演奏所感#005 ボザール・トリオのメントリ
メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番、通称“メントリ”には数々の名盤がありますが、今回はメナヘム・プレスラー率いるボザール・トリオによる演奏を紹介します。
ボザール・トリオはアメリカのピアノ三重奏団なのですが、ピアニストのプレスラー以外は度々メンバーが交代しているという、少し不思議なグループです。
本録音では、ボザール・トリオの生みの親であるプレスラーとブラジルが誇るチェロの名手メネセスという2人の重鎮が、即興的な奏法が印象的な気鋭のヴァイオリニストであるホープとの対話を愉しんでいるように感じます。
そしてやはり特筆すべきはプレスラーの音色捌きではないでしょうか。
ヴァイオリンやチェロが情熱的に謳う時は、本当に魔法のようにまるでピアノが弦楽器であるかのような音色を奏でながら、少し後ろからそっと手を差し伸べます。
そして、自身が謳う時は転がすような優しい音色で朗々と謳い上げる。
特に彼らによる第4楽章は、エキゾチックな旋律とラテンなリズムの描き出す世界観が印象的で、恐らく一度聴くと頭の片隅に残り続けるような、そんなキャッチーさがある気がします。
ボザール・トリオのメントリ、肩肘張らずに休日の夜にでも、コーヒー片手にいかがでしょう?