トレーナーに必要な思考回路3|説得力
Vol.2では、スポーツトレーナーが同じ仕事を繰り返してしまう状況を切り口に、トレーナーが目を向けるべき問題意識と教育の視点について書いた。
その結果トレーナーが知らず知らずのうちに選手の成長および問題解決能力の向上を阻害していることについても触れた。
Vol.2
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トレーナーに必要なのは、”問題解決型”の思考回路である。
トレーナーが関与することができる多くの問題にはこの思考様式を欠いてしまっては到底クリアできない。
どんなに知識があっても、身体が使えても、思考回路の欠乏は全てを台無しにする。
それだけではなく、この思考回路は選手にも必要である以上、指導側にあたるトレーナーが持っていなければ選手の成長を促すことは不可能だ。
マッサージやトレーニング方法の指導がトレーナーの仕事の本質ではない。
選手がぶつかる問題の解決をサポートするという行為を通した、”あらゆる面”での成長を促すことが我々の仕事の本質である。
▶︎あらゆる面とは
単にその競技がうまければ良いという一面的なものではなく、他者へのリスペクトや挫折に対する考え方、自己管理、自分を支えてくれている存在への感謝、社会問題や歴史への視点など。
私はこれら全てが長期的なパフォーマンスアップには不可欠だと考える。
問題解決型の思考回路とは何なのか。
それはどんな難題でも「出来る手段を見つけることだけに集中する」という思考様式である。
時間がない、お金がない、家庭や職場の理解や環境が整っていない、思い通りにならない人がいる、などは難題なんだから存在して当たり前であり、そもそもそれらが存在してなければ問題ですらない。
全てはただの「前提条件」だと位置付けること。
トレーナーが集中すべきことは、そこに囚われて動きを止めるのではなく、解決手段の創出である。
トレーナーは常に解決手段の創出に集中すべきである。
”できない理由”は手段創出のために必要な前提条件に過ぎない。
言葉にすると「そういった状況にあるのはわかった。その上でどうするか。」だ。
これはそのまま選手にも当てはまる。
一流選手は、他の多くの選手がクリアできなかった”難題”をクリアし続けていると言える。
当然、問題解決型の思考回路が基本装備だ。
それどころか”世界の全員が「それは無理だ」と言っても自分だけは最後まで可能性を信じる”といった発想を持っていることが多い。
また、誰がどう見ても本人の責任ではない失敗であっても”それに対して自分は何か出来たのではないか”という具合に自分の成長に繋げようとするような発想ができる。
この発想は間違いなく彼らが難題をクリアし続けられている大きな要因である。
つまりパフォーマンスを上げるという行為は、このタイプの思考回路を身につけることを伴わなければならない。
このことは彼らの指導に携わるトレーナーにも不可欠な思考回路であることを意味する。
そうでなければ選手からすれば”腰痛の人から腰痛を治す方法を学ぶ”ようなものだからだ。
腰痛の人からは誰も腰痛の治し方は学ばない。
仮に教わっても、本気で実践することは決してない。
指導側にある者は、どうすれば自分の言葉や振る舞いが説得力を持つのかを常に意識しなければならない。
最後に大事なことを。
思考は身体(パフォーマンス)に影響する。
恐怖や不安があると、身体は本来の動きを発揮できない。
問題解決が出来る思考回路を備えていないと、身体も問題解決に協力してくれない。
コツは”仕事中”だけでなく、常にこの思考回路を使い続けること。
基本装備にすること。
「必要だ」と思ってしばらく意識することは、はっきり言って誰でもできる。
難しいのは、継続だ。
”難題”である。
JARTA
中野 崇
YouTube :コモドドラゴンスポーツ|”上手くなる能力”を向上するために
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Twitter:@nakanobodysync
1980年生まれ
フィジカルコーチ・スポーツトレーナー・理学療法士
JARTA 代表
株式会社JARTA international 代表取締役
イタリアAPFトレーナー協会講師
イタリアプロラグビーFiammeOroコーチ
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
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