ANAが不振によりトヨタへ出向要請で人員調整、これ恵まれすぎ
ANA社員は恵まれている
全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングス(HD)が27日に発表する事業構造改革案の全容が判明した。トヨタ自動車を含む数社に社員出向の受け入れを要請し、一時的な人員圧縮を図るほか、採用凍結などで2022年度までにグループ全体の社員を3500人程度減らす方針だ。
今コロナ化で空の便が厳しい状況に置かれていることは皆ご存じだろう。ANAは社員の給与3割カットとボーナスカットを断行するようだが、さらにトヨタなど関連外会社に社員を出向させることを検討してるという。
こういうところに正社員の旨味があると言えるのだが、なんと関連外の会社でしかも日本で一番時価総額の高い会社に出向できるとはなんと恵まれているのだろうか。
ヤフーのコメント欄見ると、トヨタも優秀な社員を取れてプラスになるだの、ANAの社員がトヨタに行き能力が開花するかも、などと呑気なことを言っている人もいる。
まぁ、確かにそれも分かるのだが、トヨタの社長が数年前から何を言っているかご存じだろうか?
「終身雇用はもう維持できない」とずっと言い続けている。日本で時価総額の一番高い会社でさえ体力が落ちているのだから、交換留学みたいに社員を受け入れている余裕はないだろう。
そもそも会社が違えば、いくら優秀でも一から異なる会社のシステムを覚え、ルーティンを習得し、順応し、そして集団の一員として戦力になるのは簡単ではない。少なくとも短期では無理だ。
では長期的にANAの社員の面倒を見れるのかと言ったら、さっき言ったように、すでに自社社員の育成ですら精一杯である。
普通に考えて、ANAを退職し、トヨタに非正規として外部から出向するというスタンスが妥当だろう。なぜなら関連会社ですらないから。もしくは一時的なレイオフが妥当だ。
そういう目にあわないのは、優遇され過ぎだし、ただもし自分がその立場ならとっても美味しいと思いニヤニヤしてしまうかもしれない。
やっぱり甘いと思う
ANAはなるべく人を切りたくないのだろう。この場合、海外なら間違いなくリストラかレイオフだ。給与3割減とかボーナスカットで全員が痛みを共有し、全員で苦難を乗り切ろうとする。その姿勢は確かに素晴らしい。
だが、結論を言ってしまえば、一度ANAぐらいの大手が厳しい一手を社員に与えてもいいと思う。愛の鞭として。
例えば、リストラは確かにきつすぎるが、雇用契約を正社員から契約社員に変更し、給与水準を下げるとか、派遣として登録しなおしてもらい、外部スタッフとしてANAに再度入社してもらう、などの手を打ってもいいと思う。
そういう見せしめはやるべきだ。もう日本はそういうことをやる時期に差し掛かっている。
いつまでも甘い対応をしていると、確かにその恩恵を受けられる人は良いが、そうじゃない人との待遇格差が鮮明になり、全体のモチベーションに影響する。
そして、正社員が恵まれていたことをいい意味で気づいてもらい、そして非正規の人たちの痛みに気づいてほしい。
空の便と陸の車というジャンルの違い
また、普通に考えて、ANAからトヨタに出向だったら、工場勤務が妥当だと思う。それに、私が思うに、残念ながらいくらANAの社員が優秀だからと言っても、トヨタのシステムに長年慣れている派遣社員や契約社員には(短期的には)勝てないだろう。当たり前なのだが...
長期的にはその非正規社員を凌駕する可能性は高いが、しかしそもそもそんな長期戦は無理だと何度も言わせていただく。
だから、トヨタもANAの優秀な社員を取れるチャンスとか、逆にANAの社員も能力を開花するチャンス、とかこの期に及んで悠長なことを言っているのは変である。
クリエイティブな分野ならばなおさらで、空の便と陸の車というジャンルの違いを簡単に埋められるのだろうか???
やはり、大企業の正社員は恵まれているのだ。
皆が同じ条件で力を発揮でいる舞台へ
ここまで言えば気付くだろうが、結局、正社員を守る、というスタンスはあまり意味がない。少なくともこのご時世。
これが、もし皆同じ雇用条件だったら、トヨタ自動車への出向というのも一理ある話になる。
なぜなら、もともとトヨタにいる非正規社員にも不平等になることは少ないからだ。トヨタは以前より体力が落ちているので、もしANAの社員の出向を受け入れたら、どこかでそのバランスを取らないといけない。非正規が犠牲になるかもしれない。非正規が意味もなく切られるかもしれない。
だから、雇用契約のバランスが取れてないと、かえって非合理的な状況に陥るかもしれない。
そもそも、出向要員になった人たちが、能力が高いという保証はない。むしろ、その可能性は低いだろう。もし本当に能力が高いならば、ANAの本体に残りそうだ。
だから、せめて雇用条件や就業条件は非正規に合わせるべきだ。その上で、皆が同じ舞台で力を発揮でいるようになれば素晴らしいと思う。その上で、抜きんでるならば、さらなる待遇の改善があってもいいと思う。
同一労働同一賃金は時代に合った法律
そう考えると、もう正社員とか非正規社員とかいう分断は本当に意味がないし、日本を不幸にするものでしかない。
しかし、皆となるべく同じ雇用条件ならば、雇用形態に関係なく皆に一律にチャンスが巡ってきて、さらに一度や二度の失敗もすぐリカバリーできる。
なぜなら、雇用形態ではなく、能力でその人の立場が決まるからだ。
人生100年時代、退職金も昔ほど出る可能性は極めて低い、年金も近い未来に70歳からになる可能性が高く、しかもさらに時代が進めば、もっと後からの支給になる可能性もある。
そんな中、雇用形態や年功序列による年齢により、立場が制限されたり、また正社員にしがみつかなくてはならないプレッシャー、同じ会社にしがみつかなくてはならないプレッシャーと戦わなくてはならないのは本当に不幸な話である。
人生100年のうち、何度も失敗するだろう。しかし、もし年齢や雇用形態にあまり左右されなければ、皆かえって気持ちが落ち着き、力を発揮するのではないか。
同一労働同一賃金という法律はそんな時代に合った内容なのだ。
正社員、契約社員、派遣という区分をなるべく失くして、皆同じ舞台で能力を発揮できる舞台を作ってほしい。
その上で、力が抜きんでるものが上へ行ければいい。
ANAが厳しいことに変わりないが...
残念ながら、ANAは相当厳しいだろう。だって、関連外会社のトヨタに頼るしかないのだから。いい意味では、社員を大切にする良い会社、悪い意味では、過保護でかつ非正規との分断および雇用格差を生み出しているということ、正社員の保身がかえって今重荷になっている。
外資ならレイオフかリストラ同然なのに...
これを機に、今一度日本全体が社員とは何か、非正規は社員じゃないのか?考えてほしいし、雇用格差をなくす方向へ舵をきりに動いてほしい。