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【その1】ミュージカル『この世界の片隅に』メインキャストの方々

7/28@呉公演大千穐楽で大原櫻子さんは「また会いましょう!」と客席に呼び掛けた

79年前の7/28は呉の大空襲があり作品中に出て来る重巡洋艦青葉が大破して呉港に着底した日でもあります。

79年後にこんな美しいミュージカルになって広島や呉で生きた人たちの物語が舞台上演されている未来をあの日あの時誰も予想していなかったでしょう。
でも、実現した。人々は哀しみでは無く感動の涙を流し、笑顔で劇場を後にする。こんな未来が今になったのです。
さくちゃんの「また会いましょう!」の言葉。79年前には気軽に言えなかった言葉が今心から信じられる言葉になった。
あの時代に想いを馳せればはせるほど今の”自由の色”がどんなに尊いか。

呉公演のアーカイブ配信期間も終わってしまったので、ここからは思い出が鮮やかなうちに【その1】ではメインキャストの方々の思い出を記録しておきたいと思います。

(浦野すず役)大原櫻子さんは演劇モンスター

俳優の吉原光男さんがかたすミュを観劇されてさくちゃんのことを「化け物だね」と最高の誉め言葉で表現されていました。
さくちゃんのすずさんは私のイメージで本当に原作やアニメのすずさんそっくりでした。さくちゃんの”演劇モンスター”なる所以は、浦野すずさんというキャラクターの中にある業の深さや嫉妬深さや頑固なところがジワジワと表面ににじみ出てくるところ。時々ゾッとすることもありました。
そこから一転して可愛らしくて素直で純粋なすずさんが顔をのぞかせる。
浦野すずさんは決して最初から「戦争はイヤです反対です」とは一言も言って無い。玉音放送の後に怒る時も自分が信じていた正義が踏みつぶされたことに激しい怒りを感じている。当事者とはこういうことなんだと深くあの叫びが心に刺さりました。

(浦野すず役)全ツからガラッと雰囲気が変わった昆夏美さん

”昆夏美さん”と言ってもピンとこない方でも「美女と野獣」吹き替え版のベル役といえばその美しい声を聴いたことがある方はたくさんいらっしゃると思います。日生劇場の初日から安定感があるお芝居と美しい歌声で日生劇場全体を魅了されました。ただ日生劇場では昆ちゃんのすずさんはさくちゃんのような頑固さは感じられず、可愛くてまっすぐなすずさんというイメージでした。
ところが、です。
札幌公演を観に行った時、「端っこ」を歌いだした昆ちゃんのすずさんは今まで観たことが無いような昆ちゃんでした。
感情を壁に、床に、相手に正面からぶつけるような激しい感情が湧き上がっていたすずさんで圧倒されました。この昆ちゃんのすずさんはその後の大阪公演でも”激しさ”の一面が浮き彫りになっていて、何か昆ちゃんの中で変わったことがあったのかなととても興味深く感動しながら観劇しました。

(北條周作役)原作から抜け出て来たような海宝直人さん

ミュージカル界のプリンスのお一人の海宝さんは本当に美しい歌声の方。そして今まで私が一番印象に残っている海宝さんの役はミュージカル『アリージャンス~忠誠~』のサミー役。

歌の印象はもちろんですが何よりも戦時中の在米日本人であるがアメリカ人として生きたサミーの人生を見事に体現されていました。
その海宝さんが周作さんを演じるのですから期待しかありませんでした。そしてあまりにも原作の周作さんそっくりで驚きました。周作さんもその中に”いがんでる”ところを持っている人。自分ですずさんを哲さんのところに行かせたくせにあの納屋の場面のすずさんと哲が居る納屋を海宝周作さんはものすごい目をして見てるんですよ。(舞台盆の奥なのでよく見て無いと分からないのですが)もうほんとに凄い芝居力。というか役を生きる人。これからはあの素晴らしい芝居力をストプレでも観たいなあと思いました。

(北條周作役)村井良大さんはミュージカル”生きる”からの芝居力を存分に発揮

村井さんは市井の日本人を演じさせたらもう日本一じゃないかなと前から思って居まして、かたすミュでもまた海宝さんとは違った周作さんを観ることが出来ました。すずさんのホクロをそっと触る時も海宝周作さんは指をそろえてそっと触れるのですが、村井周作さんは親指で触れるんですよね。先日のインスタライブでもかたすミュおたくを存分に発揮されていて(グッズなど沢山購入されていましたw)もうかたすミュ博士とお呼びしたい!

(浦野すみ役)可憐で美しい歌声の小向なるさん

2幕の最後の登場場面のすみちゃんが「うち・・・治るかねえ・・・」と美しい声で言うすみちゃんに毎回毎回泣いてしまいました。
すずさんが呉にお嫁に行った後に広島に残って被爆したすみちゃん。お母さんは行方不明のまま、お父さんも亡くなって学校の体育館で他の遺体と一緒に焼いて貰ったとすずさんに語る場面は本当に胸を締め付けられました。
すみちゃんは美人さんでしっかりしていてまだ女学生で本来であれば青春を謳歌していて良い年ごろなのに・・・・そんな過酷な運命のすみちゃんをまっすぐに演じられていたなるさん。とにかく声が綺麗なのでこれからもいろいろなミュージカルに出演していただきたいです。

(水原哲役)TVドラマ版の哲さんが重なる小野塚勇人さん

TVドラマ版の哲さんは村上虹郎さんでしたが、小野塚さんの哲さんを初めて日生劇場で観た時に、あまりにそっくりでドラマから抜け出て来たような哲さんでした。哲さん=虹郎さん=小野塚さんは元気で明るくてやんちゃでもどこか哀しさを抱えているような人で絶対ほっておけないタイプの人。「水原哲を見たら全速力で逃げる女子の掟」があるそうでしたが、小野塚さんの哲さんはほんとはきっとすごく女子に人気があったのではないか?と思える哲さんでした。だから納屋の場面で周作さんが実は物凄く嫉妬してるんだろうなと思える、そんな哲さんでした。

(水原哲役)美声がずっと耳に残る小林唯さん

登場してセリフを話しだしたとたん「エエ声!」と印象に残る小林さん。
今回水原哲さんのソロは無いものの随所随所で歌った時も声が綺麗で素晴らしい。元劇団四季の方で歌もお芝居も本当に上手なのでこれからきっとあちこちの舞台で拝見出来そうなのがとても楽しみです。

(白木リン役)平野綾さんも途中から芝居がグッと変化した

綾さんといえばとにかくその歌声の透明感と清らかさ。だけど白木リンという役は遊女の役。どこか世の中を達観したような綾さんのリンさんでしたが全ツ後半では可愛らしいリンさんの一面も溢れて、あの座敷童時代のリンさんとつながって行ったお芝居が見事でした。はかなくて切ないリンさんの姿にいつも心を打たれました。

(白木リン役)とても強くて芯がしっかりある桜井玲香さんのリンさん

実は日生劇場では桜井さんのリンさんは可愛らしさ全開で、平野さんのリンさんはお姉さんぽかったんですが、全ツでは逆転して、平野さんがどんどん可愛らしいリンさんになって、桜井さんは逆にどんどんお姉さんぽくしっかりしたリンさんになっていました。特に印象的な場面は、桜井リンさんがすずさんの苗字を知ってしまう場面。あの時の桜井さんの目の表情がもう切なくて切なくて涙。毎回泣いてました。(※呉の配信では映らなかったのが本当に残念・・・・)それから花祭りで偶然周作さんと再会する場面。静かにお辞儀をした後スッと顎をあげて歩き出す桜井リンさんの潔さ。リンさんの中の勝気なところがふっと見えたような気がしました。
大阪公演では公演当日に平野綾さんが新型コロナウイルス感染のため降板、桜井さんが大阪は全公演シングルキャストで出演されましたが、初代乃木坂46のキャプテンとしてチームをけん引した桜井さんだから、何の心配も無かったです。桜井玲香さんはいろいろな作品を経験するごとにお芝居がどんどん進化していてこれからも目が離せない女優さんです。

まだまだキャストの方々の思い出は続きます。

札幌公演展示パネル

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