蜂窩織炎で緊急入院した話 その①
はじめに~Caution!~
この話の性質上、陰部に関するワードが出てきます。
苦手な人、お食事中の人は読むのを控えてくださいね。
また、あくまで一患者の記録なので、蜂窩織炎について詳しく知りたい人は専門家によるWeb記事や書籍を参照してください。
入院、前夜
その日、私は旅行中の両親に代わって実家の犬を世話するため、自宅から新幹線で数時間かかる実家に帰ってきていた。
自宅を出るときから、右足の付け根、もっと言うとデリケートゾーンと太ももの間の関節部分に違和感があった。
おできである。
下着が擦れるのがいけないのか、はたまた体質か、私は昔からこの部位におできができやすかった。
軽いものだったら数日で勝手に治る。
ちょっとひどそうだったらデリケートゾーン用の軟膏を塗っておけば治る。
過去に2回、あまりに痛くて婦人科にかかったことがあった。一度は内診台の上で緊急切開をして中の膿を取り出すことになったが、もう一度は注射針で膿を抜くだけで済んだ。
だから今回も、いつものことだろうと思い、前に婦人科でもらった軟膏を塗っていた。
様子がおかしくなったのは、明日にはもう自宅に帰るという晩。
祖母の家で夕飯をもらう約束をしていたのだが、おできがだいぶ痛い。
「帰ったら婦人科行こう…」と痛みを堪えながら、祖母の家に向かった。
祖母の家は座卓を使っているのだが、痛くて正座ができない。
なんとなく足を崩しながら、それでも楽しい時間を過ごした。
「明日頑張って帰って、次の日すぐに病院に行こう!」
私はそう固く決意した。
痛くてパンティーが穿けない(おできにゴムの部分がジャストミートしてしまう)ので、ゆるっとしたパジャマのズボンだけ穿き、居間のソファーで就寝した。
痛みで動けない、朝
次の日。
目覚めた。
と同時に猛烈な痛みが襲ってきた。あのおできの部分だ。昨晩寝る前に塗ったはずの軟膏は全く効いておらず、むしろおできは大きくなっている。
そして何より、痛すぎて足を開いて横になった姿勢から動けない。
「今から帰るつもりだったんだけど、どうしよう…。」
実家には私の他に犬一匹しかいない。
祖母は近くに住んでいるが、米寿目前の彼女に頼るのはしのびなく、また、無用な心配をかけたくなかった。
どうすべきか悩んだ私は、ソファーの近くに放り投げてあったスマホを頑張って取ると、
自宅へ帰る新幹線の指定席券を終電に変更した。
いやまずやるのそれかよ!と今なら思う。しかし当時はすぐ帰るのが無理そうだったから、一番遅い新幹線の発車までになんとかしようと、私なりに考えたのだ。ちなみに、ご丁寧に実家から最寄りの新幹線駅までの私鉄の時刻表まで調べていた。
呼ぶか、呼ばないか、それが問題だ
無事に新幹線の時間を遅らせることができたので、私はいよいよ痛みと向き合うことにした。
休んでいたら治りそう?
―今までの経験上、多分ノー。
自力で運転して休日診療へ行く?
―無理。立ち上がるのも無理そうなのに運転なんて危なくてできない。
救急車、呼ぶ?
その選択肢が脳裏に浮かんだ瞬間、大きな迷いが生まれた。
いやだって意識もあるしおでき痛いだけだしこんなことで救急車呼んでいいのか?
でも、自力で病院までは行けない。痛みも引きそうにない。
そうなったら、答えは一つしかなかった。
私は初めてスマホの「緊急通報」機能を使った。
「救急です。あの、足の付け根にできものができて痛くて動けません!」
家の住所や何やらを電話で伝え、電話を切った。これで一安心…。
ではなかった。
この家、鍵閉まってるじゃん。ということは玄関まで行かなきゃいけないの!?
それに財布や毎日のお薬も持って行かないとダメだ!
もう、腹をくくった。
うわあ!と叫びながら私は立ち上がり、痛みに耐えながら急いで犬にエサをやった。両親が帰って来るまで達者でな。
そしてその勢いでハンドバッグと日々飲んでいる薬が入ったポーチを手にし、玄関に直行。鍵を開け、その場にへたりこんだ。
あとは、あとは救急車が来るのを待つだけだ。
その頃にはもうサイレンの音が聞こえてきていた。
玄関を開けて救急隊の人が入ってきた。
「歩けますか?」の問いには速攻で「無理です!」と答え、私はストレッチャーに乗せられて救急車の中へと収容された。
その②に続く
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