ミュージカル『この世界の片隅に』音楽制作担当アンジェラ・アキさんというメディアミックス効果も期待される
『この世界の片隅に』作品について
私はTBSのドラマで知りました。リンク先に相関図がありますが、なんといっても黒村径子役の尾野真千子さんのお芝居に圧倒されたことを覚えています。
原作は2007年~2009年に連載された漫画で、その後2011年に日本テレビで映像化、2016年に劇場アニメーションで映画化、2018年にはTBS日曜劇場でドラマ化。そして2024年5月、日生劇場でミュージカルとして上演されその後全国ツアーを経て物語の舞台である呉で大千穐楽を迎える予定です。
ミュージカル化にあたって楽曲をアンジェラ・アキさんが担当
作品自体がとても有名ですがミュージカル化にあたってなんといってもアンジェラ・アキさんが10年ぶりに日本で活動を再開すること、そのリスタートがミュージカル『この世界の片隅に』の音楽制作を担当ということで話題を呼びました。
ともすると「アンジェラ・アキさんが出演するのか?」と勘違いするほど”アンジェラ・アキ”を全面に押し出した宣伝に疑問を抱くミュージカルファンの方もいらっしゃるようですが、”メディアミックス”の宣伝効果は絶大です。
昨今の東宝演劇作品としては決して派手な作品では無い『この世界の片隅に』
特に昨今帝劇で上演されたような『SPY×FAMILY』、『キングダム』、『ジョジョの奇妙な冒険』、『千と千尋の神隠し』のようにド派手な演出→派手なアクションや大がかりな舞台装置も当然『この世界~』には無いでしょうし、一般の方々にも名が知れている有名な映像俳優さんたちも出演しません。
しかしながら後述しますがミュージカル『この世界の片隅に』のキャスト陣の上質さは発表された時に私は感嘆しました。
ただそれは演劇やミュージカルをよく観に行っている人たちには分かっても、今まであまり劇場に足を運んだことが無い方々にはなかなか伝わりません。作品自体も戦時下の市井の人々の暮らしを描いているもので、いわゆる「戦争物」ではありません。戦闘機の空中戦なども出て来ません。
”インパクトは弱い”という心象的な事実は確かにあります。
これから日本で初上演されるミュージカルを一人でも多くの人に、今まで劇場に足を運んだことが無かった方にも来て頂きたい・・・・ということを考えるとアンジェラ・アキさんを全面に押し出したメディアミックス効果は東宝としても正しい宣伝方法であると言えると思います。
ヒロイン浦野すず役:昆夏美、大原櫻子
昆さんは劇場版映画『美女と野獣』吹き替え版のベル役といえばその歌声を知って居る方は多いと思います。大原さんは第30回読売演劇大賞 杉村春子賞も受賞している実力派です。
昆さんも大原さんも歌はもちろん、お芝居の質がとても高い(芝居での表現力が素晴らしい)お二人で、すずさんの中にある頑固さや粘り強さや意思をしっかり表現してくれるだろうことに今からワクワクします
すずの夫、北條周作役:海宝直人、村井良大
海宝さんは”ミュージカル界のプリンス”(μ界はプリンスだらけなんですが笑)と呼ばれている数々の大作ミュージカルで主演を務められている俳優さんです。ただ私は海宝さんが今まで演じた役の中で一番好きな役は『アリージャンス~忠誠~』の日系アメリカ人サミー役でした。アメリカで生まれアメリカ人でありながら第二次大戦下で日系人として生きていくという繊細なお芝居が本当に素晴らしかったからです。
村井良大さんも歌だけでは無くミュージカル『生きる』のお芝居が大好きでした。
ミュージカル『この世界の片隅に』は歌の表現力だけでは作品の魅力は伝えきれないと私は考えているのですず役、北條周作役のWキャストである4人の舞台人たちが何よりも”芝居力”がある方々である、ということに製作側のこだわりと意気込みを感じています。
周作の姉、黒村径子役:音月桂
音月さんは元宝塚歌劇団雪組トップスターの方です。現役時代から”歌・芝居・ダンス・華と四拍子揃った”男役として下級生の頃からトップスターの座は約束されていました。
音月さんはトップスターお披露目公演のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』の東京公演中に3.11東日本大震災を経験しました。
大震災後の東京は電力不足や計画停電が実施される中、宝塚の上演継続に関しては世間から「この非常時に何をやっているのか」「電気の無駄遣いだ」という批判の声も多く、タカラジェンヌたちは全員”それでも今タカラヅカを上演し続ける意義”を毎日考えながら舞台に立ち続けました。
あの頃、東京宝塚劇場に通い続けた私は今でも思い出すと胸が痛くなります。
音月桂さんが演じる黒村径子は・・・
黒村径子さんは特に物語の前半~娘を亡くした後は、一見これでもかというくらいすずさんに対して意地悪に見える女性です。
一人娘の晴美が1945年(昭和20年)6月22日の空襲後、すずと一緒にいたところを時限爆弾の爆発に巻き込まれて死亡した時はすずを酷く責めます。
この役をあの音月さんが演じる・・・・・正直に、嬉しさで私は心が震えました。
宝塚を退団されてから数々のミュージカルや演劇作品に出演してきて、現役時代から素晴らしかった芝居力が更に開花して進化し続けている音月さんだからこそ黒村径子さん役に相応しいと思いました。
出来れば娘:晴美の死までは”全世界から嫌われる”ような黒村径子を演じて欲しい。でもそういう径子の中には戦争前に、あの時代に、家庭に入って主婦になることを選ばず職業婦人として生きていたという径子さんが居る。
意思が強く、自分の人生を自分の足で歩いていくことに躊躇しない生き方を女性にとって自分の意思でキャリアを選ぶことがとても難しかった時代に、黒村径子さんという女性が胸を張って自分の能力を社会で活かし、それが戦争によって断たれた後も自分の意思で生きようとしていたことも音月さんならきっと見事に表現してくれるだろうと盛大に期待しています。
径子さんの中にある本当の強さと優しさが音月さんという舞台人を通して表現される日が待ち遠しくてなりません。
ミュージカル『この世界の片隅に』は期待しかない!
2024年5月9日(木)~30日(木)
東京都 日生劇場
2024年6月
北海道 札幌文化芸術劇場 hitaru
岩手県 岩手県民会館 大ホール
新潟県 新潟県民会館 大ホール
愛知県 御園座
2024年7月
長野県 まつもと市民芸術館
茨城県 水戸市民会館 グロービスホール
大阪府 SkyシアターMBS
広島県 呉信用金庫ホール
東宝ミュージカルの大劇場作品では今までも大都市を回るツアー公演は多々ありましたが、地方都市まで3か月にわたっての全国ツアーは、久しぶりでは無いでしょうか?
特にツアーのラストは広島県呉市という物語の舞台である呉で大団円を迎えます。
人が、戦時下という非常時にどう人間らしく生きるか?を描いたこの作品が今の世の中で人々にどう受け止められるのか?にもとても興味があります。
実在した歴史上の有名人たちは登場しません。でも確かにあの時代に呉だけでは無く日本全国に生きていた人たちの物語です。
そしてそれは今生きている私たちの物語でもあると私は感じています。
どうか今まで劇場に足を運んだことが無い方々もお近くの劇場に来て、観て、聴いていただきたい。
1人でも多くの方にこの作品が届きますように!
原作:こうの史代「 #この世界の片隅に 」(ゼノンコミックス / コアミックス)
音楽: #アンジェラアキ
脚本・演出: #上田一豪
キャスト
浦野すず: #昆夏美 、 #大原櫻子
北條周作: #海宝直人 、 #村井良大
白木リン: #平野綾 、 #桜井玲香
水原哲: #小野塚勇人 、 #小林唯
浦野すみ:小向なる
黒村径子: #音月桂
白木美貴子、川口竜也、加藤潤一
飯野めぐみ、家塚敦子、伽藍琳、小林遼介、鈴木結加里、高瀬雄史、丹宗立峰、中山昇、般若愛実、東倫太朗、舩山智香子、古川隼大、麦嶋真帆
桑原広佳、澤田杏菜、嶋瀬晴
大村つばき、鞆琉那、増田梨沙