の要望にそのまま応えることは、決して我々の仕事ではない。
選手の問題解決を”サポート”することが我々の仕事だ。
筋肉が凝っているのが問題なのではなく、繰り返し筋肉が硬くなることが問題なのだ。
仮にこのような選手である場合、2つの要因を考えなくてはならない。
①セルフケアが不十分
②動き方に問題がある
*トレーニング量など他の要素は話をシンプルにするために省略
問題を解決するためには、問題の原因を分析・考察するのが大前提だ。
このことを考慮せず、”筋肉が凝っているからほぐそう”という短絡行動こそが、このケースにおいては”同じことを繰り返さざるを得ない”最大の要因である。
この場合、トレーナーがやるべき最大の仕事は『教育』である。
セルフケアが不足した場合に起こること、身体操作に問題があると起こること、それらを選手に理解させることの方が長期的には重要である。
何も考えずにほぐすことよりも圧倒的に。
常にトレーナーという立場の人間がついていないとコンディショニングが上手くいかない選手が出てきてしまう原因は、教育という観点の詰めの甘さである。
ただただ”選手の要望”のみに応え続けるスタンスは、優しさでもなんでもなく、結果として選手に多大なるマイナスを与えることになる。
なぜならその”優しさ”によって「セルフケア能力の低い選手」を生み出しているからだ。
全てはパフォーマンスアップのために。
JARTA
中野 崇
YouTube :コモドドラゴンスポーツ|”上手くなる能力”を向上するために
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Twitter:@nakanobodysync
1980年生まれ
フィジカルコーチ・スポーツトレーナー・理学療法士
JARTA 代表
株式会社JARTA international 代表取締役
イタリアAPFトレーナー協会講師
イタリアプロラグビーFiammeOroコーチ
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
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