機器探訪#002 CHORD Qutest
SACDを聴くためにDP-950を導入したのでHS-LINK Ver.2に対応するDC-37に買い替えてしまいましたが、それまで愛用していたDACです。
製品概要
Hugo2からヘッドホンアンプ、Bluetooth回路、バッテリーやリモコンといった付加機能を全て削ぎ落とし、入力はUSB、BNC、TOS、出力はRCAのみという必要最小限の構成とするなど、とことんシンプルを追求したCHORDのコンパクトなピュアDAコンバーターです。
入出力仕様
USB入力はノイズフィルターとしてガルバニックアイソレータを搭載し、PCM 768kHz 32bit、DSD 22.4MHzまで対応しています。
出力がRCAのみというのは賛否両論だとは思いますが、 我が家のアンプはアンバランス接続の方が出音が好ましいため、特にデメリットには感じませんでした。
なお電源は付属品ではなくAudio DesignのDCA-5Vを使っていました。
購入のきっかけ
まず音質のレビューに先立って私がQutestという製品を購入したきっかけについて紹介します。
実は以前から汎用チップを使わずFPGAを使い独自のアルゴリズムによりDA変換するCHORDのDACには興味がありました。
CHORDのRobert Watts氏は音響心理学というある種のモデルを踏まえてロジックを組むものの、最終的にはリスニングによるトライ&エラーを繰り返し、自身の感性に基づいてアルゴリズムを決定しているそうです。
私自身物理屋さんということもあり、所謂理論とは、とある切り口からは事象をより良く近似出来ているというだけであり、そこに真偽などなく、ましてや人における音楽の認識という世界においては、より良く近似する理論すら未だに見つかっていないと思っているため、感性に基づいて構築されたCHORDのDACに、非常に好奇心がくすぐられたのです。
音質
さて、いよいよ本題の音質に関するレビューですが、一言で言うならデジタルなのに自然、この一言に尽きます。
基音と倍音が適切に再現されるためか音色が豊かで、その響きは楽器の生音に非常に近く、また驚くことに教会録音では、あの独特の音響も再現され臨場感を感じると共に演奏者の気配すら感じられます。
とてもこの価格帯、この物量の製品が奏でているとは思えない自然で生々しい出音が心地よい製品です。
一聴してCHORDの音創りのファンになってしまった、そんな不思議な魅力に溢れる小箱でした。