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ぼっちな春節の日のありがとう

寒暖差の激しい今日この頃、窓の外を眺めると、ふと思い出す出来事があります。2006年1月28日、私は北京のとあるホテルに宿泊していました。

北京で半年、上海での半年の留学を終えて、日本に帰国する直前。本来上海から東京に行ければ良かったのですが、もともと北京での留学を決めた時点で成田⇄北京の往復チケットを購入しており、後半の上海は急遽延長した期間だったため、北京に一度戻る必要があったのです。しかも帰りのチケットは春節(旧正月)連休真っ只中の1月30日。

上海で苦楽を共にした仲間と、初めて中国で迎える春節をワイワイ過ごしたかったのですが、先の理由でそれは叶わず。北京で一緒に過ごした仲間にも連絡をとりましたが、ある日本人の友達は彼女のいる黒竜江省ハルピンへ、中国人の友達や先生方は、みんな地元に帰省していて、北京に私の知人はひとっ子1人いない状況。

おまけにホテルがどこも埋まっていて、頼れる人もいないので最後の賭けで北京留学時代の初期、宿舎が決まるまでの数週間仮で泊まっていた北京大学近くのビジネスホテルに確認したところ、ギリ空室があるとのことで藁をも掴む思いでチェックインしました。

窓を開ければ北京の乾いた寒空に響き渡る爆竹に花火、人々の賑やかな雄叫びもちらほら聞こえてきます。当時、上海でお付き合いしていた女性とも別れたばかりの傷心時期だったこともあり、街の喧騒がより一層孤独感を引き立てます。

春節連休でほとんど閉まっている売店、近場で唯一開いていたスーパーでお酒とおつまみを買い、ちびちびとやっていたんですが、突然ドアをノックする音が。開けるとそこにいたのはホテルの従業員の女性。

「春节快乐!(happy new year)」と私に告げてから、たくさんの果物をもってきてくれました。さらにテレビで春晚(中国の伝統的な年越し番組)をつけて、一緒に果物をつまんでくっちゃべり出したのです。この女性、どこかで見た事があるなぁと思っていたら、1年近く前にここで過ごした際にも色々と世話を焼いてくれたスタッフでした。名簿を見てわかったのか?彼女も私を覚えていてくれて、久しぶり!また来てくれでありがとう!みたいな会話をしたと思います。

さらにもう1人角刈りの男性スタッフがやってきました。彼は見た瞬間に思い出したのですが、トイレが壊れたりシャワーの水が出なくなった時に「知道(ジーダオ=了解です)」とだけ言って特に対応してくれない鉄仮面スタッフとして恐れられ、クラスメイトの間で「知道(ジーダオ)」というあだ名をつけていたんですが、この時は久しぶりだな!飲もう飲もう!と私が買ってきたウイスキーを2人であっという間に飲み干してしまいました。

彼らが仕事をサボっていたのかどうかは別にして私にとってはかけがえのないひととき。
「谢谢你们,我从来没度过这么愉快的过年(ありがとう、こんなに楽しい年越しは初めてだよ)」と伝えて翌々日、私は北京を離れました。

このちょっとした年越し体験を思い返すたびに、ほっこりした気持ちになります。

こうした中国で優しくしてくれた人がたくさんいるから、また中国に行ってみたいなぁと思い続けているのかもしれません。

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