土偶を読む を読む。
岩手県立博物館の日曜講座「竹倉史人著『土偶を読む』を読む」に参加してきました。
「土偶を読む」は「土偶は食用植物や貝類をかたどったもの」という仮説に立った本で、私も読んだのですがかなり無理のある話の展開で、これを評価する人がいるのだろうかと思うほどでしたが、予想に反して考古学の本としては売れに売れているようです。書評も好意的なものが多くて意外です。
今回の講座は、岩手の考古学研究の第一人者である岩手県博の金子学芸課長が真っ向からこの本を批判する内容で、金子さんもこの本で名前が出ていますが勝手に斜め読みされて不快感を示されていました。
考古学界は陋習に縛られている古い考えの研究者の集まりで、竹倉氏は自らを在野の「人類学者」として位置づけて新風を吹き込んだという筋書きがうまくいったのかもしれませんが、そういうステレオタイプなストーリーに皆乗せられてしまうのだなあと。
ハート型土偶はオニグルミの殻を割ったもの、中空土偶はトチの実に似てるというのは一見そう感じますが、特定の土偶だけ取り上げているのは恣意的だし、データの取り方も一方的。遮光器型土偶は里芋がモチーフになっているとか、縄文時代にはまだ無かったイネがモチーフとか、だんだんため息が出てきます。金子さんはひとつひとつ丁寧にそれを解説し反論し、反証を示されていました。自分が長年研究テーマにしてきた土偶についてはかなり熱が入っていました。
金子さんには盛岡のJR上米内駅で「縄文の漆」セミナーを開催した時に講師として来ていただいたことがあり、縄文人がなぜ漆をわざわざ面倒な精製をしてまで使っていたのか、衣食住が優先されていた時代になぜ?ということを話されていたのが印象に残っております。
あと、岩手県博では「新収蔵・新指定展」が開催されていて、岩手の漆芸家・漆指導者の古関六平氏の作品と道具類一式が展示されていました。こういうものが散逸せずに博物館に収まるのは良いことですね。
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