家事と火事

天ちゃんと空くんは寒い日も
外で遊ぶのが大好きです
天ちゃんは今日はならいごとがあるんだって
いっしょに遊べないけど今日の空くんはへっちゃら

なんだか、空くんはそわそわしています
お父さんのお誕生日をお祝いするから
たくさんのワクワクがいっぱいなんです

空くんのおうちではお誕生日の日には
ケーキを買ってたべるのがお決まりです

空くんの特別な冒険:お父さんの誕生日のできごと

今日はお父さんの誕生日。空くんは朝からワクワクしっぱなしです。

「お父さんのケーキにローソクをつけるの、ぼくがやるんだ!」

空くんはそう決めていました。だけど、お母さんは「火は危ないから大人がやるのよ」と言っています。それでも空くんはやりたくて仕方ありません。

もちろんお母さんがそういうことは空くんにはわかっていましたから
空くんはしっかりとローソクのある場所などをかくにんしてそのときがくるのを今か今かとまちかまえていました。
夕方になり食事の用意ができて、お父さんの帰りを待ちます
「そら、そろそろお父さん帰ってくるからケーキ出して待ってようか」
お母さんのその言葉に空くんは待ってましたと
「うん、ぼくが出すね」
空くんは食事のテーブルにケーキを運んできました
お手伝いをしてくれる空くんを見て、お母さんも心配そうに見守りながら
やっぱりニコニコとうれしそうです。
「お父さん早く帰るといいね」と言って
ついにお母さんが部屋をはなれたとき、空くんはキッチンに向かいました。

ガスコンロとローソク

空くんはテーブルの上のケーキに飾られたローソクを持って、キッチンのガスコンロに向かいました。

「よし、これで火をつけるんだ。」

ガスコンロのスイッチをおすと、青い火がシュッと現れました。空くんはその火にローソクを近づけます。

そのとき、

「空!何をしているの!」

おどろいたお母さんがかけ寄り、すぐにガスコンロを止めました。

「ごめんなさい……」空くんは小さな声で謝ります。

すごいいきおいのお母さんに空くんはびっくりしてしまい何も言えなくなりました

【ストップ】



空くんにはとっても不思議な力があります
なんで?どうして?の大きな?が出てくると
時間が止まってそのはてなの正体がわかるまで過去や未来に飛んで行ってはてなの正体の雲を見つけてくることができるんです

すごい勢いのお母さんにおどろいた空くんは部屋に戻り、
ベッドに座って考えています。

「どうしてお母さん、あんなに怒ったんだろう?」

気づくと空くんは去年のお母さんの誕生日の日にお戻っていました
その日もいつも通りにそらくんはわくわくしています。
そして、その日はお父さんといっしょに買いに行ったケーキを楽しみにしていました。

「お父さん。このケーキぼくがローソクに火をつけて、お母さんにわたすからね」
はりきる空くんにお父さんは言いました

「ありがとう。だけどまだ空には早いから、今日はお父さんがケーキは出すから、そらがハッピーバースデーを歌ってくれないかな」

「いやだ、いやだ。ケーキぼくがえらんだんだから、ぼくがケーキやる」

「だけど、火をつけたり、大きいケーキを運ぶのはむりだから、もう少し大きくなってからにしよ。ケーキ落っこちて...」

「だめだめだめだめ」

「そら、来年のお母さんの誕生日はそらがケーキやってよ」

そうしてその日、お父さんはケーキを用意して
ローソクに火をつけたケーキを運ぶのを見ながら空くんはハッピーバースデーを大きな声で歌いました。

そしてそのときのことです空くんはケーキをじゅんびする
お父さんがローソクをガスコンロでつけているのを、ドアのかげからこっそり見ていたのでした。

お父さんがガスコンロでローソクをつけているのを見つめる幼い空くんの姿。空くんはそれを見て、「こうやるんだ」と覚えたのでした。

長い棒のライターで火をつけるお母さん。
ガスコンロで火をつけたお父さん。

火をつけることはおさない子供にとってはそれ自体が冒険でわくわくです。
おとなはいつもこのわくわくを子供だから、まだはやいから、あぶないからといって先送りにします。

なぜ、大人はよいことがこどもはだめなのかな?????

未来の教訓

こんどは空くんは未来にいました。そこには...。

未来の空くんは火が大好き。いつもお母さんダメって言われてるから、火遊びはこっそりやることにしています。

非常用にしまってるローソクを持ち出してきて何本も火をつけて遊んでいました。かくしてあったマッチも見つけています。
そんなとき1本のローソクがコロコロと火のついたまま転がってしまいます。あわてた空くんがそれを取ろうとしたときほかのローソクもバタバタとたおれてあっという間に火が燃え広がります。
空くんは手をやけどしてその場に立ちすくんでいます。
家が煙でいっぱいになったところで買い物に行っていたお母さんが家にかけこんできました。空くんを助けたお母さんは泣きながら火を消そうとしていますが、火はどんどん広がっていきます。

「あんな小さな火だったのに。こんな大きな火に……」


場所はまた変わって
今度はおじいちゃんとおばあちゃんの家で
お父さんとお母さんが話をしています。
お母さんの手は両方とも包帯でぐるぐる巻きになっています。

「まだ、やけどのあとは痛いかい?」と聞くお父さんに
「もう、ずいぶんいいけどよくなるには時間がかかるみたい」
少し悲しそうに話すお母さん。

「空にいつもだめだめ、まだまだ、ばっかりできちんと火の使い方をおしえなかったぼくたちがいけなかったのかな」

「わたしたちは火の使い方だけじゃなく、なんでもまだできないってきめつけて、教える大変さから逃げて、先延ばしにしてたのかもしれないわね」

「どうやっておしえていいかわからなかったから、いつか学校やほかの大人からおそわるだろうって考えてた。だけどそれを言うと親として失格みたいではずかしくて言えなかったんだ」

「本当に恥ずかしいのは、子どもが感じてるものをいっしょに感じて、成長しようとするちからを助けようとしてあげられなかったことかもしれないわね」

「わからないことをすなおに学ぼうとする気持ちを忘れてしまった大人になった自分たちに大切なことをおしえてくれたのかな」

お父さんとお母さんはこんな話をしているが、空くんにはあまりよくわからなかった。だけどお母さんは火事でおおきなやけどして、家もなくなってしまって、おじいちゃんおばあちゃんの家にいることだけはわかった。
自分がつけたあの火のことを空くんは思い出していた。

そして空くんは大きな雲の中にいた。

ダメだと言われたことをこっそりやって、火事になった未来の自分。
大人はいいけど子供はダメって言ってたお父さんとお母さんは自分たちがダメだったって言ってた。
何がダメだったのか?
おとなとこどもはダメなことは同じ?

雲がおしえてくれた

”わからないことをわからないままにしないで。
たくさん話して、たくさん見つけて、たくさん?の種を見つけよう
それは、おとなもこどももみんないっしょにやると
もっともっとたくさんの種がみつかるんだよ”


お母さんの願いと空くんの決意

時間を元に戻った空くんは、お母さんの前に立ちました。

「お母さん、ごめんなさい。ぼく、火がどれだけ危ないか、ちゃんとわかったよ。」

お母さんは空くんを抱きしめて言いました。

「空、火は便利だけど、とても危ないものでもあるの。使い方をちゃんと学べば安全だけど、間違った使い方をすると、大切なものを失っりきずつけたりすることになるの。これからはもっともっといっしょにいろいろやってみようか」

空くんはしっかりうなずきました。

「お父さん帰ってきたよ。おたんじょうびの歌うたおうか」

その日の夜、空くんはお母さんとお父さんと一緒に火の正しい使い方を学びました。そして、次のお誕生日には、安全に火を使えるようになることを目標にしました。

お父さんの誕生日は、空くんにとっても特別な教訓の日となったのです。

おしまい。今日もありがとう。

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