見出し画像

#026 大学入学共通テスト国語(古典)傾向分析と対策

(情報は河合塾HP等を参照。適宜加除訂正していきます)

■大学入学共通テスト 〔80分〕

☆形式的には変化があるが、複数の文章や素材を組み合わせた出題が定着した。
 ・4題(論理的文章1題+文学的文章1題+古文1題+漢文1題)
 ・全てマーク式の出題。傍線部説明・知識問題〔語彙他〕など出題
 
【第3問 古文】
◎出題傾向
 本文は平安時代後期の歌人である源俊頼の歌論書『俊頼髄脳』からの出題で、問4に同じ俊頼の私家集『散木奇歌集』の一節が引用されている。出典は歌論であるが、出題本文は、殿上人が皇后寛子のために船遊びをし、その宴を盛り上げるために連歌(短連歌)を企画したが、誰も句を付けることができずに終わるといった話で、説話といってよいものであった。問4は、共通テストの特徴である複数テクストを読ませる傾向が踏襲されており、連歌(短連歌)に関連した別の話を参考として読ませて、教師と生徒の話し合いの中で連歌(短連歌)や和歌修辞について理解を深めさせる問題になっていた。
 
 問1は、短い語句の解釈問題で、基本的な古語の意味や文脈理解が問われた。問2は、語句の表現に関する説明問題で、共通テスト初年度から続く新傾向の問題であったが、今までの共通テストの問題に比べて文法色が強くなった。問3は、指定した段落の内容を問う問題で、形式としては22年度追試験と同じである。問4は、教師と生徒が話し合う22年度本試験を踏襲したものであった。源俊頼の私家集の一節が引用され、それを踏まえて生徒が話し合う形式で、(ⅰ)修辞(掛詞)に注目した連歌の解釈、(ⅱ)本文「もみぢ葉の」の句の解釈、(ⅲ)本文の読解の三点が空欄補充で問われた。
 
【第4問 漢文】
◎出題傾向
 唐の白居易が官吏登用試験に備えて自作した【予想問題】と【模擬答案】が出題され、「君主が賢者を探す方法」を主題とした評論であった。問1では語句の基本的知識が問われたが、問2と問3は句法を踏まえて文意を把握する問題、問4~問6は傍線部の前後の文脈を読み取る問題、問7は【模擬答案】の主旨を問う問題が出され、全体として基礎知識よりも文章の読解力を必要とする問題の比重が高まった。
 
白居易が官吏登用試験に備えて自作した【予想問題】と【模擬答案】で、「君主が賢者を登用するにはどうすればよいか」を論じた評論文であった。漢文の基礎知識だけで解答できる問題が昨年よりも減少し、文章の内容理解の問題が増加した。問1は語の意味の問題であり、(イ)は基本的な語い力が問われたが、(ア)(ウ)は文脈を踏まえて「弁」「由」の意味を考える必要があった。問2は解釈の問題であったが、二重否定の句法に注意して文意を正しくとらえる必要があった。問3は返り点の付け方と書き下し文の問題であったが、「豈不~」の表現と「以」の用法に注意して文意を考える必要があった。問4・問6の比喩を説明する問題と問5の空欄補充の問題は、傍線部の前後の文脈を踏まえなければならない。問7は作者の考えの主旨を問う問題であったが、【模擬答案】の第二段落の内容を把握すれば正解できる。
(河合塾HPより)
 
 
 ◆古文出典一覧
 (センター試験)
 11本 『保元物語』(中世・軍記物語)
 12本 『真葛がはら』(近世・随筆)
 13本 『松陰中納言物語』(中世・擬古物語)
 14本 『源氏物語』(中古・作り物語)
 15本 『夢の通ひ路物語』(中世・擬古物語)
 16本 『今昔物語集』(中古・説話)
 17本 『木草物語』(近世・擬古物語)
 18本 『石上私淑言』(近世・歌論)
 19本 『玉水物語』(中世・御伽草子)
 20本 『小夜衣』(中世・擬古物語)
 (共通テスト)
 21本①『栄花物語』(中古・歴史物語)
   本②『山路の露』(中世・擬古物語)
 22本 『増鏡』(中世・歴史物語)・『とはずがたり』(中世・日記)
 23本 『俊頼髄脳』(中古・歌論)・『散木奇歌集』(中古・歌集)
 
大学入学共通テスト(古文分野)分析 
 22年の大学入学共通テストから、おそらく出題チームが変わったものと思われる。前年21年の第一回共通テストは、センター試験をほとんど踏襲したスタイルであったのに対して、22年の共通テストはいわば「本来のコンセプトどおりの問題」に近づいた。23年の大学入学共通テストでは、22年の形式を踏襲しながら、更に難易度・問題の質共に洗練された問題になった。
 24年は出題チームが変わる可能性があることと、25年からの新課程での試験を意識した出題があるのかはまだ読めないが、いずれにせよ求められる学力に大きな変化はないので、不安にならずに対策を進める必要がある。
 
 ◆23年設問分析
 大問三(古文)
  問1(ア) 選択 短語句の意味(やうやうさしまはす程に)
    (イ) 選択 短語句の意味(ことごとしく歩みよりて)
    (ウ) 選択 短語句の意味(かへすがへすも)
  問2    選択 語句の表現
  問3    選択 段落の内容説明
  問4(ⅰ) 選択 空欄補充(複数テクスト)
    (ⅱ) 選択 空欄補充
    (ⅲ) 選択 空欄補充
※問4は複数テクストでの出題
 
  〈比較〉◆22年設問分析
   大問三(古文)
   問1(ア) 選択 短語句の意味      
      (イ) 選択 短語句の意味      
      (ウ) 選択 短語句の意味      
    問2    選択 語句の表現(★新傾向) 
    問3    選択 内容説明        
    問4(ⅰ) 選択 空欄補充  
      (ⅱ) 選択 空欄補充  
      (ⅲ) 選択 空欄補充  
※問4は複数テクストでの出題
 
【特徴ある問題】
17 プレテスト① 複数テクスト(和歌の引用)
18 プレテスト② 先生と生徒・生徒同士の対話
21 本試第一日程 和歌の引用
21 本試第二日程 (なし)
22 本試     複数テクスト・先生と生徒・生徒同士の対話
          (作品のジャンルによる描写や記述の違いを問う設問)
23 本試     複数テクスト・先生と生徒・生徒同士の対話
          (和歌の修辞2題・内容説明)
 
※22、23年の問題では、プレテスト①の「複数テクスト」・プレテスト②の「対話問題」が出題された。
 
【出典・ジャンル】
17 プレ① 『源氏物語』は書き写す人の考え方によって…
18 プレ② 次の文章は、『源氏物語』「手習」巻の一節である。…
21 本試① 次の文章は、『栄花物語』の一節である。…
21 本試② 次の文章は、『山路の露』の一節である。…
22 本試  次の【文章Ⅰ】は、鎌倉時代の歴史を描いた『増鏡』の一
       節、【文章Ⅱ】は、後深草院に親しく仕える二条という女性
       が書いた『とはずがたり』の一節である。…
23 本試  次の文章は源俊頼が著した『俊頼髄脳』の一節で、殿上人た
       ちが、皇后寛子のために、寛子の父・藤原頼通の邸内で船遊
       びをしようとするところから始まる。
※古文の問題を解くとき、最初にやることは「出典の確認」である。22、23年の本試では作品の成立時代・ジャンルの説明や、作者の明示(時代の判別が可能)があったものの、それ以外の本試やプレテスト①・②では説明がない。ジャンルを考えて、読み方の方向性(ジャンルによって頭の使い方は変わる)を決めるところまでを自力で行うこと。リード文の熟読を!
 
【注釈の数】
17 プレテスト① 3+8
18 プレテスト② 10
21 本試第一日程 7+系図
21 本試第二日程 6
22 本試     3+11
23 本試     9+4
※センター試験でも、18年から注釈の数が減少し、記述内容もシンプルなものになった。本文を読み始める前に、人物に関する注釈には必ず目を通しておく必要がある。
 
【和歌】
17 プレテスト① 1
18 プレテスト② 0
21 本試第一日程 4
21 本試第二日程 2
22 本試     1
23 本試     1+1
※和歌は必ず出るもの、と思ってよいだろう。
 
【短語句】
17 プレテスト① 0
18 プレテスト② 3(単一要素)
21 本試第一日程 3(全て複数要素)
21 本試第二日程 2(全て複数要素)
22 本試     3(単一要素2、複数要素1)
23 本試     3(全て単一要素)
※22年は単語が分かれば解けるものが2問、単語と敬語の複数要素を組み合わせたものが1問の出題であった。23年は単一要素で解答が可能な問題であった。
来年度の予想はできないが、
  重要古語 2問
  重要古語+文法(識別・構文・敬語など) 1問
などのパターンが考えられる。自分が分かる要素で選択肢を絞り込み、最後に文脈に照らし合わせて確認することが必要である。
 
※直前期には頻出の
 ①形容詞・形容動詞
 ②副詞
 ③敬語動詞
などに焦点を当てて定着できているか、確認しておくとよい。
 
【複数観点の設問】
文法
敬意の方向
単語・語句の意味
和歌修辞
心情
などが複合された選択肢構成だが、まず文法。知識で解けるものから確認していくとよい。
 
大学入学共通テスト(漢文分野)分析 
 ◆23年設問分析
 大問四(漢文)
  問1(ア) 選択 漢字の意味(無由)
    (イ) 選択 漢字の意味(以為)
    (ウ) 選択 漢字の意味(弁)
  問2    選択 傍線部の内容説明
  問3    選択 傍線部の返り点施し・傍線部の書き下し
  問4    選択 傍線部の内容説明
  問5    選択 空欄補充・傍線部の書き下し
  問6    選択 傍線部の内容説明
  問7    選択 本文の内容説明
 
   〈比較〉◆22年設問分析
    大問四(漢文)
    問1(ア) 選択 漢字の意味      
       (イ) 選択 漢字の意味      
       (ウ) 選択 漢字の意味      
     問2    選択 傍線部の返り点施し・傍線部の書き下し 
     問3    選択 傍線部の内容説明   
     問4    選択 空欄補充・詩の内容説明  
     問5    選択 傍線部の漢字の読み(疑問形・反語形)
     問6    選択 本文の内容説明(場所の選択)  
     問7    選択 本文の内容説明
 
【特徴ある問題】
17 プレテスト① 複数テクスト(連続型+非連続型)、
          「すべて選べ」問題
18 プレテスト② 複数テクスト(連続型のみ)、生徒同士の対話
21 本試第一日程 複数テクスト(連続型のみ) 、漢詩
21 本試第二日程 複数テクスト(連続型のみ)
22 本試     複数テクスト(連続型のみ) 、漢詩
23 本試     (なし)
 
※評論や古文と比較すると、漢文は従来の問題構成・設問形式を踏襲している。プレテスト以降、複数テクストの出題が定着しているようである。例外は23年だが、おおむね「複数テクスト」が主流であるとみてよい。
 
【リード文】
17 プレ① 次の【文章Ⅰ】は、殷王朝の末期に、周の西伯が呂尚(太公
       望)と出会った時の話を記したものである。…
18 プレ② 次の【文章Ⅰ】と【文章Ⅱ】は、いずれも「狙公」(猿飼い
       の親方と「狙」(猿)とのやりとりを描いたものである。…
21 本試① 次の【問題文Ⅰ】の詩と【問題文Ⅱ】の文章は、いずれも馬
       車を操縦する「御術」について書かれたものである。…
21 本試② 次の文章は、北宋の文章家曾鞏が東晋の書家王義之に関する
       故事を記したものである。…
22 本試  清の学者・政治家阮元は、都にいたとき屋敷を借りて住んで
       いた。その屋敷には小さいながらも花木の生い茂る庭園があ
       り、門外の喧騒から隔てられた別天地となっていた。…
23 本試  唐の白居易は、皇帝自らが行う官吏登用試験に備えて一年間
       受験勉強に取り組んだ。…
※古文と同様、リード文には読解のヒントとなる情報が詰まっている。丁寧に読んで、読解のヒントとして役立てるのがよい。
 
【注釈の数】
17 プレテスト① 4
18 プレテスト② 8
21 本試第一日程 10
21 本試第二日程 7
22 本試     8
23 本試     4
※センター試験でも、18年から注釈の数が減少し、記述内容もシンプルなものになった。
 
【漢詩】
17 プレテスト① 0
18 プレテスト② 0
21 本試第一日程 1(五言排律)
21 本試第二日程 0
22 本試     1(七言律詩)
23 本試     0
※23年度は出題がなかったが、「漢詩は出る」と思っておいた方がよい。
 
【書き下し・返り点施しに絡む句形】
17 プレテスト① 再読文字
18 プレテスト② 使役形・受身形
21 本試第一日程 疑問形・受身形
21 本試第二日程 疑問形・反語形・抑揚形・使役形
22 本試     再読文字・疑問形・
23 本試     疑問形・反語形・
※使役形・疑問形・反語形・受身形が頻出と言える。学習の際には、この句形を覚えるところから始めると効果的である。
 
 
共通テスト漢文は、古文と比べると特筆すべき出題形式は多くない。センター試験時代の漢文の過去問を用いた演習が大いに役立つと言えるだろう。

新課程における大学入学共通テスト 〔90分〕
 
【問題作成の方向性、試作問題分析】
従来の問題作成方針を引き継ぎつつ、新学習指導要領における「現代の国語」に対応した大問が一つ追加される。
 
◎古典
出題形式・分量ともに大きな変化はなく、従来どおり、複数の本文を提示して、「多角的・多面的な視点」からの考察を要求する問題が作成されるだろう。ただし、第3問が増えたことで、今までよりも現代文にかける時間が増える可能性があり、古典に関してはより速読と解答手順の洗練が求められることになりそうである。語彙力と文法力の充実をはかり、読解に生かせるようにする当たり前の学習を大切にし、国語全体の時間配分を意識して、模擬演習を重ねることが、いっそう重要になるだろう。(配点の変更に伴い、設問のマーク数が一つ減る可能性や各設問の配点が見直される可能性もあるだろう。)
 
【分量・難易度】
現行の共通テストが大問4つであるのに対し、大問が5つとなり、第1問から第3問が近代以降の文章、第4問が古文、第5問が漢文となる。新しく追加される第3問は、複数の1ページ弱の文章と図・グラフなどが出題されている。現行の共通テストの第1問や第2問と比べ、一つ一つの文章は短いが、図やグラフの数が多い。解答数は5で現行の大問の約半数である。第3問は、解き慣れていないと手間取ることが予想される。
 
【特徴】
従来のセンター試験や共通テストでは出題されたことのない形式の大問が1つ追加される。新しく追加される第3問では、現代の社会生活に必要とされる論理的な文章及び実用的な文章からの出題となり、文章の読み取りだけでなく、図やグラフなどを的確に読み取ったり、複数の文章や資料を関連づけて解釈したり、それについて分析し検討したりするといった言語活動の過程を重視した問題になる。
 
【学習対策】
現行の共通テストやセンター試験の過去問を使って演習することは有効であると考えられる。

いいなと思ったら応援しよう!