日本郵政の非正規社員の裁判勝訴について考えてみる
もっと平等に人を評価すること
日本郵便の契約社員らが、同じ仕事をしている正社員との不合理な待遇格差の是正を求めた3件の裁判(東京、大阪、佐賀)で、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は10月15日、正社員に認められている年末年始勤務手当や夏期冬期休暇などの手当と休暇について、いずれも契約社員に認めないのは「不合理である」との判断を下した。
この裁判の結果は当然である。そもそも、正社員と非正規社員が同じ仕事をしているのに、雇用格差がある、というのは変である。日本語としてもおかしい。同じ仕事をしているのに、正規と非正規というのが分かれるらしい。そして同じ仕事をしているのに、よく分からない待遇差があるという。現実にはそんなおかしなとんち話が成り立っているのである。
例えば、皆と同じ仕事をしている正規と非正規(派遣含む)の待遇差が下記の通りだったら??
・交通費が出る/出ない
・ボーナスが出る/出ない
・退職金が出る/出ない
・扶養手当が出る/出ない
・有給の病気休暇が出来る/出来ない
・産休/育休がある/ない
同じ仕事をしているのになぜこのような差が生まれるのだろうか?
結論は簡単であり、①企業に体力がなくなっている ②正社員の保身 ③雇用の調整弁が必要
色々話を複雑にしたがる人はいるが、そんなに苦しいならば、とっとと正規/非正規という概念をなくす方向に向かった方が健全である。そして、なるべく皆を平等に評価できる新たなシステムを構築すべきだ。
日本で時価総額トップのトヨタ自動車の社長が「もう終身雇用は維持できない」と数年前から言っているように、いつまでも終身雇用だの正社員を守るだのきれいごとを言っていては、大船ごと沈没してしまう。
日本の企業の平均寿命は23.5歳
今後年金支給開始が70歳くらいになる可能性は高い。さらに人生100年時代と言われる中、人は大学卒業してから約50年以上働き続けなくてはいけない可能性は高い。
しかし、日本の企業の平均寿命は思ったより短い。約23.5年だ。
終身雇用という制度や、正社員と非正規社員を分断するやり方が、いかに時代に合っていないかが分かる。そもそも50年以上ずっと同じところで働けるのは奇跡的と言ったら大げさにしろ、確率的には高くはないのである。
それを踏まえると、「いつかは正社員で...」「非正規に陥らないように頑張る」などという話はナンセンスだ。もっと皆同じ舞台で同じように力を発揮できるシステムを作り上げ、流動性を高めたり、柔軟性を持たせた方が、よっぽど日本のためだ。
にも拘らず、自分達の保身のために、正社員という制度を利用する。正規と非正規を分断し、固定化しようとする。その方が自分たちにとって安全だという認識があるからであろう。
しかし、実際、正規と非正規の分断は、社会や経済にマイナスの影響しかもたらされない。
日本人は良い人が多いから非正規でも頑張る
先ほど述べたような格差がある場合でも、日本人は誠実に仕事をこなす。日本郵政の件でも、よくこんな待遇で真面目に真摯に働き続けたものだと思う。やはり、日本人の人格によるところだろう。
海外だったらブチ切れるか暴動を起こすかもしれない。いや、それはないにしろ、与えられたこと以上の仕事など絶対しない。さぼりもするし、手も抜く。それがいいか悪いかは別として、人間の普通の感覚として、待遇が悪いのに真摯に仕事をするというのはなかなかできるものではない。
しかし、言い換えれば、日本人非正規社員(派遣含む)の善意のボランティアにより、まだ日本が国際社会で経済が上位に食い込んでいると言えるだろう。
日本の非正規が手を抜き始めたらどうなるか
正社員と非正規が同じ仕事をしているのに、大幅な待遇格差がある、これによりもし日本の非正規が手を抜き始めたらどうなるか...?
日本の非正規社員比率は、男性22.3%、女性が56.4%である。率直に言って多い。もちろん年齢別に見ると、また違った視点もできるのだが、これについてはいつか触れたい。しかし、いずれにしろ、日本人男性の4人に1人が非正規、日本人女性の2人に1人が非正規となってくると、話は大ごとだ。
それらの人たちの善意のボランティアがなくなったらどうなる?
組織はギスギスしだし、特定の人に業務負荷がかかり、仕事のできない正社員がバレてしまう...。
正社員の機会損失というのもある
もはや、正規と非正規の分断というのは意味のない概念なのだ。こういう意味のない分断を失くし、人の評価を平等に行えれば、生産性はだいぶ向上する。この雇用格差の固定化が、モチベーションの低下や機会の損失を生み出している。
実は、雇用の固定化による機会損失は正社員にも言えることだ。場合によっては、正社員はあまり実務に関わらないケースも多々あるだろう。実務とは離れたマネージメントを中心に業務を回すことも会社によってはあるだろう。もしそうなったら、実務の分からないマネージャーが生まれ、そこから非効率なシステムや組織体系が生まれることも否定できない。
現に、このケースは日本に散見される。
非正規社員の機会損失はなんとなくわかるだろが、一方で正社員の機会損失というのも見過ごしてはいけない。
良い人も報われる社会へ
良い人、というと抽象的な言い方なのだが、不合理な待遇の中、頑張って真摯に働く人のこと、としておこう。
まさに日本郵政で訴訟を起こした非正規の人たちのように。
もちろんこれは希望ではなく、良い人が報われる社会にしなくては、それを見習う子供たちにもいい影響を与えないから言っている。
今の社会情勢を見た子供たちが、将来は「公務員」になりたいという人が一番多いらしい。安定が一番と学習したのだ。もちろんこれは正しいのだが、しかし、もっと子供たちが挑戦できるような社会の仕組みになっていないといけなということも意味する。雇用格差の固定化は、そんなチャレンジできる舞台をどんどん奪っていく。大人たちがチャレンジできず希望を失っていては、子どもたちもそれを学習する。
今の元気のない日本がまさに格差の写し絵なのだ。
雇用格差をなくし雇用の流動化を促進せよ
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