ネーミング検討キットの公開
今回の記事ではサービスやブランドの新規立ち上げにつきもののネーミングについて書きたいと思います。
こんにちわ、JDDのXDDチームの五代です。
JDDのデザインチームではMUFGの新規事業・新サービスの立ち上げ支援を行なっており、その一環としてブランドやサービスのネーミング策定もサポートすることがあります。
私は前職時代も含め、新規事業の立ち上げフェーズで仕事をしてきておりますが、JDDでも2年間で既に2回サービスのネーミングを決める場に関わることがありました。
その都度ネーミング決定にはいつも苦労し、しかしそんなに頻度は高くない仕事のため体系化まではしておらず、そして毎回苦労する。みたいなことを繰り返す人生を送ってきてしまっています。
個人的に思う、ネーミング策定の難しさは以下のようなポイントがあります。
その道のプロ!という専門人材がチームにいないことが多い
好みが出やすく、意見をまとめにくい
誰の仕事か明確でない
一本道でゴールに辿り着かず、そこそこエネルギーを使う
そしてめちゃくちゃ大事(対内外両面で)
そこで、またいつ巡ってくるか分からない次のネーミングの機会に備えると同時に同じような境遇の方にも使っていただけるよう、ネーミング検討キットを整備しようと思いました。
ネーミング検討キット(Figma)
↑こちらです。
ネーミング検討キットの中身は過去JDDで行なったネーミング検討のプロセスの標準化を試み、5つのステップにまとめたものです。
このキットを用いることで、
多様な切り口や視点からネーミングを検討・評価すること
集団でのスムーズな意思決定
を可能にすることを目指しています。具体的な検討ステップは以下の通り。
ネーミング検討プロセスの紹介
STEP1: ステートメントの作成
サービスやブランドが誰のどのような問題をどうやって解決するか、どういう方向を目指したものなのかを簡潔な文章で表現したものです。
画像はJDDで実際に使ったフレームです。
ネーミング検討開始のタイミングにもよりますが、事業コンセプトの検討フェーズで既に作成されたものがあるかもしれません。
無ければこの機会にチームで作ってみるのも良いと思います。
次のステップでアイデア発想の土壌にすることが目的ですので、この他にブランドイメージのキーワードやビジュアルイメージなどがあれば、それもチームで共有すると良いと思います。
STEP2: アイデア出し
ステートメントを元に、メンバーそれぞれがアイデアを検討します。
JDDではプロジェクトチーム全員参加で個々でアイデアを考え、一つのシートにまとめていきました。期間は営業日で3日〜10日くらい。
他の人が出した案に触発され新たな案が生まれることもあるので、このプロセスではバカバカしいと思うようなアイデアでも積極的に書いていき、とにかく数を出すことを重視します。
STEP3: マッピング
出てきたアイデアを分類し分析しながらチームで方向性の理解を深めます。
JDDでは「意味」と「印象」の2つの切り口でアイデアをマッピングし、それ
を眺めながら改めてどういうサービスにしていきたいか話合いをしました。
「意味」は言葉の持つ意味がブランドやサービスのどんな面を表現しているか?コンテキストの切り口での分類です。
必ずしもネーミングに意味や狙いがある必要はないという考え方もあると思いますし、サービスの特徴をよく表していればいいネーミングかというと、そうじゃない場合もあると思います。
なのでこの分類をする目的は、上記のように「言葉の意味を考えない」というジャッジをするにしても、それを意図的に行うことを助けるものです。
「印象」は字面や音の印象がどう感じられるか?という感覚的な側面からの分類です。他の分け方もあるかもしれませんが、JDDでは「カジュアル⇆フォーマル」と言う軸と「感覚的⇆説明的」という2軸で切りました。
実際のネーミング案を見ながらチームで話すと、当初頭で考えていた方向性と案外違う方向性が良いねとなったりして、ここで見えてくるものもあるのが面白いところだったりします。
STEP4: 絞り込み
意味や印象といった観点で方向性を絞り込んだ後は、その中で具体的にどの案にするか絞り込んでいきます。JDDでは以下の観点でチェックを行いました。
目:活字で書かれている状態でスムーズに読めるか
口:発話しづらくないか
耳:音で聞いて聞き取れるか、字面が浮かぶか
上記の観点で絞り込んでいくと、全く案が残らなくなってしまったりするので、その際は今までの議論を踏まえた上で狙いを絞ってさらにアイデアを展開します。
英語表記にするかどうか、日本語の場合は漢字を開くかどうかでもバリエーションが作れるので、そういったものも全部展開しベストなチョイスができるようにします。
STEP5: 商標確認
ある程度案が絞り込めたら商標権の侵害がないか確認を行います。
簡易的にはこちらのサイトでチェックすることができますが、最終的なジャッジは専門家や社内の法務部門に相談すると良いと思います。
この段階に何案くらい残しておくか?はどの程度商標チェックでボツになる可能性が高いかの見積もりによって変わってきます。
私のn=1の経験でしかありませんが、20案残した時もあれば、この段階で1案しか残していなかった時もあります。
サービスやブランドの属する商標カテゴリーの数が多い場合、類似とみなされる可能性も高くなるので多く残す必要がありますし、ある商標と類似かどうかのジャッジ自体もその商標を有する団体との関係性によって安全側に倒さなければいけないこともあります。たくさんの案を商標確認するのは時間とコストがかかるので、ここはプロジェクトやプロダクトの責任者と話し合い決めるのが良いと思います。
ところで、だれが主導するべきか?
誰がこのプロセスを主導し、誰が最終決定をするべきか?は、言うまでも無く組織によって千差万別だと思うのですが、JDDではデザイナーがプロセスを主導し、プロダクトオーナーが最終意思決定を行うパターンが多い(かった)です。
ネーミングは必ずしもデザイナーの仕事ではないかもしれませんが、新規事業立ち上げというフェーズだとだいたい少ないメンバーでやっており、かつだいたいプロダクト作りの方にみんなの意識が集中している中で、プロダクトだけで無く、コミュニケーションにも視野が利き、ネーミングが決まった後のロゴマーク作成でも主導的な立場をとるデザインチームがネーミング決定に向け音頭をとる形は割とうまく機能するように思います。
良かったらネーミング検討キットをぜひ利用してみてください。
Money CanvasのネーミングもJDDがサポート
ちなみにですが…
2021年12月にローンチとなった資産形成サービスMoney Canvas(マネーキャンバス)。
https://japan-d2.com/news/20210924-001
JDDではプロダクトUI/UXのデザインはもちろん、ネーミングやブランディングの支援もこの記事で紹介したようなプロセスでさせていただきました。
本題とは関係ないですが、これから資産形成を始めてみたい方で興味ある方はぜひMoney Canvasのご利用もご検討ください。
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Experience Design Division
Experience Design Lead
Masanori Godai(五代 真規)