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脳を刺激する仕事をした方が認知症になりにくい

まあ、そうだろうね、くらいの気持ちで読んでみたら結構希望のもてる論文でした。
原著はBMJ2021年7月にアクセプトされたイギリスの論文。

こういう生活習慣が認知症を予防する、という話は世の中にごまんとある。
そうでしょ、そうでしょ。運動して体にいいもの食べて、十分睡眠とって、ストレスはほどほどに、ああ社会的つながりも途絶えないようにね、と。でもね、そうじゃない生活をしていても長生きして、頭がシャキっとしている人っているのも事実。だからいいやん、テキトーで、となる(私だけか)。

ところが、今回はちょっと様相が違う。仕事で脳に認知刺激があると認知症になりにくいという研究報告を集めてその時の血漿検体を解析したところ、原因成分がわかったという発見。その解析というのが今最も注目をあびている「プロテオーム解析(プロテオミクス)」。ゲノムは生物がもつすべての遺伝子のセットを表すのに対してプロテオームはある生物がもつすべてのタンパク質のセット、またはある細胞がある瞬間に発現しているすべてのタンパク質のセットを意味する(Wikipedia)。同じ生物でも時間や細胞ごとに発現が異なるため、より病気の状態を知ったり予測したりすることが的確になる。

認知症に関連したタンパク質の中で、3つのタンパク質(SLIT2、CHSTC、AMD、いずれも認知症のリスク上昇に関連)に変化があったという発見は、これまでの、なんとなくそうだよねレベルの報告をぶち抜いていってしまった。

認知刺激の高い仕事とは、要求の高い仕事および仕事の決定権(ジョブコントロール)の高いものとある。結構シビアな線引きだ。しかも趣味的なものは違うとしている。仕事で認知刺激にさらされる、というのは多くの場合、数十年にわたって、時間にすると数万時間にもおよぶことから、趣味や遊びで頭を使っても仕事のような長い刺激が続くわけではないからだ。

この報告に使われた疫学研究はイギリスの公務員の健診で集められたものでサンプル数も3つのスタディを合わせて13,656と大きい。残しておいた過去の検体を現在の最新技術で分析していけるようになったことで、認知症のような発症まで長期のスパンを要する疾患のリスク因子の一つを知ることができた。
日本でも久山町スタディという疫学研究が続いている。プロテオーム解析を行う技術もある。大きな声では言えないが、後はお金だけか…

ということで、明日からは理不尽な要求も「私の将来の認知症予防のため」と割り切って喜んで受けて立つことにした。

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