追憶のcarbonara
絶賛婚活中の私に突きつけられた一問。
手が止まる。どれを選ぶべきだろうか。
好き
どちらかといえば好き
ミラノ風ドリアは好き
間違い探しが楽しい
行ったことがない
青春時代の薄っぺらい懐事情を支えてくれたサイゼリヤ。思い返せば楽しい思い出ばかり。
ドリンクバーで散々はしゃいだ。美味しく温かな食事をとりながら、学校生活のあれこれ、誰かの噂話、将来のことなど、笑い合い語り合える場所だった。
今でもビルの5Fにあり、幅広い世代に親しまれているそうだ。
但し、社会人になってからは足を運んでいない。
私は「Armaniと赤ワインの似合うシックな大人」を目指していて、社内では「美食一匹狼」として名を馳せる存在。
周囲では家庭を持つ者が増えてきた今、背伸びを続けることに少し疲れ、若干の焦りはある。
それでも恩人に嘘はつけない。間違い探しは難しいのでやらない。猫舌の私はカルボナーラをよく食べていた。ミラノ風ドリアは少し冷めて食べ頃になってから、友人に一口もらっていた。
あてはまるのは1。いや、2が無難か。
そもそも、質問の意図は何なんだ?
経済力を探っているのか?
デートでサイゼを選ぶかどうか?
正直な人かどうか?
一度スルーしてこの問いは飛ばす。
金額・費用
相手の希望
立地・景観・アクセス
お店の雰囲気
思い出
「赤ワインの似合う正直な大人」に路線を変えよう。自分に嘘はつきたくない。
一つ前に戻って1.を選ぶ。
74.に関しては正直なところ全てあてはまるが、5.を選ぶ。
ちょっとだけ晴れた気持ちになれた。心の底の小さな焦げつきが剥がれたのだろう。
気軽な服装をして久々にあの思い出のサイゼに行きたい。一人でカルボナーラを食べて、蘇る記憶があるはず。肩肘張らず純粋に毎日を楽しむ気持ちを取り戻せる気がする。
早速、今週末に足を運ぼう。
次の問いに目を通しながら、そんなことを思った夕暮れどきだった。
#サイゼ文学賞
※この作品は福島太郎様の企画に参加しています。ご査収いただけますと幸いです。何卒よろしくお願いいたします。