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曲のリリースペースから自己分析

最近はメジャークラスでも1ヶ月に1曲リリースなんてことはざらで、特にビートメイカーの世界では1曲を仕上げるのに数時間という驚異的スピードでこなしてしまう人は少なくない。

良い意味で勢いやノリで一気に作り上げるように、本人たちがあくまで自然なスピードで作った結果がそれくらい、というナチュラルなケース。

一方で、計画的にリリースペースを早めてコンスタントな活動を行なうケースもあるだろう。
特に昨今の音楽事情として毎週のように新曲が溢れかえるわけで、1人でも多くのリスナーの耳(というか目)にとまるためにはリリースの頻度がとても重要なファクターとされる。

作り手としては最新曲以外のものは価値がなくなったかのような錯覚を覚えることもある。(いちリスナーとしては好きなものはいつまでも聞くし、決してそんなことは感じないんだけど)

さて、私はどちらかというとリリースペースはかなり遅い方だと思う。
少ないながら依頼仕事のような納期が決まっているものや、あとはコライトなど制作判断が自分だけでないものは人並みの早さで仕上げる。
しかし、完全な自己完結な作品の場合は非常に遅い。
それはスキル、判断力、第三者の不介在といった理由があるが、そもそもとして本来私の制作思考が関係していると感じることも多い。

それは、気分や勢いで作り上げることができるタイプではなく、自分の中で設定したコンセプト(それは曲のテーマだったり、音色だったり、ジャンルだったり、技術面だったり)を消化しながら検証しながら制作したいタイプだからかもしれない。
※もちろん前者のタイプでもコンセプトを消化しつつ作れる人などいっぱいいる

もっと言えば、一曲を作り上げた後に数ヶ月寝かせて1,2回作り直すことさえよくある。
完成した後でも、さらに詰める部分はないかと時期を空けて再度向き合うと、必ず改善点が見えてくる。

そんな、ある程度以上一曲にエネルギーを注ぐことでしか見えてこない新しい視点を得るため、あえてそういう制作パターンを強いる。
ここでいう"新しい視点"とは、音楽的なことであったり、曲への感情であったり、とにかくより"良い曲"にするための要素。

なので私の場合は作り上げる過程で楽曲への想いや説得性を重ねている感覚があるのかもしれない。

一方で、私とは対照的なリリースが早いタイプのアーティストに関する面白い記事を先日見かけたが、その中で「SNSに投稿するように、今その時の自分の気持ちをビートとして作りあげる」という趣旨のことが書かれていた。

非常になるほどなーという部分があり、新しい考え方と一瞬思いつつも、むしろ本来的で自然だなと妙に納得してしまった。
その時の感情、生活や日常と繋がっている音楽。

当然時間など置いたら腐ってしまうわけで、今この瞬間を音として切り取って形にしてドロップするということで意味を与える。
反対に、私はその瞬間を切り取るけれど、その瞬間を加工したり撮り直したりすることで意味を与える。

当然どちらが正しい正しくないの話ではないが、後者の私からすれば前者のいわゆる瞬発力という一面は、絶対に音楽家として必要なことだと思う。

ここの不足は自身のウィークポイントとして感じざるを得ないし、音楽としての説得力に大きく影響する気がしてならない。

数年感じている大きい壁はやはりどこからでも露呈するものだ。

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