佐藤弓生の「近・現代詩おぼえがき」第5回:高階杞一『夜にいっぱいやってくる』評
夜にいっぱいといえば、あれだあれ。おばけ。おばけの絵本をひらく気分で、五つのパートから成る表題作を読んでみたら、たしかに五つの奇妙な光景が部分的連鎖をなしてはいるものの、おばけの楽しさからは少々遠かった。そこには、口調はソフトでも、いわくいいがたい不安や不快が描かれていた。〈床に転がっている指を/一つ一つ拾い集めている椅子がいる//「どうするの そんなもの」/「二十本集めたら一人ができる」〉(5「指」部分)といった調子。慣用表現「豚のほうがまし」「どこの馬の骨」に召喚されたか