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中国版紅白歌合戦?国民的年越し番組「春晩」を夫婦で観た感想

中国中央広播電視総台が制作する春節聯歓晩会(略称「春晩」)は、1983年から中国の旧正月の年越しの風物詩として毎年放送されていて、国営公共放送の中国中央電視台(CCTV)を始め、今年は世界49カ国の90都市で生中継されるという凄まじい規模となりました。

日本でも最近はニコニコ生放送で生中継されていたりして、去年からは妻と一緒に日本の自宅で観ています。ニコ生では「中国版・紅白歌合戦 14億人と共に見よう“春節聯歓晩会”2024~日本語同時通訳付き~」というタイトルで生配信していました。

ドワンゴさんに物申すわけではないのですが「中国版紅白歌合戦」という言い方は実際ほかでも比喩でよく使われたりするんですが、若干の違和感はあります。それは、NHK紅白歌合戦が基本的に音楽・歌唱(付随してダンスなど)で構成されているのに対して、「春晩」は歌やダンスに加えて、漫才、コント、伝統劇、武術、マジック、サーカス、ミュージカル、マイクロムービー・・となんでもありの総合エンターテイメントとなっていて、しかも京劇のような伝統芸能とラップを組み合わせた演目があったりと、カオス感はありつつもお世辞抜きに感動のクオリティ。

最大の特徴は国営放送なのに、スポンサー企業の広告がバンバン入ってSNSと連動したキャンペーンを打ったり、巨大テック企業が数十億円規模のお年玉キャンペーンをしたりと、予算のかけ方が半端ない点です。

春晩を観た中国人妻が釘付けになった演目は?

オープニング動画「私たちの春晩」には、麺を細く伸ばす料理人や定年退職した技術者、警察官、スポーツ選手などが登場。各地方の麺料理が登場して、各地方の方言で紹介されました。やっぱりこういう地域性のある演出は中国では大ウケするのか、妻も「東北弁だ!広東語だ!@@麺だ!」とか興奮気味にリアクション。各業界の代表者50人以上が「アニメを見ていた私たちは大きくなった」を歌うという演目も、妻が子供の頃に観ていた中国の国民的アニメが出てきたりして「懐かしい〜」と言いながら一緒に主題歌を熱唱していました。さらに、日本人から見ると「漢服」の一言で済まされてしまうようなファッションも、唐や宋、明と各時代の流行デザインが表現されていて、これも妻にとっては興奮ポイントになっていたようです。

また、現代中国最高峰の技術が投入されているのも注目で、CGを組み合わせた演出も凄まじく、中国各地のスタジオと中継を繋ぐコーナーがあるのですが、特に陜西省西安の出し物がすごくて、歌とラップ、武術と伝統劇、漢詩、それらをCGを駆使してショートムービーにしているのは圧巻でした。

お笑いパートは高尚な知識が求められる

春晩の大まかな構成としては歌とお笑いが交互に出てきて、途中でマジックや大道芸が挟まれる感じ。歌や劇は言葉がわからなくても音や映像の強さで面白がれますが、お笑いは中国語だけでなく、中国の一般教養がないとなかなか理解するのが難しい。私も妻の解説つきでギリわかるレベルでした。

例えば漫才では、李白の漢詩をもじったネタで観客が爆笑するというよりは「うまい!」的なニュアンスで「好!(ハオ!)」と合いの手を入れていく空気感。逆にコントは彼氏を家に招待したい女性が親ともめたりといった日常的な設定や、演劇チームの監督からスマホのチャットで連絡があってどう返そうかとみんなで悩む・・けど、一人だけ監督からの連絡が来なくてハブられてる・・みたいな設定など、日本のコントにも通じるものがあって、漫才よりはわかりやすいかもしれません。(にしても高度な中国語レベルは求められますが・・)

ニコ生のコメント(弾幕)が一番笑える

ニコニコ生放送では、司会者のセリフを日本語に同時通訳してくれたりとか、コントの根本的な設定だけ字幕で出してくれたりとか、それだけでもとても助かるのですが、一番面白いのはニコ生独特の文化である画面上に流れていくコメント(弾幕)

中国語がわかる翻訳ニキが登場してさっきのギャグを解説してくれたり、カオスすぎる!ミニオンみたいな人出てきた!みたいな日本人視聴者の素朴な感想が見れたり、途中から中国人視聴者が「私たちが中国語でそのままコメントすれば誰か日本語に訳してくれる!」と、謎の日中友好の一体感が生まれてきたりと、本編の内容と合わせて二重に楽しむことができました。

来年もおそらく春晩の同時生中継が日本でも見られるかと思うので、皆さんも1年後、お時間あればぜひご覧になってみてください。



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