パフォーマンスにかなり影響を与える『2つの前提条件』
Vol.1
大袈裟ではなく、前提条件の違いは「やるべきことの優先順位」を完全に変えてしまう。
同じ現象でも、前提条件の違いで見え方は完全に変わる。
それほど前提条件は影響が大きいものである。
■シュートミスをした選手への対応
例えばシュートミスをした選手の問題を解決する手段を講じる際のお話。
問題=シュートミス
解決手段=シュートの成功率を上げるための方法
あなたならどんな方法でこの選手の問題を解決するだろうか?
おそらく競技や指導経験のある方ならすぐにいくつか思い浮かんだと思う。
しかしそれらは全て間違いである。
結果的には原因と解決策は合致するかもしれない。
しかし解決策を導き出す思考プロセスは、確実に間違いである。
なぜなら、シュートミスをした選手の前提条件を私はまだ提示していないからであり、それなしに的確な解決策にいたることは不可能だからである。
このケースでここまで断言できる理由は、以下に提示する。
▶︎前提1
この選手のシュートは、普段は確実に成功する
▶︎前提2
この選手のシュートは、これまで成功したことがない
極端な例だが、前提条件がどちらかによって、この選手のシュートミスの見え方は随分変わる。
この問題(シュートの成功率を上げる)を解決するための方法も、両者で大きく異なる。
プロセスを間違いだとした理由はここにある。
ミスした選手の成功率を上げる方法、というテーマを得た瞬間に「まずこの選手の情報がもっとないと方法は絞り込めない」、と考える必要がある。
方法ではなく、先に原因の分析があり、原因の分析のためにこのような前提条件となる情報が不可欠なのである。
どんなに素晴らしい「手段」を持っていても、この部分の不足は致命的なズレを起こすリスクを孕んでいる。
■対戦相手の前提
試合においても考えるべき前提条件は複数ある。
例えば天候やレフェリーの特徴、そして相手などが主な前提条件に入ってくる。
ここでは試合での対戦相手について考えてみる。
▶︎タスク
試合に勝つこと
次に対戦相手についての前提条件。
▶︎前提1
これまで負けたことのない相手である
▶︎前提2
これまで勝ったことのない相手である
▶︎前提3
対戦経験のない、何も情報がない相手である
この例においても、試合に勝つというタスクは同じでも、そのために注意すべき点や予測、準備、心構えまでかなり大きく変わるはずだ。
指導者の方なら経験があると思うが、実はこれら前提条件の分析は戦術を立てるときに必ず行う行為である。
しかし多くの場合、『前提条件となる範囲』が不十分になりがちだ。
▶︎前提条件となる範囲とは
「試合結果に影響を与える」と考える範囲
つまり分析者(指導者または選手自身)が、「どれだけの範囲をパフォーマンスと関係あると考えるのか」という視点の大きさ次第で前提条件の範囲は変わる。
私の経験と知り得るの範囲内ではあるが、腕の立つ指導者は共通してこの範囲がかなり広い。
多くの人が「パフォーマンスには別に関係ない」と考える要素であっても「関係がある」と根拠を持って考えることができる。
例えばパフォーマンスと宗教の関係、パフォーマンスと文化の関係などが典型的である。
今回はパフォーマンスに影響を与える2つの前提条件のうち、非常に短期的なものである『変動前提』について述べた。
▶︎変動前提
前提条件の中でも変化するものを指す
例)対戦相手、天候など
指導側だけでなく、選手もこの視点は十分に持っておくべきである。
なぜなら変動前提は最終的には選手個人に集約していくからだ。
例えばその日の”調子”などは試合での戦術を決めるための重大な前提条件である。
このような視点を持つことで、パフォーマンスの発揮度合いは確実に向上する。
なぜなら”想定外”が減るからだ。
前提条件を考えることは、実は想定内の範囲を増やすこととかなり関係が深い。
この部分は今回の本筋とはずれるので別の機会に触れる。
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次回は変動前提に対して『不変前提』について考える。
不変前提は、その競技をやる上で”変わらない”前提条件である。
例えばサッカーならば、ボールを足で操る制約があること、などである。
不変前提は、変動前提以上に重大な影響をパフォーマンスに与える。
変動前提が戦術や準備に強く関与するのに対して、不変前提は身体操作や身体づくりにかなり深く関与するからだ。
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このような考え方をまとめたオンライン講義を行います。
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変動前提と不変前提、それらを使ってどんなパフォーマンスアップ戦略を考えるべきなのかというところをお話します。
■パフォーマンスアップに不可欠な二つの前提条件
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中野 崇 @nakanobodysync
YouTube :Training Lounge|”上手くなる能力”を向上
Instagram:https://www.instagram.com/tak.nakano/
1980年生まれ
フィジカルコーチ・スポーツトレーナー・理学療法士
JARTA 代表
株式会社JARTA international 代表取締役
イタリアAPFトレーナー協会講師
イタリアプロラグビーFiammeOroコーチ
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
JARTA:
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