日本製鉄によるUSスチール買収、何が起きているのか理解する
はじめに
2023年12月18日、日本製鉄は米国の鉄鋼大手USスチールを買収することで合意したと発表し、 世界に衝撃を与えた。
買収額は約2兆円とされ、 実現すれば日米企業間の大型再編となるだけでなく、世界の鉄鋼業界の勢力図を塗り替える可能性を秘めている。
しかし、この買収劇は、米国の政治状況、労働組合の反対、そして経済安全保障問題など、様々な課題に直面し、極めて状況が不透明になっている。
本稿では、日本製鉄によるUSスチール買収について、その経緯、目的、そして今後の見通しを多角的に分析し、鉄鋼業界、そして日米関係に与える影響について考察していく。
買収の経緯と目的
背景
日本製鉄は、世界4位の鉄鋼メーカーであり、粗鋼生産量は約4,900万トン(2023年)に達する。
日本製鉄自体は明治時代に建設された官営八幡製鉄所にルーツを持つ企業であるが、1970年代に八幡製鐵と富士製鉄が合併して誕生した新日本製鐵は、日本最大の鉄鋼メーカーであった。
その後2012年に新日本製鉄は住友金属工業と合併し、新たに「日本製鉄」として生まれ変わり、一時期経営危機も経験したが、製鉄所の整理などを行い復活して現在に至る。
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