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10年遅れのキングダム感想①

1億部を突破している超人気漫画「キングダム」。これだけ注目されている作品なのですが、社会人になってバタバタしていた時期に連載開始になったこともあり、恥ずかしながらノータッチのまま来てしまいまして、ようやく最近妻と実写版映画を見始めて、やっぱ面白い!という事で現在アニメシーズン1まで見終わったところです。漫画で追いかける事もできたのですが、中国人の妻があんまり漫画を読む習慣がないため、せっかくなので二人で一緒に観れる時間もあるアニメから入りました。

漫画とアニメではストーリーの順序が異なっているところもあり、アニオリエピソードもあるのでちょっと原作ファンの方とはポイントがずれてしまうかもしれませんが、第1シリーズまで見終わった感想を記したいと思います。

※以下、ネタバレレビュー含みますのでご注意下さい(10年遅れですが・・)


♦️キングダムのあらすじ

紀元前3世紀、500年の争乱が続く古代中国の春秋戦国時代末期を舞台に、「中華統一」を目指す後の始皇帝・第31代秦王嬴政と、その元で「天下の大将軍」を目指す主人公・信の活躍を中心に描いた物語。

♦️カッコいい始皇帝像〜作品の特徴と時代背景について〜(私見)

中国史を多少なりとも勉強している人であれば、日本人・中国人問わず違和感を覚えるのは秦始皇帝の人物像。

史実における始皇帝の実績として有名なのは
・他の諸国を次々と攻め滅ぼし史上初の中華統一「皇帝」に
・焚書坑儒
→法による統治を敷き、批判する儒家・方士の弾圧や書物の規制
・万里の長城の建設
→逮捕された不正役人を動員して建造
・始皇帝陵(新始皇陵)の建設
桁違いの規模を誇る始皇帝のお墓。約70万人を動員
・不老不死の薬を探す命令
→国内各地で不死の薬を探すよう命じた布告や、それに振り回された地方政府の戸惑いの返答の書簡が発見されている。

おそらく始皇帝の一般的な人部像といえば・・
ワガママで血も涙もない冷徹非情な皇帝

(もちろん、中央集権化や度量衡・通貨・漢字書体の統一、交通網の整備など後世の政治に引き継がれる実績もあるのですが・・)

ところが、キングダムにおける若き日の始皇帝(秦王・嬴政)はとにかくカッコいい!仲間との絆を大切にする人柄や自ら先頭に立って戦の前線に向かう潔さもあり、人望の厚い英傑として描かれています。これには、私はもちろん中国人の妻も驚いたようで「時代劇で見た始皇帝とは大違い・・」と言ってました。確かに中国の作品で描かれてる始皇帝って三国志の曹操以上に悪そうな風体だったりもします。

そして、主人公の信。彼も史実ではそこまでパっとした存在ではなく、正直私も知りませんでした。若い将軍の李信から見た始皇帝の成長という視点もキングダムの独特の舞台設定を作る重要な要素。

史記や歴史の教科書をざっくりとしか読んでない私の知識では、このあたりの時代で名前を挙げられる人物といえば・・

戦国四大名将の白起、王翦、李牧、廉頗
法家の李斯、韓非、商鞅

李牧がストーリーに登場した際にはやっと知ってる人キター!と沸き立ったものですが、フィクションで描かれた人物は別として歴史の学び直しとしてもとても有益な作品であると言えます。

♦️アニメ第1シリーズの感想

第1シリーズのざっくりのあらすじをだいぶ端折って振り返ると
▼主人公・信と秦王・嬴政の出会い
▼王弟・成蟜と秦左丞相・竭氏の反乱を山の王・楊端和らの助けで鎮圧
▼蛇甘平原の戦いで魏軍に勝利
▼秦軍の韓侵攻の隙をついた趙軍の侵攻を王騎を総大将とした秦軍が迎え撃つ(王騎将軍の命名で信を大将、羌瘣らを副将とする「飛信隊」結成)
▼王騎が因縁深い趙の総大将、武神・龐煖との一騎打ちを繰り広げるも趙の宰相・李牧の策略により命を落とす

第1シリーズは、何しろ信や嬴政の成長に大きな影響を与えた王騎将軍を中心に回っているようなストーリーでした。王騎に実在のモデルがいたのか、架空の武将なのかは不明ですが、圧倒的な存在感とクセが強すぎるキャラクター。笑い声「ココココ」には度肝を抜かれました。まさに秦の怪鳥。
(実写版で王騎を演じた大沢たかおさんの怪演も凄まじかった)

もちろん史実にないフィクションのサイドストーリーは散りばめられているはずですが、それを差し引いても原先生は脇役含めて、とにかく一人一人の登場人物の死までの物語を丁寧に描いている印象ですよね。ここがメインキャラクターでさえあっさり死んでいく横山三国志や史記とは一線を画する点かも。

王騎が矛を信に託すシーンは涙なくしては語れない名シーンですが、そこに至るまでの信や政との関わりや細部のエピソードがあったからこそ、初めて政が号泣したあのシーンに繋がるのかと思います。

そして、歴史漫画であってバトル漫画ではないんだけど、やはり「一騎当千の武力」というのはいつの時代も魅力的な要素であり、将軍自ら敵陣に突っ込んで行ったり、大将同士で一騎打ちという軍略的にはあり得ないシーンが目を惹きます。

また、史書には性別の記載がなかったからと、羌瘣を女性剣士にしたのも歴史ファタジーならではのイカした設定だと思います。

一方で、歩兵と騎兵の戦術的な相違点等をここまで細かく描いた漫画はあんまりなかったのではないでしょうか?また、将軍という存在のあり方や振る舞いが隊に与える影響なども非常に現実味があり説得力が半端ない。
原先生はサラリーマン時代の経験をもとに組織の美学的な側面も表現したかったようですが、やはりそうしたリアルな社会の荒波を潜ってきた経験則がキングダムワールドに反映されているのかもしれませんね。

中国で古代史も学んでいる妻も、すんなり史実とフィクションを交えたストーリーには馴染めたようで、尾到の最期には涙でした。

シーズン2も見終えたら、またレビューしたいと思います!



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