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南谷武蔵
2024年7月16日 18:40
王さまの月のyoutube版です。盛者必衰のカタルシスを感じるラストです。よろしくお願いします。
2024年7月16日 17:43
「タナカさん、カレーが出来ました」 機械的な女性の声がタナカの耳に入ると、タナカはうずくまりながら声をこぼした。「置いといて」 タナカは寝たきり、声の主を見ようともしない。声の主は、機械的でありながらも美しく施された顔を、無表情に、ジッと、タナカに向ける。「カレーが冷めてしまいます」 声の主が音を紡ぐと、タナカは身体をのっそりと上げ、声の主に向けて言った。「ごめん、ありがと
2024年7月12日 17:27
少しだけ上記の作品と繋がっています。 あの世で閻魔さまが死者の魂を裁いている。今日も百年前から続いていた、剣豪と盗賊の問題を裁いたばかりだ。「次」 閻魔さまが言うと魂が一つ、浮遊して近づく。「お前の罪を告白せよ。本当のことを話せば、罪は軽くなるだろう」 しかし魂は憮然としていて、閻魔さまの前で不服をあらわにしている。「お言葉ですが閻魔さま、私は生前裁判員をしていましてね。
2024年7月12日 15:07
荒野の広がる星で、少年がさまよっていた。足がジリジリとしていて皮はむき出しになり、心臓がバクバクするのに一向に息が切れない。 少年は記憶が曖昧で、何を思い出そうとしているのかもよくわからない。と言うより、自分が向かう先についての手がかりだと思うのだが、今は考えるより足を動かしたほうが良い、と思っている。 少年はふと不思議に思った。「そういえば、どうして僕の他に誰もいないんだろう」
2024年7月11日 18:38
昔、とある国にとても強い王さまがいた。 王さまは自分が戦いに強く、誰よりも権力を持っていて、それでいて頭が良いことを知っていた。 あらゆる国を征服し、たくさんの将軍に支えられ、多くの妻をめとった。そしてあらゆる財宝を手に入れ、欲しい絵画も、珍しい動物も飼っていた。 けれども王さまは思案顔で、なにやらブツブツと呟きながら玉座をウロチョロウロチョロしているのだ。「大臣よ、私はあらゆる
2024年7月11日 16:58
ある夏の日、腕自慢の剣豪が歩いていた。 夜中のことである。ジメジメとした暑さなどどこ吹く風で、剣豪は涼しげに道を通っている。道の片隅の地蔵さまが笑っているのが不気味だが、剣豪は気にしない。「世の中の連中はなんとも臆病だ。夜なら人はいない。獣と出会えば剣で切れる。盗賊と出会っても剣を持っていればうかつには戦えない。出歩くには絶好の時間だというのに、なんとも臆病だ」 剣豪はヘラヘラと笑い