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外国語の試験を受けること
SNSなどを見ていると、主に学生だと思われる人が「英検とTOEICのどっちがいい?」などと迷ったり、質問したりしている場面に出くわすことがあります。しかし、そもそも語学試験には種類や目的の違いがあり、単純に比較して「どちらがいい」と判断できるものではありません。特に、日本国内で日本人向けに実施されている「◯◯検定試験」と、国際的に行われている外国語試験とでは、その性質が大きく異なります。
まず、日本国内で行われる検定試験(英検、仏検、西検など)は、日本語と外国語の双方向の能力を測ることを目的としています。そのため、試験問題では日本語から外国語への翻訳、あるいは外国語から日本語への翻訳が求められることが多いです。これは、日本人が日本語をベースにして外国語を学習するという一般的な学習プロセスに即した形といえます。特に、帰国子女でない限り、日本語を介して外国語を理解する学習法の方が馴染みやすいため、日本人にはこのタイプの検定試験の方が適している場合が多いですね。
一方で、TOEICやDELF、DELEのような国際的な語学試験は、日本語を介さずにその外国語だけで理解力を測ることを目的としています。つまり、試験はすべて英語、フランス語、スペイン語といった対象言語のみで実施され、日本語の翻訳や解説を必要としません。そのため、外国語を外国語のまま処理できる能力が求められます。日本語に変換せずに内容を理解できるタイプの学習者にとっては、これらの試験の方が適しているでしょう。
また、どの試験を受けるかを考える際に、最終的な目的も考慮する必要があります。例えば、外資系企業や国際機関で働くことを目指している場合、国際的な語学試験のスコアの方が評価される傾向にあります。その中でもTOEICは日本国内の企業であっても評価が高く、DELFやDELEはフランス語圏、スペイン語圏での評価に直結するため、グローバルなキャリアを目指す場合(EU圏内で働くとか)には有利となります。
私自身の肌感覚からすると、スペイン語の西検1級とDELE C1を比較した場合、DELEの方が圧倒的に難易度が高いと感じます。その理由の一つは、使用される語彙のレベルの違いです。西検1級でも確かに高度な語彙が求められますが、DELEではさらに専門的で洗練された表現が出てきます。また、西検では日本国内の話題が試験に含まれることがありますが、DELEではそのような要素は一切なく、純粋にスペイン語圏の文化・社会・歴史といった内容が出題されます。そのため、日本語的な考え方に頼らず、スペイン語そのものに向き合わなければ対応できません。
さらに、全国通訳案内士試験をこれらの語学試験と並べて考えている投稿も見かけますが、これは全くの別物です。全国通訳案内士試験は、日本国内で唯一の語学系国家資格であり、単なる語学力だけでなく、日本地理、日本歴史、実務、通訳の一般常識といった幅広い知識が必要とされます。特に日本地理の試験は机上の勉強だけでは難しく、フィールドワークを通じた知識が問われる部分も多いのです。また、日本歴史の試験は大学入試のような一般的な歴史知識とは異なり、観光案内の視点から日本の歴史を理解していることが求められます。そのため、「英検とTOEIC、どっちがいい?」と同じような感覚で全国通訳案内士試験を選択肢に入れるのは、適切ではないといえます。
以上のように、語学試験にはそれぞれ目的や測定範囲の違いがあります。試験を選ぶ際には、まるでビュッフェの料理を選ぶように「どれにしようかな」と考えるのではなく、まずは自分の学習スタイルや将来の目標に合った試験を精査し、適切なものを選ぶことが重要ではないでしょうか。どの試験を受けるかを決める前に、「この試験が本当に自分の目的に合っているのか?」をよく考えた上で選択するようにしたいですね。