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【思い出の展覧会】日本美術への扉を開いてくれた東博の国宝展

はじめに

 先月から参加しているメンバーシップ「オトナの美術研究会」、その最初の「月イチお題記事執筆企画」に乗っかり、初めてnoteに記事を書くことにしました。テーマは「思い出の展覧会」は色々と思い浮かぶものはあったのですが、今回は2014年に東京国立博物館で観た「日本国宝展」について書くことにしました。私が日本美術への興味を深めていくきっかけになった展覧会です。

「教科書の中の世界」が目の前に

 今では当たり前になった日時指定予約もなく、その日は平成館の前で1時間弱並んだ覚えがあります。スムーズな出入りや事前決済は当然楽なのですが、こうした行列の中にいるあいだのわくわく感も当時は一興だったなあと思います。
 この展覧会で印象が一番色濃く残っているのは、展示室に入ってすぐに出合った《玉虫厨子》(奈良・法隆寺)。これは誰しも写真を目にしたことがあるくらい有名な文化財でしょう。飛鳥時代に制作されたもので、今ではほぼ残っていませんが、およそ4,500匹分とも推定されるタマムシの翅で装飾を施したことが名前の由来です。
 そんなはるか昔の時代の伝説的な文化財は、自分にとってはあくまで教科書の中の存在でした。修学旅行で京都・奈良を訪れたことはあったのですが、当時はそこまで文化遺産に思いを馳せることもなかったのです。古代の遺物など、写真では見ていても神話のような感覚でした。

 初めて目の当たりにしたそれは、想像以上に大きかった。自分にとっては、おとぎ話の世界が想像を超えて現実に現れた感覚でした。千数百年という、人間の生涯と比べ途方もない時間を過ごしてきた文化財と対峙していることに、言葉にできないような感慨を覚えたものです。側面には絵が描かれているのですが、そのうちの釈迦の前世の物語である「捨身飼虎図」「施身聞偈図」に目を凝らして見入りました。

観覧後

 当時は大学1年生。人文系の学部に在籍していて、ちょうど進級を前にして所属する専攻を考えていた時期でした。
 美術史も候補であったものの、美術館通いは大学に入ってからで、しかも西洋絵画の企画展に偏っていたのです。おまけに特に意味もなく「これからはもっと海外に目を向けなければ」などと若さゆえ(?)のグローバル志向を持っていたころでした。
 そんなタイミングで観たこの「日本国宝展」は、「そもそも自分は日本についてしらないことが山ほどある」と気付くきっかけでした。その後私は美術史専攻に進み日本美術にハマって(不勉強で怠惰な学生でしたが……)、社会人になった今日につながるのですが、その道程への扉を開いてくれた思い出の展覧会です。
 今回この記事を書くにあたって出品リストを見たのですが、覚えていないものも結構ありました。いま同じ内容を観れば予備知識もあって、記憶に留められる作品ももっとあるのでしょうが、当時の新鮮な気持ちや今でも残っています。

余談

 ここまで読んでいただいた方、ありがとうございます。
 もともと言語化が得意ではないのですが、こんな短文でも改めて難しさを感じました……。ただ、こうして自分の頭の中を文章にすることは考えの整理にもなりますし、普段あまり話す相手がいない話題(それこそ美術関連とか)について誰に向けるわけでもなく書きつくることもいいかもしれないと感じられましたので、これからも自分のペースで色々書いていけたらと思います。

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