読書日記『人新生の「資本論」』斎藤幸平 著
読めました。感動です。
目次をパラパラめくってみたとき、あまりのわからなさにめまいがした。売れてるという理由で本書を選んだことを後悔したが、それは杞憂に終わった。なんてすごい本なんだ、いや自分はなんて無知だったんだ。
で、内容を説明できるほど理解したとは言い難いのだが、とにかく最後まで読めたことは自己肯定感のようなくすぐったく清々しい気分だったことは間違いない。
この本では問題提起しているのは、経済成長が気候変動を進めているという点だ。
近代化による経済成長は、豊かな生活を約束していたはずだった。ところが、「人新生」の環境危機によって明らかになりつつあるのは、皮肉なことに、まさに経済成長が、人類の繁栄の基盤を切り崩しつつあるという事実である。
ーはじめにーより
気候変動の原因を突き止めると、二酸化炭素を大量に排出するようになった産業革命以降、資本主義が始動したことが浮かび上がってくる。
ここで、マルクスの『資本論』を取り上げ、それに対する誤解をといて、今こそ脱成長に向かうべきだという。
気候変動の原因については諸説あって、これが正解というわけではないと思うが、資本主義の矛盾については納得できる。また、マルクスの資本論を読んでもいないが、読むときには少しは正しく読み取れそうな気がする。挫折したトマ・ピケティももう一度開いたら読めるかもしれない。それだけ知の宝庫のような著者の丁寧な解説のなんとありがたいことか。
しかし、大切なのは一人ひとりの意識である。正しく理解しても世の中のシステムを変えるのは困難だとしても一人の参加から始まるから動き出そう、と背中を押してくれる。
しかし、ここに「三・五%」という数字がある。なんの数字かわかるだろうか。ハーヴァード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの研究によると、「三・五%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わるというのである。
すぐにやれること・やらなくてはならないことはいくらでもある。だから、システムの変革という課題が大きいことを、なにもしないことの言い訳にしてはいけない。一人ひとりの参加が三・五%にとっては決定的に重要なのだから。
人新生【ひと-しんせい】人類が地球を破壊しつくす時代
ヤバい本が出たもんだ。